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【一章完結】乙女ゲーのチュートリアルのサポートキャラに転生したら攻略キャラが集まってきた。いや、俺は男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
二章 夏休み突入編。 執着と過保護に追われるダンジョンソロって!?

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第1話 もうすでに外堀を埋められて始まっちゃったよね

 二章は20時ピッタリではなく、毎日20時10分更新します。

 よろしくお願いいたしますm(_ _)m


 一章振り返りをかねた一話です。

 夏、教室の中がこんなに涼しいのは、なぜだろう。

 教室の中には、ポツンとアディだけが座らされている。この世界に、扇風機もエアコンはない。


 乙女ゲームのゲームシステムの説明キャラに始まり、チュートリアル最初に使われるノーマルレアリティの強化キャラに転生した。


 かつてゲーマーとして、今世アディウートル・クストスとして生き十四歳。

 もはやゲームの名前も覚えていない、記憶の薄れっぷりである。


 ――建物に、何か魔法が付与してるのかな?


 オリーブ色の髪を揺らし頬杖をついて、アディは現実逃避をしていた。


 入学時のクラス分けは成績順にAからDクラス、アディはAクラスだ。

 ヒロインがAクラスで編入してくるので、そのチュートリアルをアディがするのだから、当然の結果でもあった。


 けれど手を抜いたのに学年三位というポジションから、 入学当初から攻略キャラたちの距離感が近いし、放っといてくれなかった。


『……なぜ手を抜く。的を壊せるほどの実力で!』


 入学二日目、実技ペアを決めるクラス総当たり戦。アディが手を抜いたことで、ルナの反感を買った。

 その時にルナを庇い、アディは右腕を骨折したが、隠し通し戦い抜いた。


『……僕も、痛そうなアディウートル、見たかったんじゃない』


 結果さらにルナを傷つけてしまい、復学後即授業を抜けて和解をした。


『もう、敬語も敬称も要らない。魔法実技でペアにもなるから……。

 だから、アディって僕も、呼んでいい?』


 けれど彼らが、アディの外堀をガッツリと埋めてきたことに、なんかもうどうでもよくなっていった。

 それならと一学期筆記試験を、全教科白紙で出した。


 ――貴族の身分も全部投げ出して、しまおうかとも思ったんだけどな。


 そんなアディのため、この度、追試が実施されることになった。今は、試験監督待ちである。


『誰かが見たお前じゃない。誰かの枠におさまるなよ。アディ。

 俺は、俺が見たままのアディと戦いたいと思っただけだ。そのお前は、この線を越えると俺は思ってる。

 言い訳なんて、どっかに捨ててこい』


 筆記試験後の実技考査の模擬戦ではさらに、正統派武闘家気質の攻略キャラ、フィデス・アルドール相手に大人げなくアディはキレた。上級魔法に支援魔法の一方的な蹂躙である。


『バカッ! 怖いわけあるか! いや、そりゃ……ちょっと背筋が寒かったけど。でも、それは俺がアディを怒らせたからだろ!』


 やり過ぎた、そう思った居心地の悪さは、アッサリとフィデスの肯定によって瓦解した。

 結果として、攻略キャラたちからさらに逃げ場がなくなって今に至る。


「はぁー。早く帰りたい」


 その腰、ガチャンとアディの挙動に合わせて剣が無骨に揺れる。王子カリスが、アディに渡したものだ。 


『俺を舐めるなよ。アディウートル・クストス。君も、俺が守るべき人間の一人だ。

 側近にするための根回しはすでに、全て済ませている。

 アディ一人くらい、守るなど容易いことだ。なぜそれが分からない!』


 下賜されたこの剣は、アディにたいしての首輪であり、周囲の目に対する守りだった。


『それでも俺の元を去ると言うなら、剣を持って来い。俺が自ら、引導を渡してやる』


 とりあえずもう、なるようになれとアディが思った場所は、どんどん深みにはまっていくようで、ちょっと怖い。

 だってヒロインはまだ編入してきておらず、ゲームは始まってすらないのだから。


 意識されることのない背景として、最後は同化しかねない、誰にも必要とされることのない用無し弱小強化キャラであるはずのアディウートル・クストス。


「ヒロインが来たら、俺は用無しだろ……?」 


 静寂の中、アディはポツリと呟いた。


 カラリと扉が開いて、にこにことそれはもう黒い笑顔を浮かべた男子生徒が、教師を伴って入ってきた。


 彼の歩く動きに合わせ、下の方で三つ編みにし、ゆるく纏めている長い紺の髪が揺れていた。


 教卓の前に立つと、射貫くように金の瞳を細めアディを見つめた学生はウェルム・レクティトゥード。

 父が宰相、知性枠の攻略キャラの公爵令息だ。


「さぁ、お楽しみの追試をしましょう、アディ?」


「……」


 なぜだろう、室温がさらにグッと下がって寒いくらいになった。

 教室の隅、影のように立つ教員をアディがギッと見れば、バッとあからさまに目をそらされた。


 ――おい、教師じゃないのか。何もそんな分かりやすく、逃げなくても良いだろう。助けようとは、思わないのか。


 もともと分が悪く、そもそもの問題としてアディにも非があった。

 そして相手は次期公爵家当主。アディは侯爵家三男。身分的に拒否権がなかった。

 だからこそ、教師が入るべきだろうに。


「……よろしく、お願いいたします」


 恨めしそうにため息をつき、アディは諦めた。

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