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『鋼の鼓動、硝子の瞳』  作者: きりなし優
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2章:鋼の力、試される覚醒

ここは琢己が持っている研究ラボのひとつである大きな実験場である。

核弾頭ミサイルが落ちてもびくりともしない堅牢な造りとなっている仕様だ。

ここで《TYPE-MK7》――通称ケイの起動テストを行われることになった。


地下研究施設の広大な演習場に足を踏み入れると、琢己は腕組みをしてモニターを見つめる。演習場は特殊合金で作られており、戦車砲の直撃にも耐えうる構造だ。それでも、ケイの力にどこまで耐えられるかは未知数だった。


「では、戦闘モードを起動しろ」


琢己の指示を受け、ケイの虹色の瞳が鋭く光る。


「了解、”マスター”」


瞬間、ケイの全身がわずかに振動し、足元の床が軋む。彼の肘から青白い光が迸り、ビームブレードが展開される。その長さはわずかに調整され、現在は1メートルほどだ。


「ターゲット、ロックオン」


目の前に設置された100センチ厚の鋼鉄ブロックが聳え立つ。

ケイは無駄な動きを一切せず、一歩踏み込んで拳を突き出した。


ドォン!!


凄まじい轟音と共に鋼鉄ブロックが粉々に砕け散り、細かい破片が辺りに飛び散る。

琢己は思わず息をのんだ。


(想定通り……いや、それ以上だ)


続いて、ケイは目標を切り替え、今度は脚を振り上げた。蹴りを放った瞬間、大気が震え、目標物だった重厚なコンクリート壁が轟音とともに砂塵と化した。


「次は……ウラヌスとネプチューンとの同期だ」


琢己の声が震えを帯びた。

ケイの瞳が一瞬輝きを増し、同時に頭部の通信ユニットが活性化する。


《ウラヌス、ネプチューン――接続開始》


ケイの虹色の瞳がさらに深く光を増した瞬間、宇宙空間の漂う人工衛星もとい「攻撃システムと防除システム」を備えたユニットー通称“ウラヌス”と“ネプチューン”との完全同期が完了される。


「ウラヌス、天の一撃――発射準備完了」


ウラヌスはタングステンやチタン、ウランからなる全長10メートル、直径30センチメートル、重量100kgの合成金属から造られた硬質な槍を地球のどこへでも3秒以内に撃ち落とす大量破壊兵器だ。その照準が完全にケイの眼球のモニターと一体化する。

ケイの声が低く響いた直後、頭上から轟音とともに“天の一撃”が凄まじい速度で降下し、大地を貫く。


ズオオオオン!!!!


空間を裂いて突き刺さった光の槍が、敵機群の中央を直撃し、30機の戦闘機は一瞬で爆裂し、金属片と炎が四方に飛び散り、空は眩い閃光と衝撃波に包まれた。


「ネプチューン、防御モード展開――全方位防御システム起動」


同時に、ネプチューンの全方位防御システムが起動し、ケイを中心に不可侵のバリアが展開された。レーザー砲塔も自動装身され、周囲360度の脅威を瞬時に迎撃する。

その瞬間、演習場上空に赤い警報が鳴り響いた。

仮想敵機の群れが、侵入シミュレーションとして空間に投影される。

続けて、第二波のシミュレーションが開始される。今度は100機の小型ドローン型戦闘機が一斉に出現し、ケイに向けてレーザーを乱射する。

ネプチューンの全方位バリアが瞬時に展開され、ドローンからは無数の光線がケイの周囲に発射されたが、バリアは一切の干渉を受けず、ケイの肉体には一つの傷も届かない。


「防御、完璧だ」


ケイが静かに呟くと、次の瞬間――その体から無数のレーザー砲が起動し、肩・胸部・背中・脚部など各部から、網の目のようにレーザーが放射された。

空間全体が碧い閃光で塗りつぶされ、戦闘機100機が悲鳴を上げる間もなく、蒸発する。

残されたのは、焼け焦げた空気と、沈黙のみだった。


「ターゲットの全滅を確認。これが……俺の“完全武装”だ」


ケイは静かに呟いた。その声には、単なる機械兵器ではない、「完全たる征服者」たるものである。


「氷室琢己……俺は、お前の“最強の守護者”であり、“破壊の化身”だ」


琢己は喉を鳴らしながらも、その光景から目を逸らせなかった。


(これが……ケイの“真の力”か……)


全宇宙の破壊と防御を統べる“最強の戦闘型アンドロイド”の姿が、今ここに完成した。

果たして、この力は人類の未来を守るものか――それとも、破滅へ導くものか。

琢己の心に重くのしかかる不安をよそに、ケイは静かに立ち尽くしていた。

七色に揺らめく虹色の瞳はまっすぐ琢己を貫き通していた。

あとに残るのは静寂、そして琢己の背中に一筋の汗がたらりと落ちる。

それはどんな未来を暗示しているのかのようにポタリ、と地面に染み込んでいった。

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