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異世界転生?・・・してませんよ!  作者: 美都崎 里美
第5章3学期そして2年生
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第2話 ベアリング

新学期が始まり、オリビア達は2年生になりました。

Aクラスからプリシラ、エミリー、エマの3人がSクラスに編入してきたため

元々女子生徒の方が多かったSクラス

さらに3人も増えたので、なんと女子9人となりました。

男子は半分以下の4人というかなり男女比に差があるクラスになってしまったのです。

男性の方が魔力が多少高い傾向にあるので

例年は男子の方が1人多いか同人数、ここまで偏ったのは初めてだそうですが、

そもそも、Aクラスから3人も編入したのも、平民出身のSクラスも、全てが初めてだららけ

その中心に居ると思われているオリビア自身も規格外!

入学時の魔力も、1年学年末魔力と魔力制御測定も、学園始まって以来の高得点!

そもそも、1年女子にして飛行具レース2年の部優勝者だったり、普通の所を探す方が大変です。

もう誰も驚かなくなってきています。


そして今日も自習室に集まるいつものメンバー

2年になったので、もう引率は必要ありません

それでも、1年の時の引率メンバーも全員一緒です。

教職課程のアメリアもいるのですが、全員分からないところはオリビアに聞きます。

他のメンバーの兄弟も、ごく自然とそう言う流れになっていました。

そして当のオリビアはと言うと、一人机の片隅で大きめの紙に何かを書き込んでいます。

「う~ん、大まかにはこんな感じかな、デモ肝心要の動力源がはっきりしないから」

一人ブツブツとつぶやきながら考え込むオリビア

完全に周囲から浮いていますが、いつも通りのこと、今更誰も気にしません。

タダ、何となく全員オリビアが今ナニを考えているのかは気になるようです。

それもそのはず、このところのオリビアの発明品は、実用的な物よりも、娯楽性に富んだ物が多く

(又ナニか面白いアイテムを考えているのでは?)

っと、どうしても期待してしまいます。

オリビアの前世の趣味をこの世界に反映した物ですが

サーフボードもスノーボードも

結果は水上の移動手段、雪上の移動手段として、じわじわと注目されてきています。


そんないつもの自主室に珍しい人物が入ってきました。

「ヤア、オリビア」

「ワイアット兄さん」

やってきたのは、レイエス家の長男ワイアットです。

「兄さんこっちに来たの?・・・あ!そうか」

一瞬疑問を持った物の、思い当たるところがあるオリビアです。

「そうなんだ、明日から3日間、魔道具の特別講師をするんですね」

そうです、ワイアットはここ魔法学園で、非常勤の講師を務めています。

レイエス家の長兄として、領地経営等々

忙しいワイアットですが、魔道具に関してはこの国で・・・イエイエ、この世界でトップクラスの第一人者

魔道具による国の発展は、今最も注目されていることです。

一番詳しい者に講師を頼むことになるのは、至極当然のことでした。


「それで、持っているのは授業に使う魔道具のサンプルかしら?兄さん」

何となく少しとげのある言い方をするアメリア

家族に気がつかれないように猛勉強の末、教職課程に就いているアメリアからすると

好きな魔道具の研究をしていただけで、臨時講師に収まっている兄が、少しばかり面白くないようです。


ワイアットは1シック□(30cm□)くらいの木箱を大事そうに持っていました。

「違うよアメリア、出来たんだ、オリビアから頼まれた物」

「え!それって!!」

勢いよく立ち上がるオリビア

オリビアの机の前に、そっと持ってきた木の箱を置くワイアット

下の留め金を外すと

「開けてみて」

期待を込めてオリビアにそう言います。

オリビアにしては珍しく、かなり緊張した様子で箱を持ち上げます。

木の箱は、下の部分が台座になっているようで、上がすっぽりとヌケル構造になっていました。

木の台に乗っていたのは、直径が2/3シック(約20cm)くらいの円筒形の物、その先にはギアが付いています。

日本の感覚でモジュール2の10丁くらいのピニオンが円筒側

木の台に取り付けられた軸受けらしき物にはφ20くらいのシャフトが刺さっています。

そして、シャフトの先端には、ピニオンの10倍くらい有りそうなギアが付いていました。

旧世界の感覚でギアの直径はφ200くらいです。

ピニオンギアの方は色からすると、材質は砲金のようです。


「凄いわ、兄さん」

「この中も見てごらん」

そう言うと、半円のカバーを取り外します。

中には、同じように円筒の回転子が軸に取り付けてありました。

「さわってみても良い?」

「ああ、大丈夫だ、もちろんそっとね」

「分かっているわ」

そう言うと円筒形の部分を回すオリビア

ある程度簡単に動きますが、少しガタがあるようにも思えます。

何となくあまり精度が出ていないようにも見えました。

円筒形の部分は、一体物ではなく、2分割の円弧が合わさっているような構造です。

「レイの動かしやすい素材を曲げて、この形にした、上に来た板を前に進めるイメージで動かすと、くるっと回って下の板が上に、それを又前に・・・そうすることで軸が回転する」

「どのくらいの早さで回すことがデキルの?軸受けは砲金(青銅)をを使っているみたいだけど?」

「ああ、構成している材料は砲金だよ、でもこの部分も完成したんだ!オリビアが言っていた軸受け」

「そうなの!」

そう言うと、食い入るように装置を見つめるオリビア


ジェットサーフ、スノーボード、水上や雪上の移動手段を、半ば偶然発明したオリビア。

なんとかして普通の道路での移動手段が作れない、ずっと考えていたのです。

摩擦の少ない、水面や雪面であれば、魔力で物を動かせば、比較的簡単に移動させることが出来ます。

所が普通の道路であれば、摩擦を減らすために車輪を使うしか有りません。

この世界の平民の移動手段は一般的には馬車、急ぐ時は馬に直接乗っていきます。


車輪の軸受けには、一般的に砲金が使われています。

昔は鉄に油を差していましたが、真鍮や砲金が使われるようになってから、かなり手間が掛からなくなってきました。

道その物は貴族が協力することで、舗装こそされていませんが、非常に綺麗にならされています。

それでも、平民が使える魔方陣を介した魔力でそれなりのスピードが出るようにと考えると、ベアリングは必須です。

通常の移動手段として、今は自動二輪のような物を考えていますが、最初はスノーボードに大きめの車輪を付けた、スケボーを作ろうとしました。

軸受けには砲金を使ってみましたが、魔方陣を使った平民の推進力では、ジョギング程度のスピードしか出すことが出来ませんでした。

ジョンソン商会では、コレでも十分と言う意見も合ったのですが、飛行具に準ずる性能の移動手段を目指しているオリビアには、納得することが出来ませんでした。



当然オリビアも最初は一般的な(旧世界では)ボールベアリングを作ろうとしました。

ラフ絵を描いてジョンソン商会に相談してみると

「コンナ小さな鉄球を高精度で作るのは無理!」

一目見て断られてしまいました

それから色々と考えを変えて、それならばニードルベアリングなら?

焼きの入った均一の細い針金を、グリスで固めたインナーに納め、どうにかベアリングのような物を作ることに成功しました

思ったような性能を得ることは出来ましたが、リティーナー無しのニードルベアリング

荷重には耐える物の、速い回転には不向きです。

摩擦も砲金よりは良いかな?

長持ちはしそうだな

その程度

それなのに、値段は数十倍か100倍以上になってしまします。


サラに考え込んでいるうちに

「そうよ!この世界には魔力があるじゃない」

軸を完全に浮かすことがデキルかも?

そうすればモット速い回転、モーターかオートバイのエンジン並みの高回転でも耐えられるはず!

これもダイタイの構想を考えると、兄ワイアットに相談

春休みの間に、オリビアが魔道モーターと名付けた装置は、

ある程度のたたき台は出来たのですが、完成には至りませんでした

それを兄ワイアットは、学校が始まってから2週間程度で、ほとんど形にしてきたようです。


「コレ軸受けと回転で別々に魔力を流す感じかしら、どういうイメージなの?」

魔法を確実に使うには、兎に角正確なイメージが求められます。

ココ魔法学園で学ぶ魔法も、如何に正確なイメージが出来るようになるか

その練習が大半を占めるのです。

オリビアが高い魔力と、桁外れの魔力制御が可能なのは、魔法の原理

魔素からのエネルギー変換、エネルギー保存の法則などを元々知っていたからでした。


「もちろんオリビアなら軸を浮かしながら回転させることもできると思う、でもそれじゃあ使い勝手が悪いだろ、だからココにこのカバーを付けて」

そう言いながら、さっき外したカバーを元に戻します。

「このカバーに回転するイメージで魔力を流してみて、ゆっくりとね」

「分かったわ」

そう言うと、カバーに手をかざし、静かに魔力を流すオリビア

魔力を流した瞬間から、かなりの早さで軸が回り始めました。


夢中になって周りが見えていない二人ですが

いつものメンバーは総立ちで、新しい装置が動くところ悔いるように見つめています


次第に回転を上げるオリビア

シーンとした自習室に、魔道モーターの風切り音と、ギアの音だけが響きます

いつのまにか、自習室で魔法の練習をしていた生徒全員、サラに担当の教師までもが、テスト装置の周りに集まってきています。

かなりのスピードでモーターを回転させていると、一つの疑問が浮かびます

「コレどうやって止めるの?魔力流すの止めたら壊れない?」

「大丈夫、そのまま止めるとあまり良くないけど、回転を落として、止めるイメージで魔力を流して」

「分かった」

そう答えると、ワイアットに言われたとおり、魔力を調整して、回転を落とし完全に回転を停止させました。

「ホントだ綺麗に止まった」

「大丈夫だろ」

そう言うとワイアットはモーター側の軸受けの脇のネジを外します

軸受けは半割になっていて、簡単に取り外しができるようになっていました。

取り外した軸受けの内側をオリビアに見せるワイアット

「どうだい!この綺麗な内側」

「ホントだ!あの回転数で回っていたのにキズ一つ無いわ!」

感動するオリビア

(凄い!コレって本当にほぼ摩擦0の究極ベアリングだわ!)


「オリビア、兄さん、コレくるくる回して何が楽しいの?」

ココで、興奮しているオリビア達に、水を差したのは、やはり次男のノアでした。


全員が面白がって新しい装置を見学していましたが、本当を言うと、ダレもが何のための装置なのか?

そしてこの装置の必要性

そう言うことは全く分からなかったのです。

それでも、魔道具の第一人者のワイアット、そして天才と言われているオリビアの興奮した様子を見て

(あまりよけいなことを聞かない方が良いな、かなり大事な発明のテスト現場みたいだから)

全員が半ば暗黙の了解で、静かにしていたのです。

そこに堂々と全員の疑問を代表して聞いてくれたノア

しかしその勇気あるノアはというと、いつもの3倍増しくらいの冷たい目でオリビアから見られ

あまり感情をあらわにしないワイアットからも、あきれ顔で見つめられていました


「ななな、ナニ?オリビアも兄さんも」

「はぁぁぁ~ほんとにノア兄は」

もの凄い深いため息をつくオリビア

その様子を見て、

(自分たちも聞きたかったけど聞かなくて良かった)

(ノア様有り難う)

考え無しに思ったことを言ってくれたノアに、少しだけ感謝していたのです。


「イイ!高速に安定して回転する動力があれば、色々なことに応用出来るの!まずは雪のないこの時期の移動手段が作れるはずよ」

「雪が無いって事は寒くないんだから、普通に飛行具に乗れば良いじゃ無いか」

脳天気な答えをするノアにあきれ果てるオリビア

「それって、お菓子を食べれば良いじゃ無いって言ってるような物よ!」

言ってからチョット仕舞ったという顔をするオリビアですが

ノアはもちろん、周りのギャラリーもオリビアの勢いにたじろいていたのと

流石にノアの発言が非常識だったので、オリビアの台詞は何となくスルーされました。

「飛行具に乗れるのは貴族だけ、しかも貴族の中でも魔力の強い半分チョットくらい、その代わりと言ったら馬車しか無いのよ、領地から学園まで、馬車で来ると何日もかかるじゃない!兄さんだって知ってるでしょ!!」


「あのー・・・バーンズ家では飛行具乗れるの私だけなんです、だから海上を素早く移動デキルサーフボードはすぐに発注したんですよ」

オリビアの言うことがもっともだと声を上げるプリシラ

「うちなんか飛行具どころか、魔法が使えるの私だけですから、便利な移動手段には興味があります」

平民出身のエマも声を上げます。

「王都内だけなら、スケボーも案外使えるかもしれないけど、ブレーキと速度制御がねぇ~」

又一人考え込むオリビアですが

「それでオリビア、この回転装置、オリビアが言ってた名前だと魔道モーター、1人乗りの乗り物に組み込むって言っていたよね」

「ええ、ちょうど今その構想を描いていたんだけど、魔道モーターがデキルかどうか分からなかったから、チョットやる気が下がっていたのよねぇ~・・・でも!コレで俄然やる気が出たわ!」


「レイエス君・・・ああそうか、ワイアットレイエス君」

声を掛けてきたのは、今日の自習室担当の先生です。

「あ、ろくに挨拶もしないで申し訳ありませんでした、お久し振りですブルックス先生」

「それは良いんだけど、そろそろ自習室閉める時間なんだ。まあ誰も自習してないけどね」

自分も興味津々で見ていたので、あまり強くは言わないようですが、終了時間は知らせなければイケマセン。

「もうそんな時間、せっかくやる気が出てきたのに」


「オリビア、後は部屋に帰ってからやれば良いと思ったでしょ!」

オリビアの様子を見て、さっと声を掛けてきたのはシャーロットです

「え・・・えぇ~と、少しだけね」

「そう言って又徹夜するんじゃない?」

「そんなコト、考えてもいないわよ」

そう言ったオリビアですが、完全に目が泳いでいます。

「オリビア、前にも言ったけど、きちんと睡眠を取らないと、美容にも健康にも悪いのよ!」

シャーロットの忠告に、以前にもやらかしたことを思い出したアメリア

「今日は寝るまで私がオリビアの部屋に居ます!」

見張り役を買って出ました

「それなら僕も一緒に作業したいな」

「「「男子禁制です!!」」」

オリビアの考えに興味津々のワイアットですが、アメリア、シャーロット、アリアの3方向からダメ出しをされてしまいました。

「そ・・・そうだよね、オリビア、又明日出来たところまで見せてもらうよ」


「ワイアット君、明日から3日間講義があるだろ、そっちの準備は出来ているのかな」

臨時講師としての動向に、いささか不安を感じた教師が声を掛けます

「あ、まあ、ダイタイは」

歯切れの悪い返事をするワイアット

「この魔道具のことで頭がいっぱいみたいですね。無理もないとは思いますが。学園の仕事をきちんと終わらせてから、新発明に取り組んで下さいね」

それぞれ釘を刺された発明好きのオリビアとワイアット

その様子を見ていた幼なじみズは

(オリビアって容姿はミラおばさま似だけど、中身は少しずつお兄さん達に似てるんだ。魔法教えている時は、アメリア姉様にも似てるわね、良いとこ取りって感じだけど)

前世の知識によるオリビアの優秀さよりも、何となく兄弟の良いところを併せ持っているような印象を受ける、クラスメイト達でした。



1月も後数日になりましたが

あけましておめでとうございます。

読んでくださっている方、今年もよろしくお願いいたします。

色々ありまして、なかなか新しい話が書けませんでした

もう少しテンポ良く進めていきたいな

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