9-6 嘘つきと追跡
白い国 9-6 嘘つきと追跡
今までの話の流れを、ドクターとファイブスにも共有し、話し合いをした結果、ドクターの案が正式に行われる事が決まった。
まずは、被せた男の麻袋を取り去り、代わりに透過率の低い白布で、視界を覆っては、こちらの身元を明かさぬ様に注意を払う。
そうして四人は男の意識が戻り始めるのを見計らって、麻酔薬を簡易マスクから摂取させて、徐々に意識レヴェルを落とす。
意識の状態を管理するドクターは、精緻なコントロールで、意識を絶妙な段階に落とした。
すると、強張っていた男の体躯は少しゆったりとした構えになり、落ち着きが見られる。
「よし、これならいけます。どうぞ。」
その合図を受けたドックは、耳元近くまで、寄っては、尋問を再開する。
「セーニさん。聞こえますか?聞こえるなら頷いてください。」
その問いに対してぼんやりかつ、ゆっくりと頷く男。
「セーニさん。貴方はダニエル・ハーディングを知っていますか?」
すると男はコクリと頭を垂れる。
「では、彼から何か頼まれましたか?」
するとまた、頷く。
「何を頼まれましたか?」
すると、小声で呟く。
「わた‥す。」
その答えに、ドクターと顔を見合わせてその言葉を確認する。
「渡す。何を渡すんですか?」
「か‥み。」
「かみ?羊皮紙とかの紙ですか?それとも毛髪?」
「かみ‥。」
虚ろな反応で、いまいち確信を掴めない。その中でも、根気よく尋問を続けるドックの額には、汗がジワリと浮き出る。
「セーニさん。誰に渡すんですか?」
「分からない。種類に‥よる‥。」
すると、麻酔薬が効きすぎたのか、意識が再び閉じてしまう。
最後に出た種類によるとはどうゆう意味かを計りかねていると、ステラが、ボソッと発言する。
「ソースとかの種類ですかね?」
ステラの発言を勢いよく無視して、前述のその発言に食いついたのは、ファイブスだった。
「分かりましたよ。これ。おそらくこの男、ただの仲介役、いや中継ポイントに過ぎないんですよ。右から左に流すだけ。渡された紙を、ソースとかトッピングの種類とか注文の仕方で、渡す相手を決めていたんだ!」
「ふーむ。すると、一番美味しい組み合わせってなんでしょうね。タコスですもんね、イメージでは何となくオーロラソースですけどね。うーん。分からない。」
本格的に奇異な検討をし始めたステラを放置し、発言の意図を考える三人。
「ならば、この男は何も知らない。単にハーディングの渡した物を、その誰かも分からない奴に渡していただけの男ですか。」
ドクターは、男の呼吸、バイタルを確認すると、会話に加わる。
「ああ、しかし。渡すのは一人だけなんだろうか?昼に商売中の彼を観察していたが、時折視線が動いて周りを気にする素振りがあったんだ。あの時は、客が来そうか、外を伺っているだけかと思ったが、本当は例の人間が来るか、内心ソワソワしていたって事なのかもしれない。」
ドックが、顎を触って思考していると、ファイブスが、進言する。
「それはかなり可能性としては高いと思います。それにこの男の、その屋台ってもう調べましたか?」
「いいや。まだだ。」
「なら、すぐに調べた方がいい。何か証拠が残っていたとしてもハーディングが勘づいたらもう、消されている可能性もありますし!」
食い気味にそう言ってやる気を起こしたファイブスは、先程調査活動から戻ってきたばかり疲労を気にする事もなく、外に出ようとする。
その姿勢を買っているドックではあるが、この状況ではすぐに男を戻す訳にはいかない。
思考を巡らせていると、挙手をして思考を遮るのは、ステラだ。
「あのぉ。私とファイブスで行ってきますよ。場所なら先程聞いて覚えましたし、数ブロック先ですよね?私達なら30分かからず戻りますよ!」
そう言って肩をファイブスと組むと、口をへの字に曲げて、いかにも嫌そうな顔をして、すぐさま払い除けるファイブス。
「まあ、ペアがどうこうとか言って場合じゃないので、とりあえず一番動けるこの人と、自分なら適任かと。」
「よし!じゃあ決まり!私達はタコスの謎を解いてみせますよ!」
意気揚々と間違った決意表明をしたステラこと、アニ・オルフェは、軍人らしい敬礼してから、ガレージ横の扉から颯爽と外へと繰り出す。
「お、おい!待て!チームプレイって言葉の意味を知ってるのか!?聞いてないだろ!」
それを追うようにファイブスも忙しなく扉を開けると、走り去っていった。
次回お楽しみに!
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