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【一章完結】乙女ゲーのチュートリアルのサポートキャラに転生したら攻略キャラが集まってきた。いや、俺は男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
二章 夏休み突入編。 執着と過保護に追われるダンジョンソロって!?

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第4話 ロブルがスクエア、セレーヌスがウェリントンを選んだらしい

「――ということで、ステータス? を書いてきました」


「アディ、追試に行ったのではなかったのかい?」


 寮の食堂。アディはくるくるとパスタを巻きながら、今日の一日として追試の報告をした。

 兄セレーヌスとの夕食は、アディにとって癒しのひとときになっている。


 身分の高い攻略キャラたちに囲まれると、前世一般人のアディは、身構えるし疲れる。


 実は兄のセレーヌスも攻略対象キャラではある。けれどそれ以前に、アディにとっては家族。

 品があり落ち着いた兄として完成した存在の彼は、例外なのだった。


「白紙で出した反省文、もとい今後の活動のための指標と、ウェルが言ってました」


「そうか。では私も生徒会長として、レクティトゥード公爵令息には、今度プライバシーのなんたるかを入念にご指導しておこう」


「何か問題がありましたか?」


 セレーヌスの物言いに引っ掛かりを覚えて、アディは聞き返した。

 何か、不味いことをしでかしただろうか。


「書いたのが実技考査の範囲なら、構わないよ。過ぎたことだしね。

 ああ、アディ。これからは実技では、初級のみ、もしくは授業で習った範囲に留めておきなさい」


 不安そうなアディに、セレーヌスは安心させるように一つのアドバイスをくれた。


「そうします。Aクラスだと周りが出来すぎてて、基準が分からなくなってしまうので。気をつけます」


「アディはAクラスの上位成績者なんだから、もっと自信を持ってくれると良いんだけどね」


 セレーヌスはそう微笑んだまま、夕食のステーキを音を立てずに切り分け口へと運ぶ。


 ――所作が綺麗過ぎるわ。この人、なんで俺の兄なの。

 というかなんで、チュートリアルキャラが攻略キャラの弟なの?


 同じ兄弟とは到底思えない。髪と目の色もそう。セレーヌスは綺麗な深緑なのに対し、アディは髪はくすんだ緑で、目はダークルビーだ。


 ――いやまぁ、セレ兄のスペックは目の保養なので良いのだけど。


 アディも、肉を切り分けて食べる。酸味のあるソースが、こってりとした肉の油を相殺してくれた。


「食事が美味しいって幸せ」


 ――食べても胃もたれしない、若いって素晴らしい。


 もくもくと食べるアディを、セレーヌスは優しい眼差しで見ている。


「……ああ、そうだ。アディ、兄上からプレゼントが届いているよ」


「兄上からですか?」


 ナフキンで口許を拭き取る仕草まで上品。アディは、周囲から浮かないだけのテーブルマナーしか修めていないため純粋に羨ましい。


 セレーヌスが長兄ロブル・クストスについて、話を切り出した。

 アディが物心ついた時、すでに前期入学をしており、ロブルとは接点があまり多くなかった。


 そのため、アディもセレーヌスに習い、ロブルのことは兄上と呼んでいる。

 アディがセレーヌスを、セレ兄さんと呼ぶのは、前世に引っ張られた名残が大きかった。


「眼鏡が壊れた話を先日してね。古い眼鏡だったから、後期入学をしたアディに、相応しいものを新調しようとなったんだ」


 セレーヌスが、後ろに控えた侍従から小箱を受け取り、テーブル、アディの前へと差し出した。


 ――眼鏡は壊れたのではなく、壊したんです。ごめんなさい。


 それはもうフィデス戦でキレた時に、思いっきりアディが踏み潰したとは言えない。

 もう眼鏡が無くとも、疲れ目だと思うこともないのだが……。


 おそらくセレーヌスは全て分かった上でのプレゼントだった。

 そう。つまり、アディに拒否権は無かった。


「ありがとうございます。セレ兄さん、兄上にも、お伝え願えますか?」


「手紙を書くといい。その方が喜ばれるよ」


「そうします」


 アディは箱を受け取り、感謝を述べた。セレーヌスは机に手を組んで、こちらを伺っている。


「開けてみてくれないのかい?」


 促されて開けた小箱。中には更に二つケースが入っていた。


 ――二つ!? しかも、インテリに許されたスクエアじゃないか!


 一つは、ウェリントンの細いフレームの眼鏡が納められていた。

 もう一つは、スクエアのシャープな、こちらはフレームの線がしっかりした眼鏡。


 どちらも、レンズはややグレーグリーンのカラーが入っていた。

 おそらくまた、なんらかのアディに対する眼精疲労効果を付与しているだろうと予想が出来た。


「アディもお年頃だからね、シーンに合わせてお洒落を楽しむ方がいいかと、兄上と話していたんだ」


 二つの眼鏡を前に無言で手を止めたアディに、セレーヌスは事も無げに言った。

 眼鏡はそこそこ高級品。しかもアディの場合は、ほぼだて眼鏡だ。

 貢ぐところが違うだろうに、恐るべし侯爵家の子息たち。


「ありがとうございます。……どう、ですか?」


 普段使いするには敷居の高いスクエアを手にとって掛け、セレーヌスへとアディは見せた。

 二択しかないなら、かっこいい路線にいけないアディは、ウェリントンが普段使いになるはずだと思って。


「……ああ、かなり印象が変わるね。悪い虫対策にもよさそうだ。アディは純粋過ぎるから」


 セレーヌスは軽く咳払いをした後、満足げに微笑んでいた。


 ――悪い、虫? そもそも、俺に絡みたいやつはそうそういないだろうに。


 セレーヌスの最後の呟きは小さく、アディは半分しか聞き取れないのだった。


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