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風になるまで  作者: 築島 利都
第一部
57/99

57 華舞3

空が刻々とその色を変える。

藍色にわずかに赤みが残る頃、祝賀会は高らかな鐘の音と共に始まった。

おおやけに通達が出ていないとはいえ、主だった貴族は皆、今日の本当の主役を知っていた。


シジマール国にとって初の王女降嫁。

噂はその王女の話題で持ちきりだった。


「王太子殿下とご一緒ではないのですね」


大広間で、礼をとりつつ王族の入場を眺めていた青年貴族が言う。

同じように膝をついた傍らの婦人も、意外そうに目を瞬いている。


「てっきり婚約披露かと思っておりましたけど、違うのかしら」


「違うということはないでしょう。わざわざ来訪頂いているのに」


他の者たちも同じように不審な顔をしている。

王太子の挨拶もろくに聞いていないようだ。


「…さて、皆の関心が私に無いのは些か寂しいが…」


王太子のおどけた言葉にどっと笑いが起きた。

そして続きを期待して視線が集中する。


「今夜は大陸より賓客をお招きしている。一部の者はすでに知っているだろうが、エツ国王女マツリ殿下だ」


当然、その紹介とともに入場すると思われたが、その気配がない。

いぶかしむ貴族たちのざわめきを片手で制すと、王太子は再び口をひらいた。


「王女殿下には後ほどご挨拶頂くが、それまでは宴の雰囲気を楽しみたいとのこと。皆、くれぐれも失礼の無いように」


目当ての不在に、いささか拍子抜けした感はあるが、盛大な宴会が始まった。

あちこちに設えられた背の低いテーブルを囲み、皆楽しげに語らいながらも、時折ちらちらと出入り口の様子を窺っている。

ふと、一人が二階部のギャラリーに目をとめた。


「あ、ご覧なさい。もしやあの方が…」


控えめに示した先には、見慣れない柳女装束に身を包んだ、黒髪の女性が佇んでいた。


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