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異世界転生?・・・してませんよ!  作者: 美都崎 里美
第4章 2学期は学園祭があります
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第4話 飛行具レースはスーパークロスか!

学園祭3日目

最終日の今日、学園内はかなり混み合っています。

この日はいつもの入場券の他に、飛行具レースだけを見に来る入場券が発行されます。

値段は大銅貨5枚の50セン、日本円で500円程度です。

入場料を取ると言うよりも、入場者数を制限するために発行されるような物です。

食事券が付いていないので、多少の割高感はありますが、

わずか銅貨5枚で迫力のあるレースが見られるのです

こちらの入場券も、前売りの段階で全て完売してしまいます。


飛行券が売られるのは学園期間中、レースが始まる1時間前で絞めきりです。

コレも以前は、前日までとしていたのですが、当日飲み屋が居ることが発覚

ギリギリまで、学園側で売ることにしたのです。

売られるのは、学園内と、正門前の臨時販売所

こちらは、入場券が買えなかった人のためです。

入場券のような、委託販売はしていません。


レースは学年ごと、2年生がお昼前の10時スタート!

日本の時間だと11時くらいの感覚です。

その後お昼を挟んで、12時から3年、続いて4年のレースとなります。


もちろんコースも長く、難易度の高い4年のレースが一番人気、メインイベントですが

今年は違います!

7年ぶりの女子生徒の出場、サラにその女子生徒は学園始まって以来の特別枠の一年生

学園内だけでなく、学園祭に来ている平民にも大変気になる所です。

気になる所ではありますが、1年女子に掛ける人はほとんど居ないだろう。

当初はそう思われていましたが。

Sクラスの劇でオリビアを見た人、学園祭の校舎内で見かけた人。

当たらなくてもイイカラ記念に、あの娘に掛けて上げたい!

そんな風に、オリビアの単勝は、前評判よりも売れていました。

しかし、実際に勝つ、あるいは連に絡むと思う人は居なかったようで、連勝でもオリビアを買った人は本当に少数だったようです。

その少数のうちの一人、イエ2人がジョンソン兄弟でした。


「ジョン兄さん、連勝も買ったの」

「お嬢にあそこまで言われたからね、2年Sクラスから出ている人4人、全員に絡めて全部買った。マットも買ったんだろ」

「まあ一応ね、新聞に載ってた1番人気と2番人気の人と絡めて、100センずつ」

「僕はお嬢の単勝100センだけ、マット兄さんに買ってもらった。」

「ホントは頼まれたからって、12歳未満は買っちゃいけないんだけどな」

レース会場脇に設けられた観戦スペースの一角で、レース開始を待つのはジョンソン兄弟の3人です。

ジョンソン商会の工場と養殖場はレイエス領にありますが、メインの店舗は王都内にあります。

3人は学園祭の前日から、王都店に泊まり込んでいました。


「ジョン兄、父さんにも頼まれたんだろ」

「一番人気のリック・ジョンソン様って人の単勝、同じジョンソンだから買っておきたいって、大銀貨1枚、一応お嬢の単勝も小銀貨1枚だけね」

「連復は?」

「ヤッパリそのジョンソン様とワード様で大銀貨5枚買ってこいって」

「親父張り込んだなぁ~」

「単勝は人気が2分するけど、連複はコレが確実だって、5ウル買っても、払い戻しが6~7ウルじゃないかってさ」

「万が一は丸損だろ、掛ける意味アルのかな?」

「普通に考えたら間違いないから、1~2割でも儲かれば万々歳だって」

「マットはどう思う?」

「何の勝算もなくお嬢が出るとは思えないし、ノア様が許可したって事は、連に絡む可能性はかなり高いと思う」


「兄ちゃん達、女子選手に掛けるのか」

突然隣に座っていたおっさんが声を掛けてきました。

「ええ、まあ半分記念に」

少しだけ恥ずかしそうに答えるジョンです。

「俺も買ったんだよ、一年生の女子に掛けるなんざ正気じゃないと思ってたんだけどな、昨日チャンピョンが店に出てる喫茶店があるって言うんで、行ってみたのよ、そしたらその妹が来てな、その娘がレースに出る娘だって話してたワケよ。あまりに綺麗な娘だったんで、気がついたら飛行券買ってたよ。」


お嬢は見かけ妖精だからねぇ~

アレ見たら記念に買おうって人居るよな


「でもな、何か勝利の女神みたいな気がしてな、買っておけば当たらなくてもイイコトがありそうな気がしたんだ」


「あ~あ~、チェックチェック」

急に大きな音が会場に響きます。


どうやら拡声の魔道具のチェックを始めたようです。

スタート地点のそば、校舎の3階からコースが見渡せる場所に設けられた特設の放送席。

拡声の魔道具を試しているのは、アメリアの同級生、教職課程のジャック・クルス君です。

「これはいいなぁ~・・・あっミューラー先生今日は宜しくお願いします」

「君は教職課程なんだから、拡声の魔法なんか普通に使えるだろう」

「もちろん使えますよ。デモ実況に集中すると、魔法が切れちゃう時があるんです、去年やらかしましたからね、コレならこの魔方陣に手を触れていれば、自然と声を増幅してくれます。先生用のはこちらです、2台寄付していただきましたから」

「レイエス家だよな」

「エエもちろん・・・ヨシ準備出来ました。」

「しかし、クルスはおとなしそうなのに、こういうこと好きだよな」

「飛行具は普通に飛べる程度ですから、出場するよりこっちの方が遙かに楽しいですね。4年の時からずっと実況担当させてもらってます」


そんな話をしていると、入場門に選手が集まってきました。

飛行具を持つ女子生徒も一緒です。


「さあ今年も始まりました、飛行具レース、まずは2年の部、

出場するのは、Sクラス4人、Aクラス5人、Bクラス2人、そして特別枠の1年女子オリビア・レイエスさん

合計12人で争われます。」

「実況は私、ジャック・クルス、解説にレイエスさんを推薦した、1年Sクラス担任のマテオ・ミューラー先生に来てもらいました」

「ハイこんにちは、なんか恥ずかしいな、去年は君1人だったじゃないか」

「そうですけど、本校始まって以来の推薦枠、しかも女生徒を推薦した先生の意見も聞きたいじゃないですか」

「まあそう言うことならな」

「それで、どうなんですか?上級生と渡り合う力があるんですか?」

「俺は有ると思ったから推薦した。そうしたら案の定、体重の軽い女性が戦う方法を思いついたみたいだ」

「僕も見ましたよ、イン側でくるっと回る曲がり方、確かに他の飛行具と接触しませんからね」

「急制動も急加速も体重の軽い女生徒の特権だ、それを生かせば良いセン行くかもしれない」

「過去女生徒が出場したのは2人だけ、2人とも最下位だったようですね。1人でも抜くことが出来れば新記録です。

さあ選手が入ってきました。

スタート地点はくじ引きですが、レイエスさんには特別に一番外か内を選ばせたようです」

「真ん中が一番有利だからね、その代わり一番危険だ、流石に女生徒を混戦の1コーナーに突っ込ませるわけにはイカナイからね」


「さあ先生に解説しもらている内に、時間になったようです、選手と飛行具を持ったサポーターの女子生徒がそれぞれの位置へと向かいます」

「レイエスのサポーターは、ラッセルか」


大観衆注目する中、出場する選手がスタートラインに並びます。

服装はいつもの練習用の革の上下、そして飛行帽をしっかりと装着しています。

次に飛行具を持ったサポーターが、飛行具のスタートラインに並んでいきます。

こちらはいつもの制服姿です。

オリビアとシャーロットももちろん初めてですが、2年生も当然初めての飛行具レース

選手もサポーターも緊張が隠せません。

2年の各クラスの担任が、細かく選手の様子を見ながら、スタート位置を指示しています。


「全員ゴーグルを装着して、準備が出来たようです。生徒会のメンバーから、今回はオーウェン殿下がスタートの合図をするようです。」

「殿下は2年のSクラスで唯一出場してない生徒だからな」

「王族は危険と見なされる飛行具レースに出場する1年女子レイエスさん、どんな活躍が見られるのか?今高々とスタートフラッグが上げられました。全員の様子を見てぇ~旗が振られました!」


「「うおぉぉ~~」」

会場中がどよめきます。


一斉に走り出す出場者

「一斉にスタートしました。先頭は何とBクラスから出場した、ジョニー・オマラ君だ、両脇から強烈に迫るのは、一番人気の2人!リック・ジョンソン君とジェフ・ワード君。注目のレイエスさんは最下位スタートです」


いくら運動が得意でも2年男子の走力には、とても勝てません。

オリビアがシャーロットから飛行具を受け取ったのは、一番最後でした。


「オマラは足が速いんだな」

感心するミュラー先生

「先頭集団6人ほとんど差が無い状態で1コーナーに突っ込んだ、オット!オマラ君、外にはじかれてしまいました。1コーナーを制したのは、やはりジョンソン君だ、その後全く差が無い状態でワード君デビット・ベイリー君、サラにAクラスのボブ・ハンナくんと続きます。」

「先頭を追いかけている内に、なんとレイエスさん、素晴らしい加速で2人抜き、そのまま1コーナーの最内を刺します」

先頭グループよりも少し速度差があるため、混戦にはならず、縦一列でコーナリングに入る第2集団

理想のラインの遥か内側に入り、オフロード車のように極端なリーンアウトでコーナーを曲がるオリビア


「おお!コレがレイエスさんのコーナリング、最内からサラに2人を抜いて、出口の加速で並んだかぁ~」

方やコーナーを最低限の減速で回ってきた機体、オリビアは急制動しています。

それでもコーナリング距離が短く、加速の良いオリビア、しかもラインの取りあいをする2年生を尻目に一気に加速します


「ココでレイエスさんサラに2台抜き!快進撃です!!」

「さて先頭はスラロームセクションから、高低差セクションにさしかかります。一気に校舎3階までの距離を上り、落下するような勢いで下のバーをクリアー、先頭は変わらずジョンソン君、そして全く後れを取ることなくワード君が続きます。そのまま高低差スラロームから最終コーナーに、1週目をセイしたのはジョンソン君だ!」


「注目のレイエスさんが今逆落としセクションに、まずは真っ直ぐ急上昇、あ!あれ?レイエスさん飛行具をねじって上昇していきます」

何とオリビアは、飛行具を横回転させながら駆け上がり、走り高跳びの背面跳びの要領でくるっとバーをクリアーします。

「コレは凄い、背面飛行から急降下横回転きりもみ状態、そこから下のバーをくぐった、凄い早さです!」

サラに上下スラロームから最終コーナー、ココでも又1人抜きました」

「さて先頭は再び1コーナ順位は変わっていません。あっと1コーナーでベイリー君わずかにバランスを崩した。その隙を突いて3位に出たのは。Aクラスのハンナ君」

「ハンナはSクラスの生徒とアソコまで渡り合えるのか、立派な物だな」

ミューラー先生も思わず声が出てしまいます。


「ジョンソン君逆落としから、上下スラローム、最終コーナーへ、あっと!上下スラロームで少しバランスを崩したかぁ~ラインが少し外側に膨らんだ、そこをすかさずワード君が刺します。立ち上がり加速で、ワード君が押さえたぁ~トップが入れ替わりました。」




「レースは中盤にさしかかりました。先頭はワード君、その後ろにピッタリと付けるジョンソン君、Aクラスのハンナ君が少し遅れて第3位、その後をベイリー君と続きます」

「ジョンソンはピタリと後ろに付けてるね、空気抵抗をなくして魔力を温存しているようだね、コレは狙ってるよ」

だんだんと自然に解説をするミューラー先生です。


「レースは7週目に入りました、トップの順位は変わりませんが、ああ!ココで何と4位のベイリー君にレイエスさんが追いついた、逆落としセクションの背面飛行でサラに差を詰めるレイエスさん、上下スラロームの出口でほぼ真後ろに付いた、そこから最終コーナーベイリー君の内側をくるっと回って、立ち上がりを征したのはぁ~レイエスさんだ!!」

「ベイリーはレイエスに後ろに突かれて焦ったな、それにしてもこれだけ急制動と急加速を繰り返して居るのに、スピードが落ちないね、レイエスの魔力量は2年以上かもしれないな。それにあのコーナリング、急制動からコーナーポストを軸にくるっと回っての急加速、かなり繊細な魔力制御、それとバランス感覚が必要なはずだな」

授業中の様子から魔力の多さと、魔力制御には注目していた担任のミューラー先生、本当に桁が違うのではと、半ば確信を持ったようです。


「先頭2機が最終コーナーを回り、少し遅れてハンナ君が最終コーナーに、なんとぉ~!ココでレイエスさんが追いついたぁ~!高速でコーナーを曲がるハンナ君の内側を指すレイエスさん、立ち上がり勝負を征したのは、ハンナ君だ、高速のコーナリングから、サラに素晴らしい加速でレイエスさんを前に出させません」

「今のハンナのコーナリングはイイネ、かなりスピードを殺さずに曲がってフル加速、終盤でこの力が出せるのはSクラスでもほとんど居ないね」

「そうなんですね、ほとんど差が無い状態で1コーナが迫ります。あ?アレ?ハンナ君大きくアウトに膨らんでしまった、魔力切れかぁ~?」

「がら空きのインを指すレイエスさん、膨らんでしまったハンナ君、あ!立て直して高速でコーナリング、レイエスさんのラインと重なるぞ!」

「そうかその手があったか、加速するな!減速しろレイエス!」

叫ぶミューラー先生、会場もどよめきます。

「ハンナ君肩から当たりに行った!レイエスさん万事休すか!」

オリビアの死角から迫る高速の機体、しかし、そのコトが分かっていたかのように、くるりと背面飛行をするオリビア、その上空をハンナ君の飛行具がかすめます。


「おお!コレは凄い、レイエスさん、飛行具を軸に背面飛行で避けました。ハンナ君勢い余ってかなりコースから外れてしまいました。レイエスさん機体を捻るように通常飛行でフル加速、3位に躍り出ました!」

「そして得意のスラロームから逆落とし上下スラロームと、トップとの差を詰めます」

「先頭は変わらずワード君そしてすぐ後ろにジョンソン君、最終コーナーに入って、あ!周回遅れの選手のよけ方が少し少なかったか?ワード君上下でかわしたがぁ~、あっと!少しスピードが落ちてしまいました。そこをすかさずジョンソン君が少し内側からかわしてフル加速、一位が入れ替わりました。先頭ジョンソン君、2位がワード君、そしてトップ2人のもたつきで、レイエスさんが一気に詰めてきました」


会場中は大盛り上がり

そして一番盛り上がってるのは

「いけぇ~お嬢!このまま優勝だぁ~」

「とりあえず2位に入ってくれ!どっちが一番でも連複いただきだぁ~」

会場の大歓声で、ほとんど声は聞こえませんが

もの凄く自分の欲望に忠実な声援を送っているのが、ジョンソン兄弟です。

「イケイケ!いっそのこと優勝しちゃえ!」

レース前にジョンソン兄弟に話しかけていたおっさんも、大盛り上がりです!


「先頭3機が最終コーナーに入ったぁ~2位のワード君トップジョンソン君の背後にピッタリくっつきます。レイエスさんは1人だけ急減速をしてインを刺す。そしてここ一番のフル加速、ワード君はジョンソン君の影から出てこちらも急加速、3機ほぼ横並び、最終のゴールへの直線に入ったぁ~!ここは少しだけ長めの直線ですです。ジョンソン君ワード君が横並び、レイエスさんが半機遅れています。あぁぁ~~コレは凄い!!」


直線に入ると、オリビアは、なんと飛行具の足かけから足を離し、サドルに腹ばいになり、スーパーマンが空を飛ぶような姿勢を取ります。

日本でも大昔、バイクにカウリングがなかった頃

当時の暴走族、カミナリ族と言われていた若者が、最高速を出すためにやっていた曲乗り

水平乗りとか、フライング、と言われた乗り方です

カウリングがあれば、カウルの中に身体を隠す方が遙かに早いのですが、身体が全部空気にさらされている普通の飛行具

大昔のオートバイでも、この乗り方が一番空気抵抗をなくせるはずと言われていました。

それでもこの乗り方は、かなり危険を伴います。

オリビアが最後の接戦になった時と、取っておいた隠し球だったのです。


3人とも最後の魔力を振り絞っての飛行、体重の軽さと空気抵抗の差で、オリビアがじわじわと前に出ます!


「凄いぞレイエスさん、ジョジョに前に出ています!!そしてぇ~今ゴールイン!!1着は1年女子、オリビア・レイエスさんだぁ~~」

「「「うおぉぉ~~」」」

会場から声とも思えないような叫び声が響きます。


「レイエスさんゴールから今ゆっくりとスタート地点に帰ってきました」

スタートにはサポーターの女子が待っています。

「オリビアァ~」

大声で手を振るシャーロット

「シャーロット!コレ!受け取って!!」


「今優勝したレイエスさんがゴール地点に着きました、ゆっくりと着陸・・・あ?あれ?着陸しません、飛行帽とゴーグルを脱ぎ捨てると、サーポーターの女子生徒に投げました、そのままコースをゆっくりと回り始めます」


銀髪をなびかせ、たまに立ちノリになりながら、観客に手を振るオリビア

その美しさに、すっからかんに擦ってしまったお客も、大損を忘れて大盛り上がり!


「全く!優勝したらウイニングランは常識でしょう」

1人そう言いながら手を振るオリビア


王都全域に、もの凄い数のオリビアファンを増やしてしまいました。

1年の部の一番の見せ場まで書きました

このレースのために、2年生の名前はほとんどが往年のスーパークロスチャンピョンの名前にしてしまいました

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