一突き
魔王様を裏切るのか、この私が!
それとも、女勇者を……いや、読者を裏切るのか――!
隣で大きな口を開けてイビキまでかいて眠っている魔王様……。今なら口にジャガイモでも詰め込むだけで倒せるのではないだろうか。
皮付きジャガイモ一個で倒せる魔王様……チョロすぎる。
「ムニャムニャ。まだ食べられるぞよ」
「黙れ」
ドキッとしてしまう。せめて寝言を言うなら、「もうお腹一杯」とか言え。魔王様なのだから、お腹一杯じゃないと恥ずかしいじゃないか。
「ムニャムニャ。ねえ、はやくう」
「黙りなさい!」
おやめなさい。「く」の後の「う」はいらんやろ。どっちだ、どっちの夢を見ているのだ!
「グヌヌヌヌ……おのれ……」
心臓の鼓動が早まり、ぜんぜん寝られない。
爆睡している二人が信じられない。なぜこの環境で眠れてしまうのだ――!
いったい私の怒りの矛先は、どこを向いているのか――。
いや、悩むほどでもないか――。
立ち上がると、白金の剣を鞘から抜いた。
「そもそも、こんな簡単に手下にやられるようであれば、魔王様も所詮はその程度」
魔族の頂点に相応しくなかっただけのことです。裏切られても致し方ありません。
つまり、これは裏切りではなく、自然の摂理なのです。
「えい」
プスッ。
「いやん! 痛い! 暴力反対!」
白金の剣の先でチクリとお尻を突いてみただけだ。いやんとか言うな――。
もちろん魔王様の尻だぞ――!
「プー、クスクス」
女勇者の寝袋の中から吹き出して笑う声が聞こえる……。まんまと二人にはめられたのだ……。
「やれやれ、せっかくデュラハンにチャンスを与えてやったのに」
魔王様がお尻をさすりながらむくりと起き上がった。
――いったいなんのチャンスだ! 白金の剣を鞘へと収める。恥ずかしくて頬っぺたが赤くなりそうだ。
「なんか最初からおかしいとは思っていたのです。……どうせ二人で私を騙すように仕組んでいたのでしょう」
私がアンケートを取るため玉座の間を離れた隙に、こっそり打ち合わせでもしたのでしょう。
「へへ、バレたか」
舌をペロっと出すでない。可愛くても駄目だ。
「へへ、バレたぞよ」
舌をペロっと出すでない。可愛くもない。舌も汚い。
ランプに火をつけてまた寝袋姿で話を続けた。
「デュラハンよ、裏切り者を許せぬような小さな心では、いつになっても魔王にはなれぬぞよ」
「……」
どうせ魔王様がいる限りは、いつまでたっても魔王にはなれませんよ。と言いかけたが負け惜しみみたいに聞こえるから言わない。
「え、魔王様は裏切り者ですら許せるの」
「予は寛大ぞよ。っていうか、仕事をサボっているのは正々堂々裏切り」
――正々堂々裏切り――!
「プッ!」
「おならみたいに吹き出して笑うな! それならば、魔王様こそ一番のサボりではございませぬか!」
いっつも玉座に座って余計なことを企ててばかり――。
「予はデュラハンと違ってサボってなどおらぬ! 女勇者の前で言いふらすでない! このバカチンが!」
「……」
白金の剣で真っ二つにしておけば良かったと後悔してしまうぞ……。マジで。
「無限の魔力の前では、どのような力も無に等しい。予を裏切るなど、予にとっては想定内。たかが掌の上のできごとぞよ」
「魔王様すごい」
女勇者が感心しているのが面白くない。この感情は、嫉妬ではない、絶対に。
「魔王様が凄いというより、無限の魔力がチート過ぎるだけですよ」
もし私にもその「無限の魔力」があれば、寛大にもなれるでしょうさ。フンッ。
「∞頭身って……プププ」
「どこで聞いていたんですか、ソレ!」
恥ずかしいぞ! 腹立たしいぞ! ぜんぜん褒め言葉じゃないぞ~! 全知全能……ではなくとも、魔王様にはそれに近い能力があるとでもいうのか――。
それって、プライバシーの侵害だぞ……。シクシク。
さらには、魔王様と女勇者に何度もシッペをされた。金属製鎧がミミズ腫れになるほど……。これは暴力だ。シクシク。
朝食を女勇者の部屋でご馳走になり、朝方、魔王城玉座の間へと帰宅した。あー。自室に戻って昼まで寝たい。夜は私一人だけが殆ど寝られなかったのだ。
玉座の前で跪いているとウトウトしそうになる。
跪いて魔王様の話し相手をしていると……本当に仕事をサボっているようで身震いするぞ。
「デュラハンよ。魔族は大勢いる。その中に信頼できないモンスターがいるとしよう」
「はい」
きっとたくさんいます。今回の一件で、私もその中の一人になりそうですとは言わない。
「だがその根底を見誤ってはならぬ。相手が自分を信用していないのではなく、自分が信頼されるような言動を行っていないことが招いた事実だからだ」
「自分が――ですか」
……スライムが魔王様を裏切ったと怒る前に、自分はそのスライムに何をしてあげたかを考えなくてはならないのか……。
一緒に鬼ごっこをしてやったとか、隠れんぼしてやったとか……か?
「裏切りをすべて、『裏切った者のせい』で済ませてきた結果ぞよ」
「裏切り者のせいではなく、裏切らせた者のせい……」
「さよう」
他人事ではなく、自分のしてきたことが招いた結果なのか。だから、魔王様は裏切り者でも許すとおっしゃったのか……。
「ひょっとして、自分のせいにされたくないから……とか?」
魔王様らしいぞ。
「ちゃうわい! その気になれば無限の魔力でモンスター全員の行動規制も思いのままぞよ。でも、そんなことで魔王軍を統一したとしても、なにも得るものは無いのだ」
「……」
さすがは魔王様だ。さらには怖いぞ、その無限の魔力で行動規制――。
魔王様は立ち上がられると窓際へと歩かれた。窓の外は今日も大きなボタン雪がシンシンと音を立てて積もっている。
「この世における最大の裏切りは……」
「最大の裏切り?」
なんだろう。
魔王様を裏切るよりも大きな裏切りなどあるのだろうか。
「カ・ク・ヨ・ムぞよ」
――!
「おやめください。冷や汗が出ます」
なろう一途でございます――。
カ・ク・ヨ・ムに投稿する際には、なろうと書き替えるおつもりですか――。
最後まで読んでいただきありがとうございました!!
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