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7/19

⑦黒瀬琴乃

翌朝、起きて廊下に出るなり夏帆に声を掛けられた


「おはよ~綾世」

「…おはよう」

「なー昨日の騒ぎは何だったんだ?」

「…後で言う」


やっぱ聞こえてたか

あんなに大きな声を出してたらそりゃ聞こえるよな…

尚も突っかかってくる夏帆を無視しながら二階から降りて食堂に入る

席に着くと藍ちゃんが椅子を寄せて私に話しかけてきた。


「綾世ちゃんは目玉焼きに醤油だっけ?私がかけてあげるね」

「い、いいよ…自分でする」


断ったのにも関わらず藍ちゃんは醤油をかけてくれ、それが終わると笑顔で私に雑談を振ってきてくれた。

…どういうこと?正直、彼女が椅子を寄せてきた時、心臓がキュッとなった。目玉焼きにタバスコを瓶一本分かけられるかと思ったがそうではなかった。むしろ彼女の瞳からは好き好きオーラを感じる。


向かいの席の玲子さんの顔をちらりと見ると彼女は酷く寂しそうな表情をしていた

マズぅぅぅいッ!!百合の間に挟まってるぅぅぅッ!!

玲子さん!今からでも遅くないから藍ちゃんに昨日の目隠しプレイ事件の顛末を話そうよ

信じてくれなくても絶対その方が良いから!


その後もずっと藍ちゃんと一緒だった。勉強時間も休憩時間も一緒

勉強時間に腕を組まれた時は、流石に見かねたのか黒瀬さんが注意してくれたけど、藍ちゃんは怯むことなく言い返して黒瀬さんを退散させた。

あの黒瀬さんを追い返しちゃう藍ちゃん強い…私の中での藍ちゃんのイメージが気が弱い子からどんどん変わってきてるよ…




所持ポイント:140


夕食後、部屋にお邪魔しようとしてきた藍ちゃんをなんとか押しとどめて自室に戻る

今日は苦手な歴史だったけれど4位の40ポイント貰えた

きっと最下位は気持ちが沈んでいる玲子さんだったんだろうな…


ベットで横になるお決まりのスタイルで考える

藍ちゃんは本当にどういうつもりなんだろうか?玲子さんへの当てつけのつもりなのか、それとも本当に私に乗り換えたのか…

いずれにしても昨日のことはどこかで弁解しないといけない


パキッ!


窓の外から微かに音が聞こえたので恐る恐るカーテンを捲って外を見てみる

ちらちらと光が見えた。誰かが裏庭に居る?夕食後の暗くなった時間に何をしているんだろ?

好奇心は恐怖心に勝った。私はそこに行って見ることにした。




「玲子さん?」

「…びっくりさせないでよ」


外に居たのは懐中電灯を片手に持った玲子さんだった。


「何してるの?」

「こ、昆虫採集よ」

「肩に虫付いてるよ」

「えっ!?取って取ってとってぇぇぇ!!」


私のウソに驚いた玲子さんは反射的に抱き着いて来た

こんな可愛い反応するとは…


「ごめん、ウソ」

「はぁ!?」

「先にウソ付いたのは玲子さんの方からじゃん。虫苦手なのに昆虫採集なんてするワケない。本当は何してたの?」

「本当は…うっ!?」


会話の途中でいきなり光に照らされて私と玲子さんは眩しさに目を細めた


「逢引きですか?」


私達を懐中電灯で照らしたのはメイドさんだった

また藍ちゃんかと思ったから少しほっとした。


「『同性交際』は許容しますが『不純同性交際』は頂けないですね」

「交際してないから!」


なにやら勘違いしているメイドさんにつっこむ


「何れにしろ夜間に施設の外に出ることは禁じられています。速やかにお戻りください」


そういってメイドさんは帰っていた


「『同性交際』と『不純同性交際』…」

「あの…その違い考える前にそろそろ離れない?」

「!?」


ようやく密着した体勢に気づいた玲子さんは一気に赤面して私から離れて走り去ってしまった

ちょ、結局本当の目的聞けてないんですけど!?




部屋に戻り、またベットに横になって一息つく


トントン


突然のノックに全身が強張る

藍ちゃんか?やっぱりさっき玲子さんと抱き合ってたのどこかで見てたのかと思い、恐る恐るドアを開くとそこにはニカっとした笑顔を浮かべた夏帆が立っていた


「…なに?」

「つれないな~昨日なにがあったかそろそろ教えてくれよ。あとなんかさっき外が騒がしくなかった?」


そういえば朝に「後で言う」って言った気がする

藍ちゃんと玲子さんが付き合っていたことを勝手に話すのはどうかと少し躊躇したが、コイツは以外と口が堅い、自分独りで背負い込めるものでもないと思ったので、彼女を椅子に座らせて昨日の顛末と、さっき玲子さんが外に居たことを話した。


「アハハハ!ボクもその現場に居れば良かったぁ~」

「笑いすぎ!」


…やっぱ言わなきゃ良かった

夏帆は尚も笑いながら立ち上がって私のベットに倒れこんだ


「人のベットで寝るな。分かったなら帰れ」

「…でも良かったな」

「はぁ?なにが?」


うつ伏せに倒れこんでいるので、夏帆の表情は知りえないが、もう笑っていないことは察することが出来た。


「玲子が外で何してたかは気になるけど、これで容疑者が絞れたよね。黒瀬だよ。犯人は」

「……………」


藍ちゃんと玲子さんのことで頭がいっぱいになっていて気が付かなかったが確かに容疑者は黒瀬さん一人に絞られている。

初日の時点では付き合っていた彼女らが私にキスをするハズはない


「やっぱりな~ボクは最初から黒瀬が怪しいって言ってただろ?言わなかったけど藍と玲子が付き合っているのも気づいてたんだ」

「適当言うな。藍ちゃんも怪しいって言ってただろ」

「そうだっけ?まぁそれはどうでもいいじゃん」


夏帆はぐるっと反転して仰向けになり、私の目を真っすぐに見た


「黒瀬と話してきなよ。決着を付けるんだ」

「…うん」




自室を出て、黒瀬さんの部屋に向かう

今日のことも含めて彼女は私を時々助けてくれた

彼女がキス犯だと確定した時、私はなんて言うんだろう…


頭の中の整理が付かないまま黒瀬さんの部屋の前に付いた

軽くノックをすると暫くしてからドアが開いた


「…遊びに来た訳ではなさそう」

「…うん」


黒瀬さんの部屋に初めて入る

頭が良い彼女のことだからさぞかし部屋の中は豪華だろうと思っていたが違った

ベットやカーテンは初期のままで、ダンベルやぬいぐるみもない


「…カフェオレでも頼む?」

「いえ、お構いなく」


一応、歓迎してくれる気があることに安堵する


「…藍さんのこと?」

「それもちょっと困ってるけどそっちじゃなくって…」


訝しげに私を見る黒瀬さん

ここで私の悩みを藍さんのことだと推測してくるのはシロいと思った

けど、ここまで来て帰るワケにはいかない

意を決して聞いてみることにした。


「…私のこと好き?」

「な、なにを言っているの?」


緊張から変な所から本題に入ってしまったが、黒瀬さんは明らかに動揺した

冷静なすまし顔じゃない彼女を見るのは初めてかもしれない

あれ?これはクロか?キスしました?

このチャンスは逃さない、更に攻勢をかける


「初日になんでも叶えるチケットを使われて何者かにキスされたの」

「……………」


黒瀬さんは押し黙ってしまった

夏帆や玲子さんに話した時とはまるで違う反応

これは怪しい、怪しいぞ


「メイドさんに目隠しされて縛られたから誰にキスされたか分からないの」

「私を疑っているってこと…」


お互い見つめあったまま沈黙する

黒瀬さんの表情はもう元に戻っている

沈黙を破ったのはまず彼女からだった


「…その話、他の人に話した?」

「夏帆と玲子さんには言ったよ」

「…そう」


黒瀬さんはまた黙った

正直彼女のこの沈黙の意味が分からない


「…なにか手がかりはないの?」

「目隠しで使われたのはポイントで買えるアイマスクだと思う」

「…アイマスク」


目を伏せて考え込んでいる様子の黒瀬さん

私は彼女をじっと見ていた


「…()()()()()()()


黒瀬さんは独り言のように呟いた

どうしてそんなにアイマスクが引っかかるんだろう?

彼女は口に手を当てながら何かを考え込んでいたが、暫くすると私に視線を合わせた。


「私がアイマスクを買うのは不可能」


そう言って黒瀬さんは机の上に置いてあるノートバソコンを指さした

傍らには()()()()()()()()()()()()()()()()()()


スマホを取り出してポイントを確認する

ノートパソコンが500ポイントで言葉にするも憚れるアレが200ポイント

ここに来てから丁度、一週間

確かに他の物を買ってる余裕はないし、黒瀬さんは藍ちゃんみたいに庭の手入れ等のお手伝いをしていた様子もない

てか毎日一位なのかよ…天才か?


「確かに黒瀬さんがアイマスクを買うのは無理かも」

「…分かれば良いの」

「はい、すいませんした。よく考えたら完璧美少女の黒瀬さんが私みたいなブタに一目惚れするなんてありえませんよね。ブタはブタらしくこれからは干し草だけ食べて生きていきます。ブヒッ」

「…そこまで卑屈にならなくてもいいけど」


とんだ赤っ恥だ

踵を返して黒瀬さんの部屋から出ようとする


「…待って」

「分かりました」


呼び止められた私は黒瀬さんの前に跪いて彼女の足を取った


「…待って、、待て!本当に待って!なにが分かりましたなの!?」

「はい?」

「なにをしようとしているの?」

「いや、足を舐めて許しを請おうと…」

「…そんな趣味はない」


謝罪が足りないわ…私の足を舐めなさいこのメス豚

って意味で呼び止められたかと思ったがどうやら早とちりだったらしい

真っ赤っ恥だ


顔を上げて黒瀬さんの表情を見る

彼女は明らかに困惑した様子だった。


私の想像の中のゴミを見るような目つきの黒瀬さんじゃない

…じゃあなんで呼び止められたの?


「私が言いたいのは…」

「言いたいのは?」


そこまで言って言い淀む黒瀬さん

彼女の視線が泳ぐ

なんだろう?犯人の心当たりがあるとか?


「あの…」

「うん?」


黒瀬さんは視線を逸らしたまま暫く口をもごもごしていたが、急にこっちを見据えてきっぱりと言った


「やっぱりいい」

「え?」


部屋から追い立てられるようにして出る

一体全体なんだったんだ

全く分からなかったけどちょっと可愛かったぞ


とりあえず彼女はキス犯ではないと思う

けど、なにか隠しごとをしているのは確かだ




釈然としない気持ちで自室のドアを開ける

このまま寝てしまおうと思ったが、ベットには先客が居た


「すぴ~」


夏帆が私のベットで気持ちよさそうに寝息を立てて寝ていた

コイツずっとここに居たのかよ


「起きろ~!人のベットだぞ」

「んー?」


揺さぶって起こすと夏帆は横にズレて布団をめくった

いやいやいや、ズレてくれって言ったんじゃないから、一緒に寝ないから!カノジョか!?どけ!!


夏帆の腕を掴んでベットから引きずり降ろすと彼女はやっと目を開いた


「んー、眠い~」

「寝るなら自分の部屋で寝てよ」

「…その前にさ~黒瀬は犯人だった?」

「黒瀬さんは犯人じゃないよ。ポイント全部使い切ってる。アイマスク買ってる余裕はない」

「そっか~」


そう言って夏帆は床の上で寝返りを打った

コイツ、泊まる気か?


「振り出しに戻るだな~」


夏帆はついに力尽きたのか床に転がったまま目を閉じてしまった

はぁ…仕方ないなぁ

今日だけだぞ、調子に乗るなよ


彼女に掛け布団を掛けてあげる

適当に生きてそうなヤツだが、裏表がない所は好きだ


私は脱衣所からバスタオルを持ってきてそれを掛け布団替わりにしてベットで寝た。

お読み頂きありがとうございます!感謝感激です!!




ブクマと評価して頂けたら100メートルくらい飛び上がって喜びますのでどうかよろしくお願いいたします!!

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