表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一章完結】乙女ゲーのチュートリアルのサポートキャラに転生したら攻略キャラが集まってきた。いや、俺は男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
一章 学園入学編。 攻略対象キャラたちに、俺、囲われ始めたんだけど!?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/56

第28話 久しぶりの食堂なのに、気分は下り坂。

 初夏に差し掛かったある日。午後の登校許可も、セレーヌスからもらった。

 今日はさっそく午後の実技授業にも出れると、アディは楽しみにしていた。


「アディ、今日食堂どう?」


「え?なんで?」


 一限目を終えた休み時間。教室の席で次の準備をしていたアディに、ケレルがやって来て話しかけてきた。

 制服は夏服へと変わり、白い半袖シャツにネクタイ。袖口から覗く無駄のない筋肉の線に一瞬目を奪われてしまい、慌てて視線を逸らす。


 ――人懐っこい笑顔まで完璧とか、反則だろ。


「なんでって、さてはアディ。入学のペア決め模擬戦のデザートのこと忘れてたな! お前が言ったのに」


「あー。忘れてた」


 夏の男子学生としての完璧なケレルの装いに、ああいうのが似合うのがムカつく。アディとの差が際立っていた。

 そこに、くわっと目くじらを立てケレルが矢継ぎ早に言ってきた。

 

 ――そうだ、ケレルとデザートを賭けた。かなり一方的に。


「ほんとにいいのか?」


「むしろ、やっとだよ~。

 アディったらあれから、ずーと半日しかいないからさ。

 賭けは賭けだろうが。いつ誘おうかって見計らってたんだぞ、こっちは!」


 眉を寄せ、ぷくうと頬を膨らませて、ケレルがむくれていた。というか、とても脱力している。

 どうやら、彼になりに心配し気を使わせていたらしい。


 ――すまん。あれは思いつきだったんだ。ちょっと若気の至りってやつで。


「わりぃ。わりぃ。じゃあご相伴に預からせてくれ」


 アディは笑って、ケレルの誘いを受けた。


 ――ほんっとケレルって、俺の日常の要だよ。




 ◇◆◇◆◇◆◇




「今日の日替わりも、変わらず美味しい~~っ!」


 アディは、事前に食べやすく切り分けてもらったムニエルを口に運ぶ。

 カリッとした衣の香ばしさに、魚の身がふわふわで旨味がつまっていて美味しい。


 午前で帰るから、食堂にはずっと来ていなかった。今までカフェテリアの半個室で、診察ついでに、マーレと食べて帰るまでがセットだったのだ。


 ――美味しいは、もう正義。


 それを見たケレルが、気遣わしげに話を振った。やや潜めた声は、周りに聞こえないように配慮してだろう。


「包帯は取れたみたいだけど、ナイフまだ持てないの?」


「あー、リハビリ中。まだちゃんと肘が曲がらなくて」


 日替わりランチを選んだアディの向かい、ケレルは今日、大盛のオムライスらしい。サークルの朝練のせいか、山のように大きなサイズだ。


 ――その可愛い見た目のどこに、それが入るんだよ。


「今度、一学期考査だろ? 間に合うのか?」


「実技には間に合うと思う。……間に合わなくても、別に。自業自得だからなぁ」


 ――こっちは、ゲームですぐに消えるキャラだし。


 アディはそっけなく返して、サラダのミニトマトをプチッと噛んで潰した。ドレッシングの酸味も加わり、口酸っぱく口内に広がる。


「別にって、来年のクラス決めに響くだろ。さすがに」


「え! アディ来年も一緒だよね!?」


「……ルナ、普通に混じってるが、ここで食べてて良いのか?」


 アディの無責任さに、呆れ顔のケレル。そこへ、ルナが驚愕の声を上げた。


 ベタベタしてくるわけではないが、ルナはあれからアディの周りにいることが多い。

 スパゲッティをくるくる巻いている、そのルナにアディは苦言を呈する。


「いいよ。元々学園は貴族が多くて、警備は万全だし。カリスも学園内は、基本的に自由にしていいって言ってる。

 フィデスとかが帯剣してる目的は、体裁が大きいよ。非常時は魔法で十分だし」


 ――体裁、か。


 ルナは、和解後のあれからも帯剣する様子がない。アディもわざわざ聞くこともしていない。

 本来なら、交わらない世界線だから。

 

 ――いつかヒロインが来たら、皆が俺から離れていくはず。


 ザクリ。サラダにフォークを突き立てて、アディは口へ運ぶ。

 ドレッシングがかかっていたはずなのに、シャクシャクと音だけが口に残った。


 ――皆は攻略キャラで、俺はチュートリアルキャラ。


 クラスの人とも話すけれど、どこか遠くに感じる。それは人生が二回目だからか。アディが異質だからか……。


「……アディ、元気ない?」


 ルナが唐突に、アディに聞いた。

 その澄んだ夜の色がまっすぐに見つめてくるものだから、アディは眩し過ぎて、目をそらした。


「さっきマーレに診てもらって、なんともないから、ここにいるんだぞ。俺が体調不良に見えるのか?」


「そうじゃないけど……」


 アディはそうルナに返して、残っていたバターロールを千切らず、口に全部放り込んだ。

 見るからに、ルナがへこんでいる。視線はスパゲッティに落ち、何か言いかけては口をつぐんでいた。


 ――八つ当たりかよ。ちげぇだろ。


「……あ、俺。デザート忘れてた、取ってくる!」


 アディは明るく声を張り上げると、逃げるように席を立った。

 その後ろ、二人の視線が刺さっているのをアディは確かに感じた。


 ――最近、考えが暗くなる。腕が治ったらマシになるよな?


 デザートは、クリームとスポンジの小ぶりのケーキだった。けれどその甘さを、アディは全く感じなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ