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始まり

 下っ端冒険者の少年、アルマはクエスト中に討伐対象とは別の魔物に追われ森の中を駆けていた。


 運が悪かったのか? 準備を怠ったからか? 

 どうしてこうなった!? どうして!?

 

 肺に必死に空気を送りながらアルマは思考を巡らせた。

 足がもつれる。視界が霞む。

 駄目だ足を止めれば確実に死ぬ!

 走れ! 走れ! 走れ! 死ぬ気で走れ!


 道等無い森の中を走り、背後に迫る足音に怯えながらアルマは隠れられそうな場所を探す。


 しかし、そう都合良くはいかないのが現実だ。

 アルマが駆け抜けた森の先に現れたのは断崖絶壁、下には激流の川。

 対岸まではアルマの能力では跳び移る事が出来ない程の距離。

 落ちれば死ぬかもしれない。


 跳ぶか!? どうする!?


 悩んでいると森から獲物を追う魔物の雄叫びと足音がアルマの脳を揺らす。


 そしてそれは一直線にアルマへと向かってきた。

 それは戦車程もある大型の猪型の魔物だった。

 

 もしかしたら、ギリギリまで引き付けて横に跳べばコイツだけ崖に落とせるかも知れない。


「グォオオオオオオオ!」


「クッソがあ!」


 アルマは作戦を実行。

 震える足に力を込めて、突撃してきた大猪を避けるために渾身の横っ跳びをしてみせた。


 結果は……成功。


 アルマまさに崖っぷちを生き残ったのだ。

 

 そう思えた。


 人生何が起こるかわからないものだ。アルマの立つ地面に亀裂が入った。

 巨大な猪が身を捩り、踏ん張って崖から落ちまいと抵抗したせいで崖の一角が崩れたのだ。


「おい! おいおい! 冗談だろ!」


 アルマは猪ごと真っ逆さまに激流へと落下。

 茶色く濁った水の中へと消えていった。


 この時だった。

 アルマは走馬灯ではなく、別の世界の記憶を思い出していた。

 前世の地球という惑星に暮らしていた頃の記憶だ。

 

 そうか、俺は……死ぬ前に思い出すなんて、クソ。

 

 どれくらい経ったのか。

 アルマは激しく咳き込むと目を覚ました。

 どうやら運良く生き延びたみたいだ。


「ゲッホゴホ……っはあ、はあ。生き……てる? 生き残ったか。

 ぐあ、いってえ!! うおぉ! 腕どっち向いてんだコレ!」


 体を起こして立ち上がろうとしたアルマに奔った激しい痛み。

 見てみるまでもない。

 左腕が曲がらない方向に曲がっていた。

 

「アイテムポーチは、だめか、流されてる。

 っち、仕方ないか」


 左腕を抑えて立ち上がり辺りを見渡すアルマだが、洞窟にいるのは分かるが、入口付近は上から川の激流

で塞がれている状態。

 滝の途中にあった横穴に運良く放り込まれたらしいというのが現状から理解出来た。


「こっちからは出られない、奥に進むか?

 装備もなしに? っはあ、自殺行為だろ」


 手元にあるのは腰に備えていたナイフだけ。

 しかし、待っているだけではただ時間を浪費して救助を待たずに死ぬ。


 救助。日本にいたならあり得たかも知れない。

 魔法ありきの異世界とは言えクエスト中に行方不明になった下っ端冒険者を誰が探すと言うのか。


「奥に、進んでみるか」


 せめて飲水くらいは確保できるかも知れない。

 そう思い、アルマは意を決してナイフを抜いて洞窟の奥へと進んだ。

 

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