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10/19

⑽素直で良い子で怖い子

所持ポイント:20


昨日帰ってきてからテストがあるとは思ってなかった

この施設、変なとこ厳しいな


目を擦りながらベットから降りる


「ぬごぉ!?」


小指に激痛が走った

バーベキューセットの角にぶつけたのだ

このクソベキューセットぉ!!全財産はたいて買ったのにたいして役に立たなかった癖に、ご主人様に牙を向くとはなにごとだぁ!!

てかこれが部屋に置いてあるのおかしいよな。あとで中庭の倉庫にでも持ってこ




朝食を済まし、自習時間が終わったところでバーベキューセットを中庭の倉庫に運んだ

暫く使わないだろうし、めんどくさいけど奥にしまっておこう


「!?」


手前に積んであった荷物をどかした所で衝撃的なモノを発見してしまった

ば、バーベキューセットがもう一つある…

調べたら私が買ったベキューセットと全く同じモノだった

お、お前…アニキが居たんか…

既にあるならこれ使えば良かったじゃん!全財産使ったんやぞ!メイドさんが「そういえばベキューセットは倉庫にありますよ」って言ってくれれば買わずに済んだのに

てか、今更ながらみんなにもムカついてきたな。アイツらビーチボールとかフリスビーとか安いもんしか買ってなくない?




所持ポイント:40


朝からの不運続きで夜のテストも捗らなかった

こういう日はもう寝てしまおう


トントン


寝る準備をしていると、部屋のドアが鳴った


「もう寝るつもりだったの?」

「まぁそんなところ」


また夏帆がニカっとした笑顔で訪ねて来たかと思ったが、来訪者の正体は玲子さんだった


「そんなところって…進捗は?」

「あっ…」

「忘れてたの?呆れた」


そういえば昨日のピクニックの時、玲子さんと施設を調べてみる約束をしたんだった

小指のショックですっかり忘れてた

とりあえず私は玲子さんに謝る…ことはせずに言い訳をした

他責人間、綾坂綾世とは某のことよぉ!


「いやだって、朝から大変だったんだって、バーベキューセットに小指ぶつけるし、そのバーベキューセットを中庭の倉庫に持って行ったら全く同じモノがあったんだよ!?ショックでそれどころじゃなかったんだって!ぶたないで!」

「私がいつぶったのよ…って全く同じモノ?」

「そうなんだよ!倉庫の奥にあってさ、メイドさんが言ってくれれば買わずに済んだのに」

「それってポイントで買える新品じゃないの?」

「違うよ。使った形跡があったし、ポイント用の新品なら外の倉庫なんかに置かないでしょ…ってあれ?」


そこまで言っておかしいことに気づいた

玲子さんも私と同じことを思っているようだ

顎に指をあててドラマの探偵が思索するようなポーズを取っている


「進捗あったわね」

「…うん」


消耗したバーベキューセットが2個あるのはおかしい

誰かが買っていれば、ピクニックに行くと決まった時点でそれを話しているハズだ


「私達は1期生じゃないってことかしらね」

「前の世代の人がポイントで買ったってことかな」

「でもメイドさんは最初の説明で私達5人が1期生だと言った…」


つまり、施設は私達の先輩の存在を隠している

でもそれはなんの為に?


「大体、全員が同じ学年っていうのもおかしいのよ。更生施設なら年齢がバラバラの方が自然だわ。やっぱり私達は何かの目的で集められているのよ」

「学年が同じならテストで管理しやすいし、それは一概におかしいとは言えないと思うけど…」


私の反論に玲子さんは納得していない様子だったが、彼女は自分の進捗を説明した


「結論から言うと私の部屋にはなにもおかしい所はなかったわ。隠しカメラや盗聴器の存在は見つからなかった。最近は巧妙なモノがあるらしいから完全にとは言えないけど」


それを聞いて少し安心した

昨日の玲子さんの話は小指のショックで忘れてしまうくらい信じてなかったけど、バーベキューセットの一件で施設が私達になにかを隠しているのは確かだ。だから今は彼女の陰暴論をかなり信じている自分がいる。


「明日、ロビーを調べてみない?玲子さんが言うように私達の生活がショーになってるならロビーが一番怪しいと思うよ。恋愛バラエティでも一番観る場面だし」

「…そうね」

「だったらみんなにも手伝って貰おうよ。5人で探した方が効率が良いよ」

「それはダメよ。昨日も言ったけどこの話は他言無用よ」


提案を強い調子で否定されて少したじろぐ


「…あまりこういうことは言いたくないけど、私達の中に内通者がいるかもしれない」

「…誰が怪しいと思うの?」

「夏帆さんが黒瀬さん…」

「…それは何故?」


私の剣幕に今度は玲子さんがたじろいだ


「夏帆さんは昨日のピクニックの件といい、いつもなにかの起点になってるわ。ショーを廻すようにね」


私と夏帆はそういうことがあったと思ってるからか、かなり言葉を選ぶように玲子さんは話した

ゾッとした。もし、夏帆が内通者でショーを盛り上げる演出として私の唇にダンベルやジュースの缶を当ててたとしたら…


「黒瀬さんは逆ね。彼女の口数は少ない。だからショーのカメラマンとしてはうってつけ」


頭の良い黒瀬さんがたまに私に勉強を教えてくれと言いながら、近づいてくるのはその為?

それだけならまだ良い、昨日のことが偶然じゃなくて、仕組んだことだとしたら…

()()()()()()()()()()()()()()


「その様子だと思い当たるフシはあるようね」

「……………」

「話しづらいことはあると思うけど、全部言って欲しい」

「…交換条件にしない?」

「交換条件?もう私に提供出来る情報はないわよ」

「藍ちゃんのことで聞きたいことがあるんだよ」

「!?!?!?」


先日の倉庫での藍ちゃんの態度、キス犯のことを聞いた時、彼女は執拗に玲子さんの反応を気にしていた。夏帆や黒瀬さんはなにかを隠しているのかもしれない、それと同じように玲子さんと藍ちゃんもなにかを隠していると思う




「みーつけーた」


玲子さんから藍ちゃんのことを聞くことは叶わなかった

張本人の藍ちゃんがドアを少し開けてこちらを覗いたからだ

瞳孔めっちゃ開いてんですけど!首の角度がこえーよ!


「まーた二人で居るんだね」

「ち、違うのよ!」

「ん?違う?なにが違うの?私、二人で居るんだねって言っただけだけどなー今、二人で居るよね?それが違うってどういうこと?なんか他のこと言ってるのかな?分からないなー」


こ、怖えええええッ!!

ヤンデレモードの藍ちゃんがゆっくりとこちらに迫ってくる

私と玲子さんは思わず後ずさりした

いや、玲子さんは踏みとどまってよ!今カノなんでしょ!?ちなみに私も第一声が「違う」は選択肢マズったと思うよ


「玲子の部屋のドア、ノックしても反応なかったからまさかとは思ったんだよね。昨日も途中で二人で消えたでしょ?そうなの?そういうことなの?」


恐怖のあまり、隣の玲子さんに抱きつきそうになったが、なんとか踏みとどまる

ここでこんなことしたら完全にバットエンドだ


「違う、違うわ!」


違うしか言わねーじゃん!逆に怪しいわ!!

ここは正直になんの話してか言おうよ

藍ちゃんは内通者の容疑者じゃないんでしょ?


「藍ちゃん!二人でいたのにはワケがあるんだ!」


玲子さんが否定botになってしまった為、私がこれまで彼女と施設のことを調べていたことを説明した

直前の交換条件の件は伏せたケド




「そういうことだったんだ…ごめんね疑って」


藍ちゃんはすんなり信じてくれた

やっぱり根は素直で良い子だ


「…ってそんな作り話信じると思う?ナメてるのかな?」


藍ちゃんの手が玲子さんの首にかかる

やっぱり根は怖い子なんだ


「なんで私にその話をしなかったの?」

「~っ!」

「ん?反論出来ない?」


反論出来ないのは首絞めてるからじゃないっすかね…

でも確かに藍ちゃんにその話をしなかったのはなんでか気になる


「…あ、藍…っを」


玲子さんの顔が赤からナスみたいな顔色になってきたので、流石に二人を引き離す

今日は最後まで厄日だよ…


「藍を危険に…晒したくなかった……のよ」


え?マジでそんな理由?

施設って想像以上にヤバかったりするの?前の先輩は秘密を知ったから全員消されたとか?

てか、私の身はいいのかよ…


「れ、玲子ぉぉッ!私のことをそんなに想ってぇ!!疑ってごめんなさいィ!!」

「い、いいのよ…」


どうやら今度こそ藍ちゃんは信じてくれたらしい、彼女は玲子さんに抱きついた

やっぱり根は素直で良い子で怖い子だ

お読み頂きありがとうございます!感謝感激です!!




ブクマと評価して頂けたら100メートルくらい飛び上がって喜びますのでどうかよろしくお願いいたします!!

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