表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲーのチュートリアルのサポートキャラに転生したら攻略キャラが集まってきた。いや、俺は男なんですが!?  作者: 松平 ちこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/15

第13話 VSカリス 王子は絶対に、俺で遊んでると思う

「降参します」


「アディウートル・クストス」


 恐ろしいまでの笑顔で、カリスがアディを見ている。けれど目は全く笑っておらず、フルネームで呼ばれた。

 枠に入ってすぐに、挨拶もなければ一戦も交えることなく、アディが降参を宣言したためだった。


 怪我とは別の要因で、アディは笑顔を浮かべながら、冷や汗をかき始める。

 けれど仕方ないだろう。カリスとは模擬戦をどうしたら良いか、想像が出来ないのだ。


 ――攻略キャラたちとはしない。勝たない!


「降参します」


「クストス侯爵令息、王子として命じてほしいかい?」


 それは職権乱用で、模擬戦を強いるということだろうか。それとも侮辱罪的なものだろうか。王子様、それでいいのか。ありなのか。アディは疑問になってくる。


 ――怖っ。けど、不戦敗は禁じられてないもんね。


「カリス様を前にしたら、勝つイメージが湧きません。降参します」


「アディウートル。貴君は、二勝二敗。不戦敗はゼロと記憶しているが?」


 ――いや、なんでカリス様は模擬戦しながら、周りの戦歴知ってるの。


 確かにアディはフィデスの後に、男子生徒と女子生徒とそれぞれ模擬戦をし、場外勝ちに持っていった。

 二人とも誘導をかけたら、きれいにはめることが出来たからだ。

 さすがに総当たり戦で、全部負けるのは、逆に目立つだろうと思ったからである。


 そして、五戦目がカリスというわけだった。


「眼鏡を教室に忘れました。カリス様は王子であらせられるので、ちゃんと見えてないので万が一にも加減を間違えると、弱小の私は心痛で寝込みます。

 私の不徳の致すところではあり、大変申し訳なく思っております。

 心優しいカリス様、どうか見逃してください」


 アディは本音を交えながら、スラスラと嘘を述べて腰を折った。


 ――見よ、これが、前世で培った謝罪の技法だ。どうだカリス様、ちょっとは折れてほしいんだけどさ。


 実際の本音としては、カリス相手に怪我を庇って隠し通せる気がアディはしなかった。

 カリスの周りの戦歴まで把握しているほどの余裕が、それを証明しているだろう。


 フィデスのように一発で、とはいかないだろうが、どこかで見抜くことは、まず間違いないとアディは確信している。


 そしてアディはこれ以上、目立つ方向へは持っていきたくない。途中棄権の保健室送りなど、情けないだろう。

 アディはこれでも、男してのちょっとしたプライドくらいは持っている。


「へぇ?」


「降参します!」


 アディが腰を折って再度宣言すれば、声が一段と低くなり、カリスがアディの目の前に静かにやってきた。


 カリスは、アディの顎を掴むと上向かせる。

 アディの前髪に気づき眉を潜めると、意地悪く告げた。


「っ!」


「……魔法で前髪を固定するな。その厚顔無恥な顔を見せたら、降参を認めてあげよう」


 模擬戦が始まる前、周囲の様子が変だったので、アディは前髪で目を隠していた。

 ついでに動いてもそうそう目立たないよう、髪を強化して固定するという。アディの無駄な徹底ぷりである。


 前髪で視界不良ではあるが、アディはむしろ裸眼が見えすぎるため、ちょうど良かったりするのであった。


「言いましたね、撤回しないでくださいね?」


「私は発言に責任を持っている。さぁ、どうする?」


 カリスに遊ばれている気が、しないでもない。けれど今、アディが優先したいのは時間を掛けずに、総当たり戦をやりきることだった。


 ――いつまでも、身体強化で隠せる怪我じゃないからな。


「……降参します」


 顎を捕まれた手を左手で払って俯き、前髪の身体強化を解いて、アディは前髪を払って整えた。

 そして眉間に皺を寄せて、アディは上目遣いにカリスを見上げた。


 アディのダークルビーの瞳が、カリスをまっすぐ捉えた。

 そこに映ったのは、不服そうに頬を膨らませ、唇を小さく尖らせた自分の顔。


 ――ガキじゃん。俺。


 アディの顔を見て、驚きに僅かに目を見張ったカリスは、静かに宣言した。


「撤回しよう」


「!?」


 ――おい!責任どこ行った!?


 焦るアディを他所に、じっとアディの瞳を見つめ、その素顔を見たカリスは、口許に微笑みを浮かべていた。

 スッとカリスの伸ばした手が、アディの頬に触れそのまま首筋まで撫で下ろした。最後にそっとアディの胸を軽く押す。


「撤回しようーーこれは授業前、皆の動揺が頷ける。綺麗な目じゃないか」


「っ!?」


 ――はぁ? 模擬戦中に、しかも男相手になに言ってんの!?


 アディは意味が分からず、口をパクパクさせる。

 それを見たカリスは、くくっとさも面白そうに笑って枠の外に出た。

 教師の方へと足を向けて歩き出す。片手をヒラヒラと振って、振り返らずにアディへと告げた。その声はとても上機嫌で嬉しそうな含みがある。


「約束だからね。不戦勝を認めよう」


「……」


 不戦敗はありがたい。ありがたいのだけど、なぜだろう、希望通りの結果のはずなのに、アディは何か間違えた気がしてならなかった。


 ――綺麗ってなんだ。顔面凶器の王子が何を言ってるんだ。俺はチュートリアルの凡キャラだぞ!?


 かーとアディの顔に、熱が上がる。心臓がバクバクと早鐘を打ってうるさい。

 上を向いたまま、ごしごしと冷や汗ごと顔を雑にアディは左腕で拭う。


 ――意味分かんない。怪我のせい、怪我のせい!


「あー。あと四人!」


 気合いを入れ直すように、アディは声に出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ