20-1 エピローグ
白い国 20-1 エピローグ
大学の構内を急いで走る姿がいくつも学生の目に留まった。耳目を集めるのは憚れるのだが、それも仕方ない事だ。是非もない事態なのだ。
ルネサンス建築の絢爛な意匠を誇るこの研究棟に辿り着くと、青年は迷う事なく三階へと猛然と上がって行く。階段を上がり切って左手すぐ、歴史文化研究室の看板がぶら下げられた部屋を、ノックも無しに突撃する。
「先生!!大変です!!」
相変わらず資料で散乱する研究室内部で、怠惰を体現していたローレンスは、椅子を傾け二本脚の不安定な曲芸座りを影響もあり、派手に椅子から転げ落ちる。
「痛たた‥お、おい、ノックくらいしたらどうだね?お陰で臀部に疼痛が。」
そんなローレンスの戯言を歯牙にもかけないテレスは、新聞を片手に肩で息をしているにもかかわらず、酸素を吸う前に、立板に水を流すように言い放つ。
「遂に!見つけたんです!研究費増やす方法!!それが!これ!懸賞金です!!犯人逮捕ですよ!!凶悪犯を捕まえて社会貢献!アンド捜査協力で懸賞金ゲットですよ!!」
「な、なんだい?薮から棒に。そんな上手くいくわけないじゃないか。それになんで私が凶悪犯なんて下劣な存在と好き好んで関わらないといけないんだ。嫌だね。テレス君、君一人でやりたまえ。」
つっけんどんな態度で、臀部と言いつつ、腰を摩るローレンスは、テレスを冷たくあしらう。
「いいんですかあ?研究費欲しいんでしょ?」
「ん?まあ、それはそうだがね。一応私は真っ当な方法で資金調達をだね‥」
「そんなことはいいんです!!もう真っ当とか、普通とか、そんな事では時代の波は乗り越えられないんです!!時代は自主自立です!!自己財団の立ち上げです!!」
「いや‥随分と大きく出たなぁ。」
テーブルにあった爪やすりで手入れをしつつ、面倒くさそうに、どうせ大言壮語の類いだろうと適当に聞き流すと、どっしりと椅子に座り直すローレンス。
「これ!見てください!」
テレスが広げた紙面には、エヴァンズ女史がたおやかな姿で、微笑みながら市長と握手している写真。
「な!なんだこりゃ!」
どうにも不穏当な情勢。愛しのマイスィートハニーが何処ぞの太鼓っ腹の痴愚野郎、下衆野郎、悪徳野郎に穢されているとあっては心中穏やかではない。
「ふふふ。食いつきましたね。実は社会貢献活動として、今回の懸賞金にエヴァンズ・エステートが協賛しているんです!」
「やる!絶対やる!」
飛びつくように新聞記事を進んで読み進めるローレンス。
「ふふふ。思惑通り。これで、研究費ゲットアンド、准教授、しいては教授への道が‥ふふふははは!!」
完全に悪い高笑いが漏れているテレス。
「あの、テレス君。聞こえているよ。教授って言ったよね?あれかな、遠回しに辞めろって事?あれかな名誉教授のポスト用意されてる感じの退任だよね?追い出そうとしてないよね?ね?」
「ふははは!!」
「あれ聞いてないな‥まあいいか。アハハ!」
向かい合った二人は、不気味に笑う。
その後も笑い続けて、盛大な不気味な笑い声は研究室の外にも漏れ出ていた。
なんとも様子のおかしい二人は、目の焦点も合っていない。これはどうやら何かあるらしい。
不審がったのは通りすがりの学生達だけではなく、大学の職員もだ。どうにもおかしいと、大学の医務室へと運ばれた二人は、仲良くベッドでも笑続ける。
「ハハハハ!ダメだ!何故か笑いが止まらない!!」
「ハハハハ!いやまったくもって同じです先生!なんだか楽しい気分でもないのに笑い続けてしまう!!」
後日、二人は笑いキノコを食べて食中毒であった事が判明する。
なんてこった。
笑顔を守りたい。笑顔を作りたい。
そう願っていたのが通じた結果なのかもしれない。
そう、小さな奇跡はいつも、日常の中で起きているのだから。
fin
p.s
最後がこんなですまんね。20章がキリがいいと、無理矢理くっつけてんでね。
でもね。みんなの笑顔が見たいんよ!
笑顔で終わりたいもん!
よって終わり!!
2021年と共に終わりました!!今まで読んでくれた人には感謝です!!
覚めない夢の中でいつまでも続く道を歩き続けたい‥
目標は高く!遠く!
いつか届くと信じて!
2021年12月31日 五月雨雅




