ある日の話
「この配線を見てください!美しいでしょう?これは・・・・・・」
壇上で熱心に語るその女性を見て僕は思った。
うーん、間違いなくこの人騙されてるよなぁ。
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今まで信じていたものが噓っぱちであることを諭され、恨み言を呟きながら、抜け殻のようになっていた女性の姿を見て僕は思わず声をかけた。
「貴女にとって旦那さんってどんな人ですか?」
「え?」
突然の見当違いの質問に、女性は戸惑いの声を上げながらもこう答えた。
「えっと、いつも私のことを気に掛けてくれて、話しているとき、その場がパッと明るくなるようなそんな人です。」
戸惑いながらもこう答えてくれた女性に、僕は笑みを深めながら続けてこう聞いた。
「じゃあ、旦那さんのどんなところが好きですか?」
そんな質問に少し恥ずかしそうにしながらも、微笑ましいものを思い出すように女性はこう答えた。
「そうですね、さっきも言ったんですけど、いつも私のことを気に掛けてくれて、私がちょっと落ち込んでいるときは話を聞いてくれて、記念日なんかも忘れたことが無いんですよ?
誕生日のときなんか、私がちょっと今は手が届かないけど欲しいなぁ。
とこぼしていたネックレスをプレゼントしてくれたんです。
しかも何か月も自分のおこづかいを貯めて・・・、
そういう優しくて気が利いて、いつも私を見てくれる、私のことを考えていてくれる、そんなところが好きなんです。」
話しているうちにだんだん熱が入ったのか、女性はそう話してくれた。
「でも、なんで今そんな話、そんなことより」
「どうでもいい人のどうでもいい話より、大事な人の大事な話をしましょうよ。
あいつに復讐してやるとかより、旦那さんのどんなところが好きとか、どんなことをしてあげたらきっと旦那さんは喜ぶだろうか?とか、
そういう自分にとって大事な人の大事な話をしましょうよ。
私たちの人生は、残念ながら、無限ではなく、有限なのですから。」
そう言うと、女性は目が覚めたようにこう言った。
「ありがとうございます。私、あの人に謝らないといけないことがあって、すみません、もう行きますね!」
女性はそう言って、足早に駆けていった。




