勇者の裏切り
「あと、イケメンの敵キャラも駄目です」
「それなー。ぞよ」
魔王様はご安心ください。とは言わない。
「ひと昔であれば、悪役は一目見て、『ぜったい悪役』な姿をしておりました。さらにはやることなすこと卑劣で悪いことばかりで、口調も悪い」
歯も汚い。口も臭い。ネギも詰まったまま。よく見たらニラ。
「声優も安い」
それはどうかと思いますが……。低くて太く渋い声。
「つまり、デュラハンの声優は安い」
「魔王様よりお高く御座います」
「失敬ぞよ!」
急に玉座から立ち上がらないで頂きたい。お口が過ぎました。
「冗談でございます。くだらいことでお怒りにならないでください」
魔王様はニワトリのように短気でいらっしゃる。
「……」
黙ったまま渋々座り直す。
「つまり、敵キャラは身も心も憎まれるキャラでなくてはならないのです」
「その点についてだけは、デュラハンは十分理解していると見える」
「……?」
魔王様のおっしゃる意味がよく分からない。理解できないぞ。
「では逆に聞くぞよ。我らにとっての敵とは、なんだ」
我らにとっての敵? それってわざわざ聞く必要などあるのだろうか。
「我ら魔族の敵は、人間共でございます。さらに言えば、魔王様の命を狙ってくる勇者でございます」
ここは剣と魔法の世界でございます。魔王城の耐震補強工事や水道管の更新工事は真の敵ではございません。
――真の敵ですが真の敵ではございません。
「では、女勇者も敵なのだな」
「はい」
勇者と名が付く以上、魔王様のお命やお地位を狙ってくる以上、疑いの余地はありません。
「敵キャラとしてはどうだ」
……。
「あれは駄目です」
――人気を持っていかれそうで駄目です――。
四天王よりも登場回数が多いので恐怖すら感じます。ある意味、最強の敵になっております。その証拠に、今回も私以外の四天王は……名前すら出てこない。
「男であれ女であれ勇者は我ら魔族の敵なのです。そのような輩が魔王様と仲良くするなど、言語道断です」
魔王様が蜂蜜たるゆえんでございます。魔王様は甘い――。
「デュラハンも好きなくせに」
「も」ってなんだ。やめてよ。嫉妬するじゃん。
「御冗談を」
私が好きなのは、「女子用鎧、胸小さめ」であり、中に入っている人間には興味などございません。
「このちっぱい好きめ」
魔王様が口をすぼめて「ちっぱい」とか言わないでほしいぞ。これって、玉座の間で語るような大事な話なのだろうか……。
「私めが好きなのは均衡のとれたバランスにございます。魔アニメのようなメロンや西瓜は、ただの流行りでございます。数年後には、『ありえない描写、ありえない流行り』と批評されることでしょう」
実写化されればその不自然さが更に際立つことでしょう。
「卿は何の話をしておるのだ」
……。はい?
「オッパイ? でしょ」
わざわざ言わせるな! 顔が真っ赤になるではないか――! 首から上はないのだが。
「卿の頭の中はそればっかりぞよ」
――!
「御冗談を。それに私には首から上がないのです」
頭の中はそればっかりでも、その頭が物理的に存在しないのです。
「なら、どこで考えているの」
「この辺です」
顔のある辺りを指で指し示す。
「……あっそ」
「グヌヌヌヌ」
興味が無いのなら聞かないでほしいぞ。両手で指を差しているのが恥ずかしくなるから。
「それよりも魔王様、もし、四天王が裏切っていたらどうします」
少しくらいは身の危機を感じているのだろうか、この人は。
「クックック。四天王ならばもう裏切っておるぞよ」
――! そんな不穏な動きは聞いた事がないぞ。
「予には全てお見通しなのだ。見くびるでないわい」
ひょっとして魔王様、何か隠していらっしゃるのか。辺りを見渡すが、広い玉座の間には私と魔王様以外の気配は感じられない。
久しぶりに緊迫した空気が流れる。四天王が裏切るというのであれば、それを私が阻止しなくてはならない。
「あいつら、仕事しとらん」
「……」
それって、たしかに裏切りといえば裏切り行為に値するのかも。
給料泥棒とはちょっと違うが……。
「たしかに。おっしゃる通りでございます」
四天王とは名ばかりの奴らが、自室で好き勝手なことばかりしているから――!
「お前もな」
「ミ――!」
気は確かか~――! と叫びそうになった。
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