⑲好きなところ10個
前に行った湖畔で絵を描く。横には黒瀬さんも居る。
あれから私はまた絵を描くようになった。黒瀬さんが私の絵を好きだと言ってくれたお蔭だ
絵を描かくなってから心配するコメントはいくつか貰ったが、どれも私の心には響かなかった。
でも黒瀬さんというファンに実際会って私の考えは変わった。また絵を描けるようになった。一枚仕上げるごとに彼女は言葉を尽くして褒めてくれた。それが嬉しくてまた描く
黒瀬さんも画材を広げて絵を描いている
正直まだ上手いとは言えないけど、最初よりも上達しているのは確かだ
彼女はもっと上手くなったら私をモデルにして描きたいと言っていた。
黒瀬さんから私はどう見えているんだろうと思っていたから描いてもらう日が楽しみだ
少女マンガみたいにキラキラした私だったらどう反応しよう
「おーーーい!」
釣りをしていた夏帆が釣った魚を掲げながらこっちに走り寄って来た
なんかグロい魚持っとる!
「みんなで食べようよ」
「ええ~」
私と黒瀬さんが微妙な反応しているのに夏帆は構わずメイドさんの手解きを受けながら謎の魚を調理し出した。最近の彼女はサバイバルに興味があるらしく、心得があるメイドさんに色々教わっている
サバイバルは良いんだけど、変態なところは影響受けて欲しくないなぁ…夏帆のカノジョとして
焼きあがった魚を夏帆に差し出され、恐る恐る口に入れる
「…美味しい」
「な~」
私の様子を見て夏帆がニカっと笑った
日に照らされたそのかんばせはどんな宗教画の天使よりも美しく見えた
恥ずかしいから言わないけど
「今頃、玲子さんたち楽しんでるかな」
玲子さんと藍ちゃんはピュローランドに行っている
「二人のことだからきっと楽しんでると思うよ~」
そういいながら夏帆も魚を頬張る
「楽しんでいる…」
「メイドさん」
「はい?」
「今『楽しんでいる』を別の解釈したでしょ?」
「そのようなことはございません。極めて真っ当で健在な解釈をしました」
「…怪しすぎる」
メイドの怪しい弁解はさておき、私には新たな悩みがあった
それは夏帆と付き合ってから恋人らしいことをしていないということだ
むしろ付き合う前の方がイチャコラしてたような気がする
間接キスしたり身体を弄ったりしたし、今は逆に意識してしまっていて出来ない
でもこのままじゃダメだよなぁ…もっと夏帆に近付きたいよ
「ねぇ」
「ん?」
「今夜部屋に行っていい?」
「う、うん」
夕方、釣り道具の片付けをしていた夏帆の所に行って部屋に行く約束をした。
付き合ってから夏帆の部屋に行ったことは何度もある
けど、事前に約束して行ったことはない
いつもはカフェオレを飲みながら二人でワイワイお喋りをするだけ
私の事前申告に夏帆は意味を察したのか少し戸惑って答えた。
夜、夏帆の部屋のドアをノックする
すぐ返事があったので中に入った。
「ほ、ほほ本日はお日柄もよよよよ良く」
「どうした!?」
緊張し過ぎでしょ!やりにくいわ!!
こっちまで緊張しちゃうじゃんか
昼間にグロい魚をがっついてた勢いはどうした?
「普通にしてよ」
「う、うん、、き、今日も綾世は可愛いなぁ~」
「そうじゃなくて」
「そうじゃない?」
「私と二人の時は素になってよ。キャラ作んなくて良い」
「うん…」
ベットに座っていた夏帆の隣に座る
彼女はまだ緊張しているのか姿勢をピンと正した
今からプロポーズされると思ってる?
「…10個」
「え?」
「私の好きなところ10個言われてない」
「うっ…」
我ながらめんどうなカノジョだ
でも奥手の夏帆にはこれくらいの荒治療が必要だと思う
「か、可愛いところ」
「ふーん」
月並みだ
月並みだけど素で言われるとちょっと嬉しい
でも嬉しい素振りは見せない
「綺麗なところ」
「可愛いと綺麗どっちなの?」
「う~~~どっちも」
「ありがと」
ワザと淡泊な礼を言い、夏帆に軽く抱き着いた
「あとは?」
「良い匂いがするところ」
「今嗅いでそう思った?」
「そ、そうじゃなくて、、いつもするから…」
夏帆の身体を強く抱く
彼女はもっと身体を硬直させた
こういう時って多分お互いに抱き着くんだと思うよ
「綾世の身体も好き」
「身体?」
「へ、変な意味じゃなくて、見た目が好きって意味」
「私べつにスタイル良くないって」
「ううん、愛嬌があって私は好き」
「身体に愛嬌って、、、それ褒めてる?」
「褒めてるよ」
そう言って夏帆はようやく私を抱きしめてくれた
心地よい、ずっとこうしていたい
でもまだご褒美はあげないですよーだ
「さっきから外見ばっかじゃない?私の好きな所って見た目だけ?」
「一緒に居て楽しい」
「うん、私も夏帆と居ると楽しい」
暫くお互い無言で抱き合う
夏帆の緊張が少し溶けてきたみたい
「あと5個」
「可愛いところ」
「それさっき言った」
「違う、性格が可愛い」
「どういう意味?」
「ん~~こっちがなんか言うと素直にリアクションしてくれるって意味」
「だったら素直なところでいいじゃん」
訂正したが本心ではデレデレだ
こんなに褒められたことは今までにない
私はもっと甘える
「それでそれで?あとは?」
「時々意地悪なところ」
「それは悪口じゃない!?」
「そんなことない」
「そうかな?」
「うん、意地悪なところも好き」
私のダメなところも好きって言ってくれるんだ
気持ちが抑えきれなくなりそうになったが必死に抑える
「優しいところ」
「私って優しいかな?意地悪なのに?」
「意地悪なのは玉にだよ。普段は頼まれたら断れない優しい気持ちを持ってる」
「そうかな。えへへ」
ついに堪えきれずに笑顔になってしまった
でもこんなに褒められたらしょうがないよね
「私を好きになってくれたところ」
「今9個目だよ。それって最後に言う言葉じゃない?」
そういいながら夏帆の口に自分の口を近づける
ついつい憎まれ口を叩いてしまうが内心では幸せでいっぱいだ
「全部、全部がぜーーーんぶ好き!!!」
「なにそれ、ずるいよ…でも私も夏帆の全部が好き」
夏帆と唇を重ねる
初めて自分からするキスだから上手く出来るか不安だったけど、心が重ねって彼女の気持ちが流れ込んでくるのを感じる
私の気持ちも伝わってるといいな。ううんきっと伝わってるハズ
顔を離す
夏帆の顔は真っ赤だった。可愛すぎるぞ
この娘、私のカノジョなんですよーーー!
「………い」
「え?」
「もう一回したい…な。ダメ?」
返事の代わりにもう一度キスをする
そんな可愛いおねだりされたら何回でもキスしちゃうよ
意地悪してごめん。これからもよろしくね。私の可愛いカノジョ
最後までお読み頂きありがとうございます!感謝感激です!!
沢山のブクマと評価をして頂いて本当にありがとうございました!!!
宜しければ前作の『憧れの『お姉さま』を探す為に100円で女の子に抱かれる部活に入った女の子のお話』もこんな感じのギャグなので読んで頂けると幸いです。
ブクマと評価して頂けたら10000メートルくらい飛び上がって喜びますのでどうかよろしくお願いいたします!!
 




