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風になるまで  作者: 築島 利都
第一部
46/99

46 片羽の鳥1

レンドは首のあたりで切りそろえた金髪をゆらゆらとさせて、回廊を進んだ。


母のものよりもやや濃い蜜色の髪と、光彩との境がわからないほど真っ黒の瞳。

その高貴な色合いと、子供ながらも美姫と名高い母によく似た面差しで、レンドは城中でも可愛がられていた。


中には余計な詮索や、嫉妬混じりのやっかみもないではない。

だが、一風変わった母の教育の賜物か、レンドは弱冠四歳でそれらを聞き流す術を心得ていた。


今日も無邪気な微笑みを浮かべて、彼は回廊を歩く。

『笑顔は友達を増やす一番の魔法よ』という母の言葉はよくわかっていないが、それでも笑っていたほうがいいということはおぼろげに理解していた。


目的は庭園。

そこにはレンドの遊び場がたくさんあった。


城中にいる子供は少なくないが、毎日庭で遊べるくらいの歳と身分となると、限られてくる。レンド以外にその庭園を利用するものはいまのところいなかった。


しかし、今日はそこに人影がある。

一目で子供と違うとわかる、とても背の高い人だ。


「だあれ?」


警戒心のない声でたずねると、その人は振り向いてちょっと目を見張った。

すぐにくしゃっとした笑顔になって、腰を屈めて目の高さを合わせる。


「オウタだよ。王様に会いにきたんだ」


レンドは違うよ、と首を振る。


「王様はお庭に来ないよ。いつも奥にいるの」


「そうか、ありがとう。でもいいんだ。今日はもう会えたから」


レンドは目を輝かせた。


「じゃあ、一緒に遊ぼうよ。このお庭は僕のだよ」


と、手を引いて、駆け出した。


長身のオウタは短い手をつないだまま小走りする難しい体勢をとることに疲れ、ひょいっとレンドを抱えあげた。

そのまま肩車をして走る。

きゃあっという嬌声があがった。


「たかーい!」


時々、城中の男の人に同じように肩車をされることがあったが、それよりもずっと高い。レンドは楽しくなって手の届くかぎりの木々に触った。


「ここまで届くのよ、すごい!」


オウタは嫌がることなく、レンドの指さす方向に進んでくれる。

こんな大人は初めてだ。

大抵の人は、レンドの母にばかり気をとられて、ろくに話もきいてくれないのに。


もっともっと。


幼い心は昂りやすく、その希望は終わりがない。


だが、オウタが音をあげる前に、終わりを告げる声が響いた。


「レンド」


やや低い、しっとりとした声。

その持ち主は華やかな目鼻立ちをした、妙齢の女性だった。



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