第2話 支援魔法は無属性のカテゴリー。けれど習得難易度は高いらしい
「魔法の属性系統を全て答えよ」
――火、水、風、土、無属性。支援魔法、と。
回復魔法のカテゴリーは魔法使いの間でも、確か揉めてるんだよなとアディは思い、書くのを止めておく。
「支援魔法行使における基礎原則」
――初級魔法の全属性適応力。人体への危険性と想像力の確立性。
渡された問題用紙と答案用紙を書き進めていきながら、アディが首をひねった。
なぜ、真面目に追試を受けているのか。このままでは、また座学でやらかしてしまうのではないか。
――目立たず平凡を目指してるはず、なんだけどなぁ。
「どこで、間違えたんだ?」
「今のところは、どこも間違えていないので、早く解いていきましょうか?」
そこへ、ウェルムが当然のように教卓から返事をしてくる。
――今って試験中なのに、私語は良いのかよ。
うっかり呟いた一人言に、返事が返ってくるとは思わないじゃないか。
私語厳禁。そう心に留め、アディは問題を解いていった。
「騎士団は時速六kmで進軍中。途中、三km離れた補給地点で十分休む場合、進軍にかかる時間は?」
――解答は、休憩が十分だから。A、一時間十分、と。
いい馬使ってんのかなぁ、騎士団。
単純な計算問題が終わり、文章問題に差し掛かったところで、口の中でブツブツと言いながらアディは問題を片付けていった。
――そろそろ、この辺もミスしとくか?
取り組んでいるのは数学。全問解くのも違うよなぁと、アディは思わず考え込んでしまう。
思い出したのは考査中の生徒の様子。一位のウェルム、二位のカリスは、問題に躓いた様子が全くなかった。
そして、手を抜いたアディが入学時は三位だった。
――本気でやって、二位とか三位キープとか洒落にならねぇ。
中身は大人。それで称賛されるのは、すごく場違い感がある。背中がむずむずするやつだ。三男だから、ひっそりと生きていきたいのに。
「領地の収穫量(小麦)五年間でそれぞれ百、百二十、百十、九十、百三十トン。平均と標準偏差は?」
――解答。平均 は、全部足してからの五年で割って百十トン。
いや、九十と百三十って差が何があったの、数字全部バラバラにしたらいいやって安直過ぎだろ。
標準偏差は……。
――って違う。何普通に解いてるんだよ!俺。
「アディ、脱線してませんか?」
――なんで分かるんだ!?
まさかウェルムは解答にかかる時間を計ってたりするのか、そうアディは邪推する。
頭を振ってアディは半ば、やけくそになりながら数学を片付けた。
「兵力二千:歩兵千、騎兵五百、魔法兵五百。
敵兵力二千五百:歩兵二千、騎兵五百。
どの部隊を重点投入して戦闘を有利にできるか?」
――え、敵兵に魔法兵いないの?
歩兵は魔法兵の護衛に回して。使用魔法は防御特化と遠距離攻撃。
騎兵は、奇襲警戒と敵側面をつけばよくない?
魔法戦術理論では、アディは持論を展開していた。ゲーマー心がうずくというものだ。
「ダンジョン攻略の際、理想的なパーティーと人数を挙げよ」
――前衛、後衛、ヒーラー。オールラウンダー。
前衛はもちろん、タンクや武闘家、剣士がメイン。攻略対象キャラであるルナの、魔法剣士の数は稀だった。
後衛は、支援魔法か攻撃魔法の使い手が望ましい。ウェルムはここに当たる。
弓使いも居るが、矢の本数制限がダンジョンには不向きだった。
回復魔法の使えるヒーラーが居れば生存率は上がる。
けれどその場合は、ヒーラーを護衛するものも必要だろう。そのためのオールラウンダーだ。
今ゲームのヒロインは、全属性の攻撃魔法に加え回復もこなす、万能キャラだった。育成の方向性で特化型にも変わる。
――攻略対象キャラは、一騎当千なんだよなぁ。カンストで、上級魔法バンバン使えるって壊れか。
そんな脱線も交えながら。考査問題が終わりか、とアディがひと息ついたところに、ウェルムが用紙を一枚追加してきた。
「……これは?」
「これから野外活動も入ってくるのと、今後も付き合っていく仲なので、ある程度アディのステータスを把握しておこうかと。
今回の考査の反省文代わり、と思っていただいて結構ですよ」
ウェルムから渡されたのは、白紙の用紙が一枚。
かろうじて上に名前を書く欄なのか、線が一本だけ引かれていた。
――ほら、またこうやって埋めにくる。しかも白紙とか、嫌味じゃん。
アディは、口をへの字に曲げた。
さてどうやって逃げきろうか、そんなことをすでにアディは考えていた。




