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16-16 思い出の足跡

白い国 16-16 思い出の足跡



「何だったんだ。あの人‥」


テレスは安堵感から膝から崩れ落ちると、その場に足を八の字にしてへたり込む。


「まっ!ラッキーでしたね!てか、ジャックさん、口ほどにもないとはこの事ですよ!あっさり捕まっているんだから!」


 絡まった縄を解こうにも、絡まりまくり、なかなか解けない、縄に悪戦苦闘するレイ。


「いや、わざとなんだが‥」


 無論交渉して上手く第三の勢力の力を利用してやろうという、奸智に長けた一手だったんだが‥という、反論も、彼女には届いていない。


「ああ!もう!面倒くさい!ズバーンと!銃で撃ち抜きますか!!」


 こんがらがる縄を前にイライラが募ったレイのおそらく本気のその一言に、珍しく動揺したジャックは顔を青ざめさせると、慌てて、両手が塞がった状態で、地面に落とされたサバイバルナイフを拾いに行く。


「いや!このナイフで切ってくれ!そうでなければ、俺の腕が撃ち抜かれてしまう!」


「いやそんなのでチマチマ切るより、上手く撃ちますから!ね?」


 ジャックの足元にあったハンドガンを手に取ると、本当に容赦なく撃ち抜こうとする。あられもない、「うわわわわーーーー」奇声を上げて叫ぶジャック。これは差し迫った脅威、恐怖だと思ったテレスが、急いで助けに入る。


「待ったぁぁ!レイさん!私が切りますから!すぐ切りますから、そんな物騒な事はしないでください。」


 肩を掴まれて、剥がされたレイは、両腕を組んでは「もう!ふん!」と不満げに頬を膨らませてそっぽを向く。


「大丈夫ですよ!そんなに怖がんなくても!私善良な民間人ですけど、これくらいの至近距離で、外さないですよ!」


「いや、これだけきつく縛ってあるのに、上手く間だけを撃ち抜くのは流石に無理ですよ!」


 それはそうなのである。ガチガチに固められた、縄で、縛られた腕と腕の間はほとんどゼロ距離であったし、上手く間を撃ち抜いた暁には、ジャックの橈骨動脈がぶち抜かれていただろう。


 あわや出血大惨事、もはや流血大サービス。の事態は避けられたが、そもそも大きな問題はまだ解決していない。テレスは、縄を切りながらも、その懸案事項について、どう伝えるか、どのタイミングで、伝えるかについて、上目遣いに二人の様子を見ながら時機を窺っていた。正直言ってあまり時間、余裕もない。逡巡しているうちにタイムオーバーになる可能性だってある。そこで、このタイミングだ。今なら何気なーく。サラッと言ってフワッと終わるだろう。という時機を見定めたテレスは、おずおずとその懸案事項言ってみる。



「あの‥こんなタイミングでなんなんですが‥爆薬、もう、あと3分くらいで、爆発する予定なんですよね‥ハハハハ!」


 笑ってみた。笑って誤魔化してみた。誤魔化せる訳ないけど。とりあえず笑う門には福来る。笑っている最中にも、時迫る。だ。3分でここから逃げるとなるとなかなか際どいタイミングであるのは承知だが、言いづらい事を言い出す勇気と、爆破に巻き込まれて木っ端微塵になる恐怖とのせめぎ合いで、この時機になってしまった。


 それに何故そんな時機になったのかと言えば、後はジャックと合流するだけで、時間に余裕があると考えていたし、あんな一悶着あるとは思わなかったからだ。


 あれで、2分は使った。それが思った以上に大きい。これは、言い訳ではあるが、テレスだけの責任ではないと、言い張りたい!そんでもって逆ギレして言い募ってみたい!‥やっぱりそこまではしないけど‥。


「ええ!テレスさん!そんな短いんですか!!」


 驚かれた。まあ、無理もないか。ごめん。

謝罪します。土下座。綺麗な土下座。拝礼。


「まあ、急げば、なんとかなる。走りながら懺悔は聞こう!」


 ジャックはテレスからサバイバルナイフを受け取ると、残った縄を器用に片手で切り終える。そうしてジャックは、土下座するテレスを立ち上がらせると、引きずる勢いで、手を引いて走る。


 通用口から出ると、左方向へと迷いなくレイが走る。それを見たジャックら二人も追従していく。


「車はこっちです!!少年がそこで待っていますから!」


 砂利道を踏みしめて、全力で駆ける。

 

 工場の北西に位置する場所に着くと、屋根が取っ払われた、小型四輪駆動車、いわゆるZEPPと呼ばれる自動車が停まっている。後部座席には律儀にちんまりと座っては、出発の時を待っている少年が見えた。


 急いで、ジャックはその車の運転席に飛び乗ると、他の二人も、乗り込む。


 


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