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異世界転生?・・・してませんよ!  作者: 美都崎 里美
第4章 2学期は学園祭があります
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第7話 とりあえずスノーボードを

雪景色の校庭のアチコチに、真冬用のフライトジャケットを着た魔法学園の生徒が集まっています。

真冬用と言っても、それほど厚手には見えません。

ある程度の保温性のある、そして魔力で温めやすい素材が使われているので、着ぶくれすることも無く、雪の中を飛行しても身体を温めてくれる優れものです。

以前は自分の魔力で温めていたので、飛行との併用は非常に困難、もちろんSクラスの高学年であれば、魔法の併用もこなせます。

しかし低学園の生徒や魔力の少ないモノは、モット厚手の物を着込んで温めてからスタート、冷えてきたら止まってもう一度加熱、コレを繰り返してイマした。

レイエス家で魔方陣が発明されてからは、恒に一定の温度で温められるようになったので、真冬でも普通に長距離を飛べるようになったのです。

加熱素材はジャケットだけでは無く、ボトムはもちろんグローブにもヒーターが付いています。


その中で夏用の薄手のグローブを付けているグループがいます。

もちろんオリビアといつものメンバーです。


「ヤッパリコレ良いわぁ~、真冬用のグローブってチョットゴワゴワするから、手が疲れるのよね」

そう言って飛行具のハンドルカバーに手を入れているのはアリアです。

「ほんとですね、昨日も雪が降るの中試して見たんですけど、加熱グローブより暖かい感じですし、ハンドルの掴みごごちが全然違いますよ。でも、あの、コレ私ももらっちゃって良いんですか?

チョット遠慮気味なのはプリシラです

「もちろん良いわよ、マダ試作品だから、感想聞かせて。グリップヒーターとハンドルカバーはもちろん、コノ風よけ板もね」

ハンドルにはグリップヒーターとハンドルカバーの他に、高さ5ミュー幅1.3シックくらいの板(15cm×40cmくらい)が斜めに取り付けられています。

ほんのわずかに気流を上に逃がし、雪が直接顔に当たらないようにする物です。


「風よけ板も良いですよ、少し前屈みにならないと、逆にもろに風受けちゃいますけど、何もないのとは全然違いますよ」

「飛んだ感じは?私は少し前が重くなって気がするのよね」

オリビアが飛行具の風よけ板を指ではじきながらそう言うと

「あ!私も少しそれ感じた、ある程度スピード出すと、前が下がり気味になるよね、デモ気になるほどじゃないと思うわ」

シャーロットももう試して見たようでした。


新しいハンドルを付けているのは、夏にも一緒に帰省したメンバー4人と

「オリビア!」

飛行具を持ってこちらに来るのは

アメリアとノア、そしてアリアの兄オリバーです

「コノハンドル凄く良いわね」

「姉さんも試して見たの?」

「昨日少しだけね、ハンドル握るのがゼンゼン楽、暖かいし」


「オリビア、なんで僕の分は無いのかな?」

「兄さんのハンドル、形状が違うし、ダイタイ風防が付いているんだから、普通の飛行具よりも最初から快適じゃない!それに急いで作ってもらったから6本しか用意出来なかったのよ」

「そうなんだ、あれ?6本、もうひとつは?」

「あのぉ~私です」

少し離れたところにいた、エマが声を掛けてきました。

「Sクラスの皆さんの分も無いのに、私がもらっちゃって良いんですか?」

少しすまなそうな様子のエマ

「問題無いわ、コレマダ試作品でみんなに感想を聞かなくちゃいけないの、それで帰ったらすぐに意見を聞ける一緒に帰るメンバーと、王都を飛び回って離着陸を繰り返すエマに使って欲しい、って事になったのよ」

「そう言うことなら、でも使い心地、すぐには連絡出来ませんよ」

「ああゼンゼンかまわないわ、冬休みの間も家の手伝いをするんでしょ?」

「ええ、この季節ですから、配達して欲しいって言う希望が多くて、冬休みの間はかなり忙しいと思うんです。」

「大変ねぇ~」

「まあそうなんですけど、夏休みの経験があるので、魔力を伸ばす良い練習になると思うんです。冬ならではの魔法も使いながら飛ぶことになるから、もしかしたらサラに良い練習になるかも、ナンテ思っているんですよ」

「凄いねぇ~エマは、コレは2年ではSクラスじゃない!」

そう言うプリシラに

「ええ!私なんか、プリシラの方がSクラスになる可能性高いですよ」

「私から見たら2人とも十分可能性は有ると思う、プリシラなら、ミラおばさま以来の男爵家からのSクラス入り、エマの場合は学園始まって以来の元平民のSクラスになる」

いつも通り冷静に分析をするシャーロット

「そうなったら良いな♪ヨシみんな出発しようよ、雪が降り始める前にある程度飛びたいし」

何となく話をまとめるオリビアでした。


夏はお昼に途中休憩を入れただけでしたが

やはり冬場、地中で三回の休憩を入れて夕方頃にレイエス家に到着したオリビア達

今回は、アリアもプリシラも、最後の休憩場所から、真っ直ぐに自分の領地に帰っていきました。


「ただいま」

「お帰りなさいませお嬢様、ノア様」

最初に出迎えたのは、やはり執事長のマシューでした

「ただいまマシュー、母さん達は?」

「奥様は旦那様と除雪作業に行かれませいた。」

(貴族の普通の仕事と分かっては居るけど、公爵夫妻が除雪作業って、なんか凄いよね)

もちろんそんなコトを考えたのは地球での記憶があるオリビアだけ

この世界では魔力のある貴族が、平民では出来ないこと、時間の掛かりすぎることを引き受けるのがごく普通のことです。

「ワイアット兄さんは?」

「相変わらず作業部屋にこもってらっしゃいます」


「そんなコト無いぞ!オリビアお帰り!」

マシューに部屋にこもっていると言われたからか、オリビア達が帰ってきたからか

ワイアットがバタバタと奥から出てきました。

両脇に一枚ずつ、板状の物を抱えています


「兄さんそれどうしたの?」

「今朝の定時連絡の時に、オリビアに頼まれた物が出来たって言うから、持ってきてもらった」

そう言うと、抱えていた2枚のボードを床に立て、上の部分に手を添えてオリビアによく見えるようにします。

「凄い、完全にスノーボードだわ」

2枚のボードは見た目ほぼ同じ物、オリビアの身長よりも少し短いくらいの長さで、

幅は1シック(30cm)程度、サイドカーブもきちんと注文通りに出来ています。

「よく見せて兄さん」

「アアもちろん」

近くで見ると、ほぼ同じ形状のボードですが

一枚にはバインディングの部分に、複雑な模様が描かれています

「コッチは魔方陣が付いているのね」

「夏に作ったサーフボードの雪上版って聞いていたからね、ほとんど同じ魔方陣を設置した」


魔方陣の付いていない方のボードを受け取ると

もう一度、隅から隅まで調べるオリビア

「キャンパーもきちんと出来てる、エッジも注文通りね、あ!コレちゃんとしなるわ」

「それが一番難しかった、いろんな材質で試したけど、しなる材質だと、夏のサーフボードみたいに魔力で動きやすい物が出来なくてね、かなり色々試したんだ」

ここぞとばかりに自慢げに説明するワイアットです。

「そうなんだ、バインディングはタダ靴を縛るだけね、デモこれでいいわ、角度調整も付いてるし・・・結局材質はどうしたの?」

「何種類かを槽にしたんだ、樹脂も色々試したんだよ、作業場に試した経過の物があるよ」

「それは後で見せてもらう、じゃあ早速コレ試して見よう!」

「「「オリビア(お嬢様)!」」」

全員が一斉に声を上げました

「帰ってきたばっかりなのよ、それにもう日が暮れるわ」

「そうですお嬢様、まずは屋敷の中に、それからお着替えを、ワイアット様も1度そちらの物は仕舞われてください。」


「どっちみち飛行具用の服とブーツで乗るから都合が良かったんだけど・・・」

小さな声でブツブツとつぶやくオリビアですが

流石にこの状況で無理矢理試したいと言うわけにも行かず、素直に屋敷に入っていきました。


「明日みんなで試して見れば良いよ、夕方の連絡でジョンソン商会に声を掛けておく」

ボード2枚を両脇に抱え直すと、オリビアと一緒に歩き出すワイアット

「そう言えば、ココとジョンソン商会って通信出来るようにしたの?」

夏に光による通信の提案をしたオリビア、スノボも気になりますが、光による通信も気になる所です。

「そうなんだ、風吹の時はダメだけど、少しくらいの雪ならなんとか見えるよ、今のところココとジョンソン、養殖場に櫓を建てた。それで朝昼と夕方、決められた時間に連絡を取るようにしているんだよ」

「へ~、ヤッパリ便利?」

「ああもの凄く役に立ってる。モット繋がるところを増やしたいよ」


「お二人ともお話しはその辺で、お嬢様、先にお着替えを、メアリ」

「ハイ!」

「お嬢様をお部屋までお連れして」

少しだけ不満そうな顔をしたオリビアですが、流石に素直に従うのでした。



そして翌朝

屋敷の玄関の前でスノボを抱えるオリビア

昨日帰ってきた時と同じ、飛行用のフライトスーツ、手袋だけは完全に厚手の防寒用の物を付けて言います。

又ナニか面白そうなことをしていると、レイエス家の兄弟が後に続きます。

昨日の夜、両親もかなり興味がある様子でしたが、雪の降るこの時期、朝早くからの除雪圧雪が求められます。

それでも、昨日の積雪から、学生であるアメリアやノアには声が掛かりませんでした。

屋敷の庭も完全に雪景色、人の歩くところは綺麗に除雪されていますが、それ以外の場所は圧雪されていました。

公爵家の庭です、日本の下手な公園よりも遥かに広いスペースがあります。

バインディングの向きは昨日の内に調整してあります。

最初なので、前を20度程度、後ろを5度程度合わせておきました。


「じゃあ見ててよ」

そう言うと雪の上にしゃがみ込み、雪の上に置いたスノボのバインにブーツを装着し始めるオリビア。

「オリビア直に雪の上に座るのは」

その様子を見かねて声を掛けるワイアット

「スノボはこうやって装着する物なの」

「でも椅子くらい用意してもらっても良いんじゃ無い?」

姉のアメリアも、雪の上に直に座るのは、大いに抵抗があるようです。

「今は玄関先だけど、本当はココで使うんじゃ無いんだもの。椅子なんて用意出来ないわ・・・ヨシ!装着完了」


そう言うと、スノーボードの上に立ち上がるオリビア

「斜面じゃ無いから、魔法で動かしてみるわ。ワイアット兄さん、コレどのくらい動かしやすいの?」

「サーフボードよりも少し落ちるくらいかな?それでも、かなり簡単に動くはずだよ。試験片を作って何回も試したからね」

「分かったわ」

そう言うと、ゆっくりと魔法でボードを動かすオリビア

かなりスムーズにボードが滑り出します。

「凄い、動かしやすいわ、滑走面も完璧ね!」

玄関から門の辺りまで進むと、魔法で向きを変え又ゆっくりと戻ってきます。

そして次は少しスピードを上げると、門の近くで普通にエッジを効かせてヒールターンをしましたが、エッジが完全には食いつかず、ガガガっと横滑り、そのまま尻餅をついてしまいました。

「ダイジョブかいオリビア」

慌ててノアが助けに行きます。

「大丈夫よ、平地でいきなりカービングしようとしたのがまずかったわね」

一旦膝立ちになり、自分で立ち上がると、もう一度滑り出しました。

「スキーなら自信があるんだけどなぁ~」

っと、滑りながらこっそりとつぶやきます。


実はオリビア・・・っと、言うよりも善吉は、あまりスノボは得意ではありません。

スキーはかなり自信のある善吉でしたが、スノボが流行りだした頃はもう40越え

物珍しさと、サーフィンをやっていたこともあり、ゲレンデに居る時間の半分くらいはスノボを練習していましたが、

やはりスキーのように自在に滑ることが出来ませんでした。

ある程度の斜面を普通に滑ることはデキルのですが、不整地の急斜面はとても無理

さらに、グラトリやカービングが主流になってくると、年齢的に非常にキツイ動きになって来ます。

当然そこまでの激しい動きが出来るはずもなく

スキー場では、スキーで景色と爽快感を楽しむコトが一番の楽しみになっていました。


(そうは言っても、ビンディング問題が解決しなければスキーは無理よね)

もう一度、門の所から玄関方向に滑り出します。

今度はあまり無理をせず、少しテールを滑らせるようにして曲がってみました

(コレならば大丈夫ね)

サラにスピードを上げると、左右にスラローム、もう少しエッジを効かせて鋭くターンをしてみます。

(なんとかなりそう!)

再びスピードを上げ、玄関前で急ブレーキを掛けて止まります。


「こんな感じかな」

「姉さんカッコイイ!僕もやりたい!」

弟のリアムが真っ先に名乗り出ました。

最初からそのつもりだったのか、動きやすい魔道具の防寒着とブーツも履いています。

手袋もしっかりと付けていました。

「良いわよ、ワイアット兄さん、そっちの魔方陣が付いている方のボード貸して」

「分かった、平民が動かすよりもスピードが出ると思うから気を付けて」


魔力はあっても、学校に通う前のリアムは魔法を使うことが出来ません。

せいぜい、水を温める程度です。

それでも魔方陣付きの魔道具であれば、普通に使うことが出来ます。

当然、平民が使うよりもスピードが出ます。

リアムも夏にボディボードを何回かやっています、サーフィンにも数回挑戦しました。

やはりジョンソン商会の、リロイやエヴァに比べると、スピードが出しやすいようでした。

それでも、それほど大きな違いは無いので、スノボも普通に乗ることが出来るはずです。


「コレをブーツに縛れば良いの?」

「先にこの流れ止めを付けてね、サーフィンと同じよ、それでバインディングでブーツを縛って」

リアムも言われるままに雪上に座り込んでスノボを装着します。

「出来たよ、コレで立ち上がれば、ヨット」

初めて両足を縛られている感覚に、タダ立っただけでも少しぐらつくリアム

「じゃあ最初は支えて上げるから真っ直ぐね」

「分かった」

オリビアは器用に魔法でボードを操って、リアムの後ろに着きました。

(斜面じゃ無いから木の葉は出来ないし、支えるのも後ろからしか出来ないのよねぇ~)

スイッチもグーフィースタンスも出来ないので、同じ方向に進むしか有りません。


「最初は私が動かして上げる、だんだんと自分でもボードを動かして」

「大丈夫、いつでもイイヨ」

リアムの腰を両手で掴み、ゆっくりと動き出します

「わぁ~滑った」

そのまま門まで滑ると、魔法で2人のボードを動かし、もう一度玄関まで戻ってきます。

「今度はあまり私が動かさないようにするから、自分で動かしてみて」

「やってみる」

さっき同じ体制で、リアムの両脇に手を差し込んでいる物の、ほとんど力を入れず一緒に滑りだそうとしましたが

「わわ!」

リアムのボードがいきなりスピードが出て、2人絡まって転んでしまいました。


「チョット大丈夫?」

心配げにのぞき込むアメリア

「大丈夫か怪我は?」

慌てて助け起こすノアとワイアットです。

「ごめん姉さん」

「平気平気、モットゆっくりと動かすイメージでね」

起き上がって雪をはらう2人

「水の上と違うから、いきなり動かすとバランス崩すわよ」

「分かった」

「ホラ、最初は僕が支えて上げるから、手を出して」

そう言うと、リアムの正面に立ったノアが、両手をリアムの手に合わせます。

「ゆっくりな」

後ろからオリビア、前にはノアのサンドイッチで、今度はゆっくりと滑り出すリアム

「こんな感じだね?」

「そうそう、兄さんもう手を離しても良いわよ」

オリビアが後ろに着き、少しずつスピードを上げて行きます。

「良いわよ、そこで止まって、魔力でUターンして」

魔方陣の着いているスノボは、基本自在に動かすことが出来ます。

その場でゆっくりと180度向きを変えるリアム。

今度はゆっくりとスタートさせてみんなの所に戻ってきました。


「今度はちゃんと滑ってこられた。デモ姉さんみたいに格好良く曲がれないな」

少しばかり不満そうなリアムですが

「始めたばかりで何言ってるの」

オリビアに、ぴしゃりと決めつけられてしまいます!

「そうだけど、姉さんだって今日初めて乗ったんじゃ無いの?」

「私はサーフィンもリアムより上手いし、飛行具レースも優勝したのよ。このくらい出来るわよ」

かなり苦しい言い訳をしますが、ワイアット以外は、何となくそんな物かな?

そう思ってしまうのでした。




レイエス家の庭園でスノボの練習をしていると、門の外にそりを引く馬の姿が見えました。

「おはよう御座います」

来たのは予想通りジョンソン兄弟です。

「早速試してるんですね」


「ああ、おはよう、なかなか面白い物だね、それで追加のボード、持ってきてくれたかい?」

「ワイアット様、おはよう御座います、とりあえず後5枚出来たんで持ってきました。」

そう言うとソリの荷台から、3人でボードを降ろします。

「それすぐに使えるのか?」

「あ!ノア様、おはよう御座います、ええ魔方陣が付いていないんで試していませんけど、今お嬢が乗っているのと同じ性能ですよ」

「ヨシ!僕も試して見る、着替えてくるよ」

そう言うといそいそと屋敷の中に入っていきました。

読んでくださった方

本当にありがとう御座います

プラスチックがないのでスキー靴を作るのは難しそうです

とりあえずタダソフトブーツを縛るだけのスノボならと思いました

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