裏切り者が増える原因
「そもそも、卿が一番予を裏切っておるではないか」
――!
それはないぞ――酷いぞ。魔王様にヤンデレメンヘラ首ったけなのに~! キー!
「……御冗談を」
冗談は顔だけして欲しいぞ。
「冗談は顔だけって……古いぞよ」
……。
「裏切り者が増える真の原因は、世の中に裏切りを肯定する媒体が多過ぎるのです」
アンケート用紙を古紙回収の段ボール箱にさりげなく片付けると、魔王様の玉座の前に跪いた。大理石の床はやっぱりキンキンに冷えてやがる。
「裏切りを肯定する媒体とな」
「はい。若者向けのアニメや物語。さらには、子供向け戦隊番組でさえ敵が敵を裏切ったりします。たとえ悪者であっても、悪者が悪者を裏切る姿を見て子供は成長するのでございます。そんな『裏切り要素』を子供に見せてはいけません」
お母さんやお父さんが厳しく規制するべきです。おじいちゃんやおばあちゃんにはできません。
「見られない子供はグレるぞよ」
一人だけ見てない子共がハミられて虐められる説か。今でもあるのか。
「であれば、戦隊ものはもっと大人になってから見るべきです」
「……大人になってハマっていると……微妙ぞよ」
険しい顔をなさる。
「大人なら玩具だって買い続けられます」
ガチャガチャとかもやりたい放題です。
大人買いできます。
「さらには、婚約破棄もそうです。あと、ザマア系とか」
裏切りの連続です。裏切りの裏切りは表とは違います。純情には戻れません。
「ほとんどやん」
ほぼほぼと言ってほしいぞ。
「さようでございます。現在において裏切りのない物語など皆無と言ってもよいでしょう。味方や敵を裏切るなど日常茶飯事。恋愛物でも裏切り者が必ず出てきて邪魔をします」
裏切る行為など、お茶の子さいさいなのです。いくらでも食べられる茶菓子のことです。
「その方が面白いならよいではないか」
「フッ」
面白いならよい……魔王様ならそうおっしゃると思いましたとも。
「物語ならそれでよいでしょう。ですが、現実にはどうでしょう。会社や組織などの裏切り行為はどんな結末を迎えるのでしょうか。家族にとって浮気や不倫はどのような結果をもたらすでしょうか。知らず知らずのうちに裏切り者に慣れ親しみ過ぎているのです」
――危機はもうすぐそこにまで近づいて来ているのです。
「話が急にリアルぞよ」
あり得る話だからこそ、リアリティーが増すので御座います。
「会社を裏切る社員がいるのなら、はたして物語のように面白いですか」
魔族も組織である以上、会社と同じなのですよ。
「裏切る社員は怖いぞよ~」
だったら、裏切るモンスターも怖がれ。と言いたい。
「『私は絶対にこの会社を辞めません』とか言いながら、裏では転職活動に必死な社員」
休憩時間にスマホで転職サイトばかり閲覧。さらには、会社のパソコンから資料請求――。
「怖いぞよ。いつ辞めるか予想できないぞよ」
手を口にくわえオロオロする。
「機密情報を持ち逃げする社員」
さらには遠く海外への逃亡。
「かー! 研究成果や特許が奪われるぞよ!」
……。せめて、「禁呪文の記された古文書」とか、「モンスター遺伝子掛け合わせ全巻」とかに言い換えられないのだろうか。
「個人情報をSNS上でバラまく社員」
「全体攻撃ぞよ! 即死魔法より怖いぞよ!」
冷や汗が滝のように流れ、脇汗がにじむ。
「上司に相談なくコンプラ委員に電話をする社員」
「相談できないのなら仕方ないんだけどね~、ぞよ」
そこは許すんだ。
「さらには、コンプラ委員に相談もせず、ネット上で炎上させる社員!」
「地獄の業火ぞよ~!」
消火活動が大変そうで……次の炎上が湧き上がれば忘れ去られるのも早い。
必要なのは消火活動よりも更なる次の大きな火災……そのうちすべてが灰になるぞ。
「ライバル会社へ転職した社員が出世して、上から目線でやって来たら~」
「石投げる―! 全員で石を投げるぞよ!」
「はあ、はあ、はあ、はあ」
「はあ、はあ、はあ。――つまり、物語やアニメなどで裏切り行為が当然のように繰り返されているため、善悪の判断がつかなくなるのでございます」
裏切りは一見、面白く目に映りますが、危険な因子が脳裏に刷り込まれているのです。
「なんとなく分かったぞよ」
「なので敵が敵を裏切り味方になるのも駄目なのです」
そんな裏切り者が出てくるような子供向け番組が、いずれはこの世を終焉へと導くのです。
故に、裏切り者を許してはならないのです。
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