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3話




前世の私は5年前になくなった。


魔王に魂を売った女、卑しい売国奴、悪魔など歴史書には散々酷いことが書かれていた。


魔王が復活し、また世界は平和とは程遠いものになっていき、魔物も活発化している。

世界は飢饉や略奪、戦争で溢れかえり今でも争いは続いている。

そして件の勇者はというと、ローグ王国王女と結婚し、着実に王国の実権を握ろうとしていた。


「……世界も滅んじゃうかもね」


裏では魔王と手を組んでいるのだ。

2度と会うことはないけれど、もし会うことがあれば…


(ふふっ、勇者の炒め物の完成ね)


まぁ本当にもう会わないだろうけれど。


というのも、私が暮らしているここは魔王領からもっとも離れた地なのだ。

豊かではないがそれなりの生活を送れるし領民たちも魔物に怯えずに暮らせている。

特段不自由はなく、作物や家畜も育ついい環境なのだ。


見方を変えれば安全すぎるここは人にも狙われやすいでしょうけれど、王都から軍が来るとしても山を3つほど越えなければここへは辿り着けない。


秘境も秘境、それがここ【アルマーク】という街なのだ。


体が万全になりさえすれば結界も張れるし、私の聖域には誰も近づけないわ。

だからまずはこの呪いを浄化しないとね。


魔臓銃は生きる上で必要な魔素が取り込めなくなる病気。

これはもういい。穴を塞ぐだけの簡単な治療だから。

聖女にとっては朝飯前。

だから…ここまで体が動かないなんてことはありえない。


もう私の体に異常は見られない。だからあるとすればそれは…遠隔操作の呪い。

誰かが弱ったルナリアに…呪いを足したのだ。

こんなにも愛らしいこの子に。


やはり世の中は……人という生き物は腐っている。

なぜ呪いをかけているのかはわからない。

もしかしたらこの子が何かをしでかしたのかもしれない。

しかし、どんな理由があるにせよ、死へと誘う行為は……


「許されるものじゃない」


部屋がしーんと静まり返り、急に喋り出した私にアリスは眉をひそめた。


「どうか…されましたか?」


「ううん、大丈夫」


この呪いを解くのは簡単だけれど、今はまだしない。

2年も牢に繋がれていたから少しは休まないとね。


「一生ベッドで生活してたい」


「ダメに決まってるじゃないですか」


「あっ、ちょっとお股の間がかゆぃ…」


「ぉほっ……ごほんっ!かいてさしあげますね」


「んー!そこ!いい!」


「はぁはぁハァ…ッ!ここですか?もうちょっと上ですか?は…花園…」


「?」


何かアリスの息が荒い気がするが頭も動かせないこの体では確認のしようもなく、ただアリスの手の感触を感じるだけだった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「私は究極美少女12歳!世界一かわいい子爵令嬢!ルナリア!」


毎日がとても充実した生活を送っているわ。

父様と母様はとても甘やかしてくださるし、1日中背中には柔らかい感触。

死の危険なんてさらさらないこんな素敵な場所でお紅茶とお菓子を貪り…


「アリス?ちょっとカーテン閉めて?眩しすぎる…!」


それにこうして私の手足のように動いてくださるメイドまでいる!


「この自堕落な生活を放棄なんて絶対にしないわ!」


「………」


アリスは生気のない瞳で私を見つめ、次にカーテンを勢いよく開いた。


「うぎゃああああ!目があああああ!?」


眩しいのに目を覆うことすらできない屈辱を感じているとアリスが影を作ってくれた。


「ぁ…アリ…うぎゃああっぁぁぁ!」



私は日々、アリスに飴と鞭をもらっている。

最近、彼女に遠慮というものがなくなってきたのはなぜか。


「はぁ…今日はお嬢様の婚約者であるユーフィリア様がいらっしゃるのですから、パパッと支度を済ませますよ」


そう。

今日はお客人が隣領からやってくるのだ。

両親が決めたルナリアの婚約者。

家の爵位は伯爵と言っていたから数段上のお貴族様だ。


まぁそんなことはどうでも良く、早く帰れとしか思っていないルナリアは支度と聞いて眉を顰めた。


「支度って?」


体をまともに動かせないのに何をするというのだろう。


「…殿方がいらっしゃるのにパジャマでお出迎えする令嬢がいると思いますか?」


「ここにいらっしゃいますが?」


「…それに少しはお化粧もしませんと…」


「え?こんなに可愛いのにもっと可愛くしたらユー……ゴリラ惚れちゃわない?」


ごめん。思い出せなかった。


「…私だってお嬢様の婚約には反対ですよ。どうしてユーゴリラにお嬢様を渡さなければいけないのですか。当主は貴族社会の強いコネをお持ちになりたいようですが…納得いきません。ですが……今日はお会いするだけです。それなら身なりぐらいは整えましょう。あくまで令嬢としての最低限はしませんと…」


たしかにアリスの言っていることはもっともだ。

会うだけなら少しぐらいおめかししないとね。

でも…12歳でお化粧って…


(私初めてお化粧したの16なんですけど?)


「マセガキだ…」


ゴリラが帰ったらちゃんとお化粧拭き取ってもらわないと!

この素晴らしい肌にダメージが…!


「はいはい、黙ってお化粧塗り塗りしましょうねクソガキ」


「…むぐぅぅぅ」


誰がクソガキだ。

くそおおおおおお





読んでいただいてありがとうございます!

☆☆☆☆☆→★★★★★

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