第3話 正攻法でいくなら、俺はスタミナ無しの戦力外って切ないよなぁ
「ステータス……?」
――それはあれか、使える魔法の種類だったり、威力だったり、回数だったりの定番のあれか?
さすがに体力や魔力量、攻撃力、防御力なんてものはないだろう。まず、それらの測定機器がないのだからと、アディは結論づける。
もちろん、ゲームではそれらは全て数値化されてはいた。
――けど賢さなんて、リアリティ上追求すると変動激しすぎる項目だよなあ。
「と言っても、かなりの個人情報であることには変わりありませんので。書ける範囲で結構ですよ。
それでも難しければ……フィデスとの一戦で使った魔法を、書いてもらうだけで構いません」
「フィデスとの……」
確かにあれは、全魔力使いきってのボロボロだったので、アディの一つのステータスと言っても良さそうだ。
――チュートリアル、強化用キャラとしての全属性なんて言えば、変な注目浴びるしな。
「えーと……」
ブチッといっていた過去の黒歴史を引っ張り出すのは、ちょっと恥ずかしい。アディはそう思いながら、白紙の用紙に魔法名を羅列していく。
《ブラインティング・フォグ》
・水属性魔法
・支援系統。目眩ましの一種。
対モンスターなら、ここからさらに毒や麻痺を仕込める、お手軽魔法だ。
《サイクロン・ホーミングショット》
・風属性魔法、上級。
・追尾機能を追加付与。
ちなみに風魔法の初級はエア、中級はゲイルだ。
《ヌルグラヴィティ・アンリーシュ》
・無属性魔法。
・支援魔法の一種。重力操作系、単発加速魔法。
瞬発力を上げ、物理の一撃必殺技と相性が良い。
魔法名だけでは、誤解を生む。
アディはさらに、自身が一日に行使可能な回数の目安として、上級魔法一日一回上限。中級魔法は一日五回程度と書いた。
――ゲームでダンジョンの最下層に挑もうなんてしたら、ボス戦の前に力尽きるヤツだよな、どう見ても。
というか、ボスにすらスタミナ、火力不足で勝てん。詰んだ。
書きながら、アディは自嘲を含ませて軽く笑う。
そのアディが書いてる前、ウェルムが注視して確認をしてきた。
「隠すのは良いですけど、嘘はいけませんよ?」
「嘘は書いてませんよね」
「……フィデスの時、大きな爆発音が五回ほどなっていたように思います。上級のサイクロンなら、数が合いませんよ?」
アディは最初、ウェルムの言っていることが理解できなかった。説明されて、ああと納得する。
ゲームとリアルとの差でもある、バグ仕様の指摘だった。
「俺が使ったのは、サイクロンの同時発動です。
それなら一度の詠唱で済むので、魔力消費も一回分です。
五回の詠唱なんてそもそも、俺には出来ないので。嘘は書いてません」
上級を一回使ったからもあるが、支援魔法も合わせてたった数回で魔力が枯渇した。
それが、怪我をしたのもあって三日経ってもフル回復せず、血反吐を吐く貧弱さである。
――目の前の天才たちと、並べないでほしい。
ゲームでは一つの詠唱で一つの発動が原則だった。消費量も固定。
けれどここは現実で、魔法はイメージ力が重視される。結果、一度の詠唱、魔力消費で複数個の同時発動が可能と言うわけだ。
魔力量が凡人のせこいアディならではの、苦肉の策だった。
ちなみにアディの血の繋がった兄弟、兄セレーヌスはれっきとした年上枠の攻略キャラだ。
他の攻略キャラに魔力量は劣るものの、攻撃力もそこそこあり、支援魔法が豊富なキャラだった。縁の下の力持ちキャラで、長期戦に手堅い。
「ちなみにアディは、どれくらい……その、同時が出来るんでしょう?」
「安定して出すのは十個までが多いですね。全部試したことはないですけど。
ほら、指十本なので、入学二日目の時にルナも五発出してましたし、普通じゃないですか?」
参考としてだろうか、ウェルムがアディに質問をしてきた。アディはそれに、指折り数えて返答をする。
全属性の適性に、実家のあるクストス領はのどかなのだ。そうほいほいと試す機会はアディにはなかった。
――冒険者登録、セレ兄さんに止められたしなぁ。
時々、ダンジョンに連れていってはくれたけれど、冒険者登録はさせてもらえなかった。
いつか行ってみたいリストに入っている。
ファンタジーの定番過ぎる。外せないだろう。
「まぁ同時発動は、魔法に特化していれば普通に使えますからね。
最終確認ですが、アディは上級も同時で?」
「同時発動の技法に、上級も初級もないですよね?」
「なるほど、今後の参考にさせていただきます」
ウェルムとの会話に、明らかな齟齬を感じ取って、アディは首をかしげた。
ウェルムは、チラリと教師を視界にとらえた後、無難な話をアディへ振ってくるにとどまっていた。
そうして、アディの追試は終了した。




