表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

プロローグ

 これほどまでに美しいものを目にしたことがあっただろうか。


  月明かりが差し込む廃城の大広間。

 中央を飾る巨大なステンドグラスには、光と闇を象徴する紋章が描かれ、月光に淡く照らされている。

 左右から伸びて中央へと合わさる階段には金の薔薇をモチーフにした緻密な装飾が施されていたが、長い年月と戦争によって至るところに傷跡が見える。


「だが、どうだろう」

  低空を滑るような男の声がした。


 わたくしとは対側の階段に、黒焔を纏ったローブ姿の男が立っている。


 凍てついた仄暗い双眸がわたくしをとらえていた。


 目に映るすべてが美しい。

 でも、それ以上に恐ろしかった。


 カツ、カツ、と軍靴の音を鳴らし、黒焔を纏った闇がゆっくりと近づいてくる。


  このままでは闇に覆いつくされる。

 黒い焔に焼かれて、侵食されて、蝕まれて、喰らわれる。


 そんな錯覚に体が縛りつけられている間に、男の形をした闇が目の前まで迫っていた。

 じわじわと嫌な汗が背中を伝う。手足の指先はすっかり冷え切っていた。


 そして、

「君には、せいぜい駒が似合いだ」

  耳元で聞き覚えのあるセリフが囁かれる。


 途端、わたくしの脳内で何かがぱちんと弾けた。


  『月明かりに照らされた廃城の大広間』に、『君には、せいぜい駒が似合いだ』のセリフ。


 これは『堕天使と聖女リアナ』に出てくる悪役が、悪役令嬢とはじめて顔を合わせる場面だ!

 

 そして、ハッと気づく。

 ————ここが前世で愛読していた本の世界であり、わたくし…、わたしこそが悪役令嬢ルクシフェリア・ロウヴェルであるということに。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ