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『鋼の鼓動、硝子の瞳』  作者: きりなし優
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3章:脅威、迫る闇の胎動

テストから数日が経ったある日、研究施設の管制室に突然緊急アラートがけたたましく鳴り響いた。


「通信傍受。軌道上から未確認物体の接近を確認、早急に応対せよ!!」


琢己はモニターに目を走らせ、眉をひそめた。


「これは……軍のものではない。民間データにも該当が見当たらない。完全に未知のシステムなのか・・・」


そのとき、モニターの一角が赤く染まった。

再びアラートが警告音を鳴らす。

「――地球外からの侵入反応アリ」


すぐさま琢己はモニターから目を離し、キーボードをタイピングしながら叫んだ。

「ケイ、出撃だ!対象は未確認物体、油断するな!!!」


「了解。マスターの命令を受理。戦闘モード、臨戦状態へ移行」


ケイの強躯が再起動するように光を放ち、虹色の瞳が強く輝く。

地下施設の格納庫が開き、夜空の下にその巨体が現れる。周囲の警報とサイレンをかき消すように彼の足音が重く響いた。

突如、上空から無数の赤い光が降り注いだ。まるで彗星の雨のような軌道兵器の一斉攻撃が四方八方へ飛んでくる。


「ウラヌス、照準設定しろ」


ケイが通信を発すると同時に、軌道衛星ウラヌスが発動した。

わずか3秒で照準と発射が完了し、


「天の一撃――降下」


凄まじい轟音と閃光が大気を裂くように“天の一撃”が炸裂し、敵の拠点に思いっきり刺さり、爆発音と衝撃波が鳴り響き一瞬のうちに蒸発した。

半径500メートルの地面がクレーターとなり、衝撃波が山を削ったのだ。

瞬間、敵の戦闘機群――30機が紙のように脆く崩壊する。

空中で爆風に巻き上げられた金属片は、まるで紙のように燃え、機体の胴体がもぎ取られ、翼が熱でねじ切れながら粉砕された。操縦席にいた兵士たちは爆風の熱と衝撃で一言の悲鳴も発する暇なく、光の中で一瞬にして塵と化した。


「敵、全滅を確認」


続いて、第二波の攻撃が開始される。

今度は100機の戦闘機とドローン兵器が現れ、ケイに向けてレーザーを乱射する。


「ネプチューン、全方位バリア展開」


ケイの指示と共にネプチューンのバリアが即座に展開され、六層の光子防壁が無数の熱線を受け止める。爆発音と閃光が視界を覆う中、ケイのシルエットは微動だにしなかった。すべての攻撃が霧のように無力化され、彼の身体には一片の傷も残らない。


「防御、完璧だ」


ケイが静かに呟くと、次の瞬間――その体から無数のレーザー砲が起動し、肩・胸部・背中・脚部など各部から、全方位へと光線が放たれた。


碧く輝く空はまるで深海の中にいるような錯覚に襲われるほど美しい。

空中の敵機たちはその場で焼かれ、ドローンは一瞬で装甲が溶け、エンジンが爆散する。

破裂した残骸が空中に撒き散らされる間もなく、すでにそのすべてが燃え尽きていた。


同時に、敵の本拠地と確認された地下複合施設にも“天の一撃”が照準を合わせる。

鋼鉄の天井を貫通した超高熱の槍が地下深くへ到達した瞬間、地面そのものがめり込んで爆裂する。


内部で逃げ惑う兵士や指揮官たちは、圧倒的な熱と衝撃波で肉体が千切れ、溶け、蒸気のように消えた。

一部の人間は苦しげに喉を焼かれ、内臓を吐き出しながら即死し、悲鳴すら届かないその惨状は地獄と化した。

コンクリートの壁が崩れ落ち、骨と血肉が混ざり合った光景の中で、もはや生命の痕跡すら残らなかった。


「脅威、排除完了」


「……たった一人で、あれほどの……」


琢己の呟きは誰にも聞かれなかった。

だがその胸の内には確かな戦慄とそれ以上の興奮が渦巻いていた。

彼の顔には、恐怖と陶酔が入り混じった色が浮かび、目は見開かれ、唇は微かに震えていた。


“この男は……人類を超えた”


しかしその時、ケイが空を見上げて呟く。


「これは始まりに過ぎない」


琢己はその背に冷たい汗を感じながらも、胸の奥からこみ上げる衝動を必死に押し殺していた。

闇の奥に、さらなる脅威が蠢いていた――。

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