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【一章完結】乙女ゲーのチュートリアルのサポートキャラに転生したら攻略キャラが集まってきた。いや、俺は男なんですが!?  作者: 松平 ちこ
一章 学園入学編。 攻略対象キャラたちに、俺、囲われ始めたんだけど!?

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第23話 ほんとにもう包帯が邪魔くさいたらないんだよ!

「実技で誤解させてしまったこと、ヴェネラティオ公爵令息に伏してお詫び申し上げます。

 私は決して、そのようなことを思っていません」


「……あ」


 アディは立ち上がって、真摯に謝罪した。

 ルナは声を失って、頭を垂れるアディのずり落ちた上着の先、右腕に視線が釘つけになっている。


「裸眼での立ち回りは久しぶりで、模擬戦も私自身の経験が少なく、ヴェネラティオ公爵令息の胸をお借りしておりました。

 先ほどもお伝えした通り、速さと手数に私は翻弄されておりました。

 魔法実技の結果は集中力あってのもの。

 模擬戦はなにぶん経験が無いもので、申し訳ございません」


「……僕は、僕は謝罪が欲しいのではない!」 


 頭を上げないアディから、ルナは目をぎゅっと瞑って顔を背け、思いのまま叫んで立ち上がった。

 その拍子に、彼の椅子が音を立てて倒れる。


 アディは、困ったようにそっと息を吐く。

 その僅かな音に、ルナは身を固くした。


 ――あー。貴族とか階級とかめんどくせぇ。


 アディは静かにルナの横に歩いていき、倒れた椅子を左手で戻した。


「ヴェネラティオ公爵令息、ご無礼を先に謝罪します」


 一言断りを入れて、ルナの頭をアディは撫でた。ルナからの拒絶はなかった。

 

「……大人の一年、二年は、経験を除けば能力に大差ない。けど、成長期の俺たち子どもは別だって。

 誰が上で下とか。立派とか愚かだとか――きっとそんな、枠にはまる綺麗なもんじゃねぇよ。

 模擬戦の後に、俺言ったよな?

 手を抜けるほど強かったら、こんな受け止め方してないって。

 ルナより年上でもっと上手くやれたはずなんだ。

 ルナを傷つけたかったわけでも、下に見てたわけでも、まして怒らせるつもりもなかったんだよ。

 でも見ろよ。実際の俺は、受け身もちゃんと出来なくて、この有り様だ」

 

 ルナの顔が見えるように、言葉を砕けさせたアディは膝をつく。

 右腕の包帯を示すように、アディはコンコンと左手で軽く叩いた。


「なぁ、ルナから見て、そんな俺は愚かだと思う?」


 そして、アディは小首をかしげ困ったように頼りなく笑って、ルナを見つめた。


「…………でも、僕は……」 


 ルナが痛そうに顔を歪め、言葉につまった。彼の藍色の瞳が濡れて、揺れている。

 アディは、そんなルナをじっと見つめ続ける。


 ――ああ、また泣かせてしまう。


 人生二回目の年長者でも、全然うまくいかない。こんな小さな子を、泣かしてしまうのだから。

 そもそもアディは、前世のこともあって今世は人付き合いが苦手だった。


「……僕も、痛そうなアディウートル、見たかったんじゃない」


 ルナはそろそろと、アディの包帯に手を伸ばした。触れるか触れないかの距離で、その手は止まる。


「……ごめん。痛かったでしょ?」


 しょんぼりと肩を落としたルナのポツリと溢れた、震える言葉。


 その行き場を失ったルナの手を、アディは右手でしっかりと掴む。

 手と手の間の包帯が邪魔くさい。アディは代わりに指を絡めてしっかりと握った。


 アディは膝をついたまま今度は安心させるように、ルナを見上げ歯を見せて笑う。


「見てただろ?模擬戦の最後に、俺は笑って剣を振り回してたぞ。痛いわけ、あるかよ」


 ほら、と右手の力を込めて、ルナの手をしっかりとアディは握ってやる。


「な?」


 そうアディが念押しすれば、ルナはようやく、アディの右手を恐る恐る握り返した。


「……仲直りだ。先に転んだのは俺。

 だから周りがなんて言おうと、ルナは胸張って立ってろ。

 ルナにこれ以上、意地張られても俺が困る。俺は、折れるつもりないからな」


 アディは手を繋いだまま立ち上がって、ルナを迷いなく抱きしめた。


 ――本当に、ちっせぇ。


 すっぽりと胸に埋まるルナ、アディはその小さな背を左手でしっかりと抱きしめた。


 ――貴族って本当にめんどう。こんなに小さいのに。


 ルナにアディを拒む様子はなかった。けれど、きっと体格差で同じことを思ったかもしれない。

 だからアディは、ルナにも安心させるように言う。


「これから男は特に、身長がぐっと伸びる。

 ルナが今悩んでる体格差なんて、そのうちひっくり返る。気にするもんじゃねぇ」 


 二度、ルナの背を左手で軽く叩いてからアディは解放する。


「ルナも、身体は大丈夫か? あの日、身体強化を掛けすぎていただろ?」


「……平気、そんなにやわじゃない」


 模擬戦でのルナの暴走を思い出し、アディが気にかければ、ルナは顔をうつむき赤らめながら、返事をした。


「そうか……あ、出過ぎた真似をいたしました。ヴェネラティオ公爵令息には寛大なお心でご容赦いただ――」


 そして思い出したように、アディの口調が元に戻る。

 握っていた手をアディが離そうとすると、ルナがしっかりと掴んで持ち上げた。


「もう、敬語も敬称も要らない。魔法実技でペアにもなるから……。

 だから、アディって僕も、呼んでいい?」


「まぁ今さらか。ルナの目こぼしに甘えさせてもらおう。

 ペアよろしくな。もう泣かせねぇからさ、任せてくれ」

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