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2話

 



 私が転生してから数日が経過した。


 この体の持ち主であるルナリアは10歳で魔臓銃(マゾウガン)を患い、死去した……いや。


 私という人格が12歳で生まれた。



 ルナリア・スターリア


 それが今世での私。


 床に伏せるようになってからずっと看病をしてくれていたというメイドにこの数日、様々なことを聞いた。

 おかげで私の知識は広がったが両親やメイドは質問をする度にひどく悲しんでいた。



(最初の質問間違えちゃったかな)


 今更後悔しても遅いが、両親に名前を聞くのはかなりダメージが大きかったようだ。


 エスタ・スターリア子爵とサラ・スターリア子爵夫人

 それとメイドのアリス


 この家はお貴族様だった。

 まだ部屋から…というか病弱すぎる体を動かすことができないけれど、動けるようになれば屋敷を見て回ろうと思う。


 今は、なぜか存在する聖女としての魔力を柔軟に使い、体の回復を早めるのみ。


(脳筋聖女と言われた私の魔力ならすぐに回復できるわ)


 そしたら、私は…コンコン


 不意にノック音が聞こえ、次にアリスが姿を現した。

 一旦思考をやめ、彼女を横目で見る。



 綺麗な金色の髪に大きな青い瞳、ふっくらした唇に整った顔立ち。


 王族の愛人でもおかしくないぐらいの容姿をしたアリス。


「お嬢様?横目で睨んでどうされたのですか?不細工ですよ?」


 そして平然と飛び出すこの毒舌。


 私は子爵家の長女にして跡取りのルナリア・スターリア。


(あなたの主人でもあるんだけど?ていうか私不細工なの?)


 まだ自らの容姿を見ていないルナリアは少し不安に駆られた。


 女性にとって顔と体は武器だ。

 戦闘力の次に大事と言っていい。


「あら?いつもなら頬をぷっくり膨らませて可愛らしい反応をするのですが…やはり記憶はないのですね…」


 悲しんでいる彼女を見て、少し罪悪感が生まれたルナリアはアリスの言う通りに少し頬を膨らませて睨んだ。


「ぷっ、変なお顔」


「殴るよ……ぁ」


 思わず素が出てしまったけれど、彼女は驚きはせず微笑んだ。


 元のルナリアはそれはもう天使のような可愛らしさだったそうで、言葉遣いや動きがおっとりとした明るい女の子だったそう。

 できればそれの通りに行動をしたいと思っていたルナリアだが数日でボロが出てしまった。


「いいんですよ、どんなルナリア様でも大切なお嬢様に変わりはありませんから。話しやすい口調で話してください」


「…わかった」


 私は元聖女だけれど、生まれは村人だったわけだし、礼儀作法は一応できるけど堅っくるしくて嫌いだった。

 普通に接していいなら、もちろんそうする。


「ふふっ、何かご入用はありますか?」


「歴史や大陸がわかる本が読みたい。あと紅茶と菓子を持ってきて。それと全身のマッサージをしてほしいかな?早く回復するためにほぐしてもらいたいの。それと美少女か確認するために鏡を持ってきてもらえる?」


 遠慮という言葉も彼方へと葬ったルナリアはアリスに捲し立てた。


 変わってしまった……変わり果てたお嬢様にアリスはこめかみをピクピクと痙攣させ、しばらく呆然と立ち尽くした。


(ふふっ、今度こそ幸せになってやるんだから!)



 せっかくいただいた体だ。

 この子のためにも、私のためにも、今世は楽しく、自由に生きる。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ふふふっ」


 ルナリアはここ数週間ずっとご機嫌だった。

 それにはさまざまな理由が存在するけれど、一番大きな要因は自らの顔だった。


「あっ、ちょっと!手鏡キープしてよ!」


「お嬢様、私の腕は限界でございます…!」


「限界って思ってからが勝負だよ?」


 聖女の魔力ならすぐに回復すると思っていた体だけど未だ回復せず…


 その原因は魔臓銃だけではないことも判明しているけど大した問題ではなかった。


 問題はこっち。


「あぁ!?もうちょっと右!鏡を震わせないでちゃんと握りなさい!私の世界一可愛い顔をもっと映して!」


 四六時中見ていたいと思うほど私は美少女だった。

 アリスの顔が可愛い、綺麗などと褒めていたけれど私の顔こそ至高でした。


(まじちょー可愛いんですけど!?私の積んだ徳、天元突破しちゃってるんですけど!女神様ぁ〜!大好きちゅっちゅ!)


 可愛すぎて1日中見ていられる。

 前世と同じように綺麗な金色の髪、瞳はブルーからアメジストに変わっているが宝石のように輝いたそれは吸い込まれそうになるほど綺麗だった。


 それに12歳のもっちもちの肌。

 肌荒れを知らないこの子には一生経験させてあげないんだから!



「ふふふっ、ふへへへ……」


 鏡に映る自身の顔を見て自然と笑みが溢れる。


「かわきしょ」


「おいこら」


 アリスは私に軽蔑した目を向け、鏡を寝台の上にある机にくくりつけた。

 最初からそうすれば良かったと思うが、これだけ元気にはしゃぐのは2年ぶりなのだ。

 まだ病気は残っているし、一時でもおふざけができるのなら…この大切な時間を無駄にはしたくなかった。

 腕がプルプルするほど持っていたのは単に、お嬢様との思い出を増やしたかったからなのだ。


「ふへぇへ…」


 うっとりした顔は今まで見せたことはないけれどこれはこれでぐぅかわすぎて…あっ鼻血が…。


 アリスの心情など全く知らないルナリアは鏡を凝視しながらこれから先のことを考える。
















読んでいただいてありがとうございます!

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