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風になるまで  作者: 築島 利都
第一部
32/99

32 風雲1

透き通るような快晴。


まるで自分たちの王都入りを祝うようだ、と言ったのは商人のキトーだったか。

その時は、彼の自分中心の物事の見方を内心笑ったものだったが、今、王都を見下ろすオウタには、その感想こそ身に染みて実感できるものだった。


「これが、王都?…すごいな…」


十日あまりの旅を終え、ようやく王都に入ろうという時。

王都は本街道よりも、低地にあるため、山の開けた場所から見下ろすことができた。

その眺めといったら。

宿泊学習の登山なんて、目でもない。

と、比べる対象を思い出して、オウタは小さなため息が出そうになるのを我慢した。


「ずいぶんと統一されているんだな。屋根の色とか、建物の高さとか」


屋根の色はほとんどが緑青か、赤土色。

そんな中、そびえたつ城の白壁が目を引く。


「ん?おかしなことを言うね。…ああ、君らの世界はもっと多種多様なのかな」


「ああ、まあ。技術の上では可能、というか…。もっとも、あんまり自由ではないけどな」


建築基準法やら日照権やら、うろ覚えの知識で説明すると、ヨルキエは実に面白い、と目を輝かせている。


「その知識、惜しいなあ。どうだい?少しはこの間の話を考えてくれたかな」


「…」


オウタは即答できず、黙ってまた王都を眺めた。


隊商はそろそろ動きだす頃だろう。

辺りの人々はそわそわしつつも嬉しそうだ。皆、王都に無事戻ってこられた喜びが顔にも声にもあふれている。

待っている家族や恋人、しばらく離れていた間の流行りなど、話題は尽きないようだ。


そんな中、オウタとカサネはじわじわと湧き上がる不安を感じていた。

華やかな王都に入るといっても、先の予定は何も決まっていない。

ひとまず、ヨルキエの預かりになることは間違いないが、どういう扱いをうけるかもわからない。

あらためて、定まらない身の上を実感する。


そしてオウタは、数日前にヨルキエから出された提案を受けるかどうか、まだ悩んでいた。


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