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賭け

 

「では予と賭けをしようではないか」


「はっ、賭けですか。かけそばやぶっかけうどんは好きなのですが……」

 天かすと生卵が乗っていれば最高だ。

 だが、あまり賭け事は好きではない。ハマると怖いタイプなのだ。キレると恐いタイプでもある。

 自慢ではないが、破産するまで抜け出せないタイプだと自負している――。

「それ、本当に自慢にならんぞよ」

「お褒め頂きありがとうございます」

「……」

 賭け事は嫌いなのだが、勝負というのなら話は別だ。

「勝負事なら負けません」

 魔王様が相手だからといって、絶対に手加減しません。

「絶対に!」

 二度言ってみた。絶対に手加減しない。

「……強調するでない」


 魔王様はゆっくり玉座から立ち上がられた。

 もう窓の外は真っ暗だ。これからどこかへ行くとかは言い出さないでほしい。残業になるし、第一、城の外は雪が積もって極寒なのだ。

「卿の好きな女勇者が、人間達のために手段すら選ばずに予を倒そうとするのであれば、それは正当な理由であり、真の勇者である」

「はい。我らの敵でございます。私はひと時も気を許したことなどございません」

 可愛い顔をしていますが、魔王様の討伐を第一の目標と考えているに決まっています。

「では、女勇者がその使命を果たそうと予に剣を向けてこれば、デュラハンの勝ちとしようではないか」

「はい。して、勝ったときの報酬は」

 賭け事なのだから勝てば何らかの報酬を頂きます。

「予に『シッペ』を一回だけさせてやろう」

 よっしゃー!

 心の隅っこでガッツポーズしたのは内緒だ。

「では逆に、予が隙だらけの無防備であるにもかかわらず、女勇者が予に剣を向けてこなければ、それは人々の期待を裏切る勇者、つまりは裏切り者となろう」

「はい。裏切り者でございます」

 敵でも味方でも裏切り者は許すべきではございません。

「では、その時は予の勝ちとし、卿が裏切り者を許さないというのであれば……」


「女勇者を――その場で切れ」


 ――玉座の間に冷たい風が流れ、沈黙が続いた――。


「しかし、無駄です」

 魔王様に意見する。

「え? え? 無駄ってなに?」

「魔王様、急にシリアスな展開を期待させようとしても無駄ですよ」

 長年に渡り培われたコメディー展開はそう簡単には覆らないのです。女勇者が魔王様に剣を向けたくらいで切り付けたりなんかしたら……。

 二人共、人気が地の底に落ちる――。さらに、女勇者の出てこない男二人のやりとりなんか……誰も見向きもせず、PVも地を這う――。


「チッ」

 ――まさかの舌打ち!

「せっかく読者を大どんでん返しで裏切ろうと思ったのに」

「おやめください」

 読者とかって口にするのはマジでやめてください――。さらには、そこを裏切ろうとしないでください……てえ?

「大どんでん返しって、ガチで裏切りじゃないか――!」

 裏切りが重宝されているぞ――!

 どんでん返しの無い物語など、見向きもされないぞ――!

 でも、伏線の回収は裏切りじゃないぞ――!

「冒頭でさらりと誤字を偽って、「やめてくれ」「ださい」は、酷いぞよ」

「お気付きいただき、ありがとうございます」

「……」



「本来であれば人間界の勇者がのほほんと予と仲良くしていてはならぬのだ。予は良くても人間達は女勇者が裏切っているとしか思わぬ」

「御意」

 こっち目線では良くても、あっち目線では良くない筈だ。

「人間共を裏切って我らと仲良くするか、人間共のために我らを裏切るか……今回の賭け、楽しみではないか」


 ニヤリと片方の頬を上げてほくそ笑んでいらっしゃる。

 やっぱり魔王様には悪い顔がよく似合っている。


読んでいただきありがとうございます!


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[一言] 「やめてくれ」~のくだり、気付きませんでした!
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