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異世界転生?・・・してませんよ!  作者: 美都崎 里美
1章 オリビア 前世を思い出す
4/23

第4話 私の婚約者

オリビアの婚約者(予定)

オーウェン王子から見たオリビアです

私の名前は、オーウェン・アビステル

この国アビステル王国の第一王子にして

今のところは王太子です。

どうして今のところなのか?


私には四人の兄弟が居ます

弟が2人、妹が2人の五人兄弟です

ひとつ下の弟、ルーカスと3歳下の妹スカーレットは

側妃であるエリザベス殿の子ども

ひとつ下の妹エイブリーと2歳下の弟サミュエルは、私と同じ母上

イザベラ・アビステルが母親です。


この国では一番上の子どもだから、正妻の子だから、または男性だから

そう言うことと王位継承権は、全く関係ありません。

国のトップは恒に王族の中で最も魔力の強い物がなる!

ただし、時間的な問題もあるので、一番上の子どもが王立魔法学院を卒業したときに、王太子は決定されます。

学校に通ううちにも魔力は伸びるので、長男長女がどうしても有利になります。

又、比較的男性の方が魔力が強い傾向があるので、長男が次の時代の王になることが非常に多い傾向にあります。

さらに、側妃よりも正妃の方が魔力が高いのが一般的、子どもも魔力の高い子どもが生まれる確率が高くなります。

要するに、なんだかんだ言っても、正室の長男が王位を継ぐ可能性が最も高いと言うことです。


そんな理由は別にして、今現在は兄弟の中で私の魔力が一番!

次代の国王に一番近い存在です。

この国の王族であれば、8才頃から婚約者の話が出ます。

婚約者も、やはり魔力ありき!

男性であれば、2才上から3才下

女性であれば、3才上から2才下

この年齢の貴族令嬢令息のなかで、基本的に最も魔力の高い者が婚約者として選ばれます。

ただし、王太子と同様に、学園にいる内に魔力は伸びます。

8才そして12才の魔力測定時にはあくまで婚約者候補!

一番魔力の高い者は筆頭婚約者候補となります。

学園を卒業した段階で、正式に婚約者として認められます。

もちろん、ある程度はお互いの意思も尊重されます。

特に魔力の差が僅差だった場合、お互いの意志で相手を選ぶことが出来ます。

さらに国母としての資質、立ち振る舞い、教育、思想、カリスマ性も問われますが、魔力の高い者は高位貴族

魔力以外で大きな優劣が付くことはありません。


王太子妃の座は貴族女性の憧れ、それぞれの貴族家も王家との縁戚に成ることを望みます。

自ら身を引くご令嬢など、過去に1人も居ません

サラに、ある程度差がある場合、王太子と婚約者候補、双方の希望があれば、

学園卒業前に婚約者として認められます。

ほとんどの王太子妃候補は、王子の了解を取り付け

早い内に正式な婚約者になるようにして居ました。

候補の女性が学園に入学した時点で、婚約しなかった例は今まで1回も有りませんでした。


私の婚約者候補は、オルティース公爵家のアビゲイル嬢、サリヴァン公爵家のアリア嬢、

そしてレイエス公爵家のオリビア嬢、ほぼこの三人に絞られていました。

年齢は全員私よりもひとつ下です。


その結果は・・・8才の魔力測定の時にあっさりと勝負が付きました。

オリビア嬢が、他の二人よりも5割ほど魔力が強かったのです。

侯爵家以下のご令嬢は、やはり公爵家の令嬢には太刀打ちできず。

一番高かったラッセル侯爵家のシャーロット嬢でも、オリビアの半分強ほどの魔力にとどまっていました。


一般的に魔力の強い人間は容姿が整っています。

サラに、成長と共に魔力の伸びる者は、美しく成長します。

この因果関係は、はっきりと証明されていないのですが、いまだかつて例外は無かったようです。


レイエス公爵家は、成り上がり公爵と揶揄されることもしばしば。

しかしながら、度重なる素晴らしい発明で、国の発展に大きく貢献してくれた一族。

陞爵する度に、魔力の高い高位貴族の女性を迎え入れたため、今では一般的な公爵家として恥ずかしくない魔力の持ち主ばかり。

今まで通り、先祖代々の魔力の多さで、公爵を名のっている御三家よりも

私としては、自力で公爵まで上り詰めたレイエス家を評価しています。



オリビア・ド・レイエス

この名前は以前から聞いていました。

5才の魔力測定の時に、他の公爵家のご令嬢より2割ほど高い値を出し、

その魔力の高さの通り、容姿端麗で、妖精姫と言われていたこと・・・

しかしオリビアの凄いところは、魔力や容姿だけではありません。

子どもの頃から、色々な新しい発見や発明を、何でも無いことのように発表する、

発明一家のレイエス家の血筋を、非常に色濃く受け継いだ娘

天才妖精姫と呼ぶ人も多く、領民からも愛されています。


そしてオリビアが8才の魔力測定

近い年齢に王族がいる高位貴族の子ども、

さらにその親達にとっても、婚約者候補を決める大事なイベントです。

結果は、実にはっきりとしたものになったわけです。


私は一番自分の婚約者に近い娘を見に行きました。

そして妖精と言われるその容姿に目を奪われたのです。

魔力の高い者は、ほぼ間違いなく容姿が優れています。

当然公爵家以上のご令嬢は、美少女ばかりです。

その中でもオリビアの美しさは群を抜いていました。

サリヴァン公爵家、オルティース公爵家、どちらのご令嬢も

8才とは思えない美しさでしたが

オリビアの美しさは、他の2人のような派手な美しさでは無く

透き通るような美しさ、

それでいて、海に面したサランファン地方独特の褐色の肌

深窓のご令嬢と言った雰囲気の、色白でおとなしそうな他の貴族令嬢とは

全く違う自由奔放な妖精のよう

その雰囲気、まさに妖精姫


聞くところによると、オリビアの母親は、元男爵家の娘

高位貴族並みの魔力の高さで、後妻とは言え公爵婦人になったらしいのです。

元々は下級貴族。

魔力が高い人間らしく、とても美しい人ですが、

その美しさは、多少なりとも庶民寄りな儚げな美しさだそうです。

その母の儚さと、高位貴族らしい美貌の良いとこ取りの結果

オリビアは誰もが納得する妖精姫となったのでした。


天才、そして妖精と言われる婚約者候補

私は少し嬉しくなって、話しかけてみました。

「おめでとう、素晴らしい魔力だね」

「あ、有り難う御座います・・・殿下」

少し驚いて返事をするオリビア、その少し驚いた様子もとても可愛らしく

すっかり気に入ってしまいました。

「君が僕の婚約者になるんだね」

「え?婚約者、候補っですよね、今の時点では・・・まだ・・・そうですよね?」

「厳密に言えばそうですけど、この年齢でこれだけ差があったら、覆ることはありませんよ」

「イエイエ、分かりませんよ、我が家は伯爵家から2度の陞爵で公爵家になりました、同じように魔力を伸ばす驚くべき方法を見いだすご令嬢がいてもおかしくありませんよ」

「そんなご令嬢がいるわけないでしょう、居るとしたら君じゃないのかな?」

話の流れで、そして半分は本気で言ったこの台詞

4年後に本当のことになるとは、この時の私は思っても居ませんでした。



そして12才の魔法学園のクラス分けを兼ねた魔力測定

公爵家の令嬢三人の魔力測定の日

生徒会役員として、魔力測定に立ち会わせてもらいました。

結果は予想通り、イエイエ予想の遥か斜め上を行く結果でした。


入学前魔力測定、過去最大値の1.5倍たたき出し

同年代の倍近い魔力でSクラス入りをしたオリビア

しかもその時にこっそり漏らした独り言

ダレにも聞かれなかったようですが、私の位置からは唇の動きが見えていました。

どう見ても

「いけない、やり過ぎちゃった」

そう言っていたようなのです。

おそらくはアレでも全力では無かったようなのです。

益々オリビアに興味を持ってしまいました。

そして、少し心配にもなるのでした。

何らかの方法で入学前の子どもに魔法を教えてはいないだろうか?


きちんとした道徳倫理教育をする前に、危険な魔法を教えることは重罪です。

親子とも極刑になることもあります。

王国の歴史の中、過去に2度ほどこの事件が起きたことがあります。

その貴族家はもうこの世界に存在していません。


各貴族家には爵位に応じて、1~4人程度、

密かに国から派遣された使用人がいます。

その使用人は、日本で言う草のような存在、全く普通の使用人と区別が付かず、特別なこともしていません。

ただひとつだけ、親が入学前の子どもに魔法の教育をしていないかを見張るだけの存在です。

今のところ、レイエス家に派遣した使用人からは、そのような報告は受けていないようでした。



新学期が始まる前、学校は2週間の休みになります。

せっかくのお休みです。

13才の王子には、まだそれほど多くの公務はありません。

婚約の打診をかねて、レイエス家を訪ねることにしました。

「それに、久しぶりにオリビアに逢いたいしね」

そんな独り言を言いながら、飛行具を飛ばしていきます。

王子の魔力はこの国のトップクラス

学生とは言え、護衛よりも魔力は上回っています。

いくら高い魔力があっても、一国の王子、しかも王太子候補が護衛も付けずに出かける訳にはいきません

はやる気持ちを抑えて、無理のない早さでレイエス家へと向かいました。



「お嬢様大変です、オーウェン王子がいらっしゃいました」

オリビアの部屋を筆頭執事であるマシューが訪ねると、部屋にはベッドメイクをしていたメイドのメアリしか居ません

「ああ、メアリ、お嬢様は?」

「お嬢様は又ジョンソン商会ですよ、ノア様が送って行かれました」

「又お嬢様は・・・まさかあの新型の飛行具に2人乗りで?」

「エエ、飛行具に跨がるからと、お屋敷の作業部屋から作業着姿で・・・一応お止めしたのですが・・・」

「殿下になんと説明しよう・・・」

がくりと肩を落とすマシュー、申し訳なさそうに立ち尽くすメアリでした。





「アチチチ!」

2枚の重ねた鉄板の継ぎ目を指さすようなポーズをしていたオリビア

真っ赤になった鉄の繋ぎ目から慌てて指先を離します。

「お嬢!革手袋くらいはした方が良いんじゃない」

声を掛けたのは、ここジョンソン商会の次男坊、オリビアと同じ年のマットです。

ジョンソン商会は何代も前から、レイエス家の発明品の加工を一手に引き受けている大きな商家です。

そして、レイエス家の陞爵と二人三脚で大きくなってきた商会でもあります。

特に、長男のジョンと次男のマットは子どもの頃から、色々な加工品を手がけてきました。


公爵家のご令嬢、それも最高の美少女

最初の内はオリビアお嬢様と呼んでいたのですが

いくら止めても、一緒に作業着を着て加工品を作ったり

魔法のテストをするオリビア

年の近いこともあり、何時しかジョンもマットも、そして2才年下のリロイも「お嬢」と呼ぶようになってしまいました。

因みに長男のジョンはオリビアより3才上、リロイには双子の妹エヴァが居ます、そしてサラにその下には5才下の妹ロッテ

五人兄弟です。


「手袋をすると感覚が狂うのよ、それに革手はゴワゴワだし、せめて軍手があればなぁ~」

「ナンだよグンテって」

「まあ良いじゃ無い、指をこれ以上近づけると火傷しちゃうし、離すと集中しないしなぁ~」

「お嬢が火傷なんかしたら、俺ノア様に殺されちゃうよ・・・冗談抜きで。でもさぁ、魔法で鉄を溶かしてくっつけるなんて、ムリなんじゃない?お嬢はマダ魔法学園入学前でしょ、」


貴族子女は、そして魔力のある者は全員魔法学園に入学します。

魔法を本格的に学ぶのはそこから、それまではせいぜい、水を温める程度

一定の水をどのくらい温められるかで、魔力量を測ります。

逆に入学前に魔法を習うことは禁止されています。

魔法は非常に便利な術ですが、凶器にもなります。

一瞬で人の命を奪うことのデキル技です。

きちんとした道徳教育、しっかりとした倫理観

コレをたたき込まれる前に魔法を教えることは犯罪になります。

平民であるジョンやマットは、魔法に関する法律をそこまで詳しくは知りませんが

進学前は魔法をきちんと教わっていないことくらいは知っています。

ただし、オリビアの魔力や魔力制御が桁違いなことは、分かっていませんでした。


「そんなコト無いわよ、今の魔力を一点に集中すれば出来るはず・・・トベラの木有るわよね」

魔力量は大して必要じゃ無いと納得させたオリビア、次の考えを試すことにしました。

トベラとは魔力を流しやすい木材です

この世界の魔術師が魔法の杖みたいにして使います。

「杖に加工したの一本貸してよ、なるべく細いやつね」

「え~大丈夫かよ、壊さないでくれよな、高いんだから」

「けちくさいこと言わないの!これが成功すれば、又々ジョンソン商会大もうけなんだから」

「しょうが無いなぁ~」


「よ~っし・・・集中してぇ~」

魔法の杖を鉄板に近づけて、魔力を流すオリビア


鉄の融解温度は約1500度、

アーク溶接の温度は5千度は必要なはず。

広い範囲は絶対に無理、デモピンポイントに絞れば!


「うわ、まぶしい」

青白く輝いた杖の先、赤から白に変化した高熱が鉄を溶かすことに成功したようです。

「お嬢、杖の先、火が付いてる!早く消して!!」

「あ!イケナイ、水水、ああ、近くにない、う~ん・・・エイ!

棒の先端を踏みつけるオリビア

バキ!

火は消えた物の、細身の杖は真っ二つに折れてしまいました。

「あ~!だから言ったのに、チョット燃えたくらいなら削り治せばどうにかなったけど、これもうダメだぁ~」

「でも、見てよマット!ほら、この部分ちゃんとくっついてるでしょ」

さっきまで光っていた接合部を指さすオリビア

「あ!ホントだ・・・でもさぁ~このくらいなら、火床ほどであぶって金床でたたいた方が簡単じゃない?ふいごは魔道具だから自動だし」

「何言ってるのよ、これはあくまでもテスト!

それにあぶってく付けるって、溶けやすい金属で付けるんでしょ? それじゃ強度が低いのよ!

 同じ素材同士の接合、これを連続して出来れば創作の巾が一気に広がるんだから」

「そんなもんかねぇ~デモいちいち杖燃やしてたんじゃ・・・」

「そこよねぇ~」

流石に少し考え込むオリビア

「そうだ!水晶なら大丈夫じゃない!トベラの木より魔力通しやすいし」

「勘弁してよお嬢、水晶なんかで杖作れないよ」

「だから、先端だけ!トベラの杖の先にカチッとはめ込むみたいな感じで」

「え~それだって大変だよ」

「お願いマットォ~」

とびきりの美少女に、お願いポーズで迫られれば、とても断れません。

「もう・・・お嬢にはかなわないなぁ~」

マットが引き受けたと思うと、シメタ!っとたたみかけるオリビア

「水晶の先端はペンみたいに細くしてね♪多分そうすれば魔力が集中すると思うから、それと熱が伝わらないように水晶の部分はなるべく長くしてね」

「それ砥石で削らなくちゃいけないじゃないか」

「おねがいね♪」

「へいへい、やってみるよ、ジョン兄さんにも手伝わせようかな」

「ジョンにいは?」

「お嬢に頼まれたあれ作ってる」

「上手く行きそう?」

「骨組みは出来たよ、後はお嬢が言ってた丈夫な布を貼ってコーティングと最終塗装かな」

「やったぁ~!夏までには絶対に間に合うね」

「まあギリギリかな」

「そんなに掛かるぅ~?」

「面白そうだから、俺たちの分も一緒に作ってる、大丈夫!制作費はちゃんと4枚分請求するから」

「どういう大丈夫よ。まあ良いわ、みんなにも試してもらいたいし」


そんな話をしていると、作業場の戸が乱暴に開いて、若い男が勢いよく入ってきました。

「お~い、お嬢、マット、ゼンゼン大丈夫じゃないぞ、オーウェン殿下がいらっしゃったぞ」

息を切らして作業場に入ってきたのは、長男のジョンです。

「えぇ~・・・」

「ぇぇえええ!!!」

露骨にいやそうな顔をするオリビア

そして、盛大に驚くマットでした

ジョン・マット・リロイ

どこかで聞いたことのある名前です

当然作っている物は!

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