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ABC詩集シリーズ

イフの世界 ー可能性違いの私達ー

作者: 仲仁へび
掲載日:2021/10/28



 もうじき、この世界には危機が訪れる。

 世界の果てから、膨れ上がる蝕という化け物がやってくるらしい。

 それからは絶対に逃れられない。


 でも、私達は死にたくなかった。

 生まれた時から、死ぬことを定められていたこの世界と共に、死にたくなかった。






 私が生まれた時、世界の寿命はわずか二十数年ほどしか残っていなかった。

 皆が恐れるその化け物がやってくるまで、わずか二十数年。

 私の心は、立ち向かうより前にすでに折れていた。

 戦って、抗ってみようなんて思えないほどに。


 それでも私は、生きたかった。

 大人になって、おばあちゃんになっても生きたかった。


 だから、心は折れても絶望はしなかった。

 まだこの世界には、生き残るための希望が残されていたから。


 それは、もう一つの世界を作り出すという研究だ。

 複製の世界を作り出して、身代わりに蝕へ差し出すという目的で始められた。


 生き残るためにはその方法しかない、そう思った私は、双子の世界を作り出すその研究を始める事にした。


 研究は大変だったけれど、世界中の人々が知恵を出し合ったから、一歩一歩ゆっくり着実に進んでいった。


 そして、余命三年といった時に、双子の世界が完成した。


 私達の世界そっくりの偽物が。

 私達とそっくりの者達もいる。


 けれど、またその偽物に複製をつくられてはかなわないから。研究にまつわる事だけをなかったことにした。


 複製を完成させた私達は、希望に満ち溢れていた。


 これで生きられると、そう思っていた。


 なのに。






 滅びた世界は、私達の世界の方だった。


 向こうの世界になにがあったのか?


 偽物の世界は、偽物の彼等は、生贄として蝕に差し出されるはずだったのに。


 滅びゆく世界の中で、私は研究対象であるその世界をのぞきこんだ。


 すると、彼等は抗っていた。


 彼等は誰かに犠牲を押し付ける方法ではなく、自分達が戦う方法を選んだらしい。


 蝕と戦って、勝つ事はできずとも退ける事に成功したようだ。


 彼等は希望に満ち溢れていた。






 そうだ。


 なら間違っていたのは私達の方。


 本物の方が、複製した偽物に劣る劣化品だった。


 考えてみれば道理。


 心折れた私達が、生き残れるはずなどなかったのだ。


 滅びゆく世界の中で、私達は間違ってしまった事を知ったのだった。


 もう取り返しは、つかない。


 取り戻す事もできない。


 ただ、命尽きるだけ。


 どうしようもない後悔と嫉妬と羨望に身を焦がしながら。


 できるなら、叶うものなら、私達だってあんなふうに強く生きたかった。 



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