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16-8 思い出の足跡

白い国 16-8 思い出の足跡


「おお!ジャックさんは児童誘拐の癖があったなんて!驚き!桃の木!山椒の木!です!」


 目をパチクリさせて、驚嘆の声をあげるレイ。どうやらそのとんでもない誤解を解くのが先らしい。


 そもそも児童誘拐の癖があるなんて、とんだペドフィリアだ。すぐに警察に突き出すべき案件だろうに。笑っている場合ではない。真面目な話。


 一応言っておくが、そんな癖はない。性格は保障できないが、性癖はねじ曲がってはいないのは保障出来る。


「いや、彼は、自分から付いて来たんだ。どうも、あの街から脱走したいらしい。それで、とりあえず違う街までは、送ってやる話になっているんだ。」


「へぇー。そうですか。男色の人間は、みんなそう言うんですよ。あけっぴろげな人は少ないですよ。むしろ百合の人の方が言っちゃう人が多いですね。そういう界隈の仲間内だけですが。無論そういう人は。まっ、今の時代捕まっちゃうから言えないってものありますよね。」


 ニヤついて、疑惑の目を向けるレイは、少年と、ジャックを交互に見ては、再び不敵な、いや不適切な笑みを浮かべる。色々と想像を膨らませるな!と言っても無駄なのだろう。


 それをもはや訂正するのも時間が勿体ないし、面倒だと感じた、ジャックは煙草の火を消すと、話題を変える。


「レイ、ところで良い写真は撮れたのか?」


 すると、自慢げにカメラを見せつけると、したり顔を浮かべる。


「いやいや、我ながら自分の才能が恐ろしいですよ。ここまで、隠密行動に盗撮の才能があったとは。知られざる一面を自分でも発見して得した気分です。」


「ほう?それは期待できそうだ。後で現像するのが楽しみだな。新聞社に売り飛ばすにはなるべくセンセーショナルな写真がいいのだが‥そう言う写真は撮れた。という事でいいのだな?」


「そりゃ、もちろん!バッチシ撮れましたよ!あんなところや、こんなところ。あれがああなって、これがこうなって、バッキバキの、ドッキドッキの仕上がりになっていますよ!」


 抽象的な言葉に、意味不明なオノマトペの連続で、全く意味を持たない言語となっているが、それはいいだろう。これだけ自信満々に言うのだから、いいものが撮れたと信じたい。


「とりあえず、テレスの寝ている場所にまで後退して、態勢を整える。この少年もそこに待機して貰った方がいいだろう。」


「僕は大丈夫だよ。それよりも、みんなと離れる方が不安。連れて行くって言って、子供を置いて出て行く大人は大勢見て来たから。大人って嘘つきだもんね。それとアイツとは心が繋がってないからもうすぐ離婚する。もう終わっているんだ。って言って離婚せずに、女とイチャコラするのが男の美学なんだもんね。」


「‥‥」


「‥‥」


 その言葉は二人を絶句させた。少年の後ろ暗いバックグラウンドと、変な事を吹きこんだ、大人の意地汚さに、吐き気がする。特に後半のやつ誰だよ。本当にクズだな。イリャーノ人か?ビザ焼き過ぎて、おかしくなったのか?それともパスタの食い過ぎか?


 いずれにせよ、無理やり話題を切り替えるにも苦労する話題に、ゴホン。と息をついて、無理くり切り替える。


「ああ‥っという訳で、この少年も帯同することになるが‥レイ!今夜あの村に夜襲をかけるんだが、懐中電灯は持ってきたか?」


「‥あ、えっと、ハイ!ありますよ!こんな時の為に一応。しかし、夜襲ですか?いくらこちらが少人数で仕掛けるにしても、夜はこちらも視界が悪くては、やりづらいのでは?」


「いいや。それでもやっぱり夜しかない。なにせ、明日の食料は持ってない。故に今日中にこの村から離脱しないと、我々が飢えるからだ。」


「‥‥」


「‥‥」


 今度はジャックが二人を絶句させた。やっぱりというか、そうだろうな。とは思っていたんだろうけど、事実をここまで、自信たっぷりに言われる。しかも、それっていわば作戦ミス。みたいな事をこうも堂々と言われると意外と反論のしようもないのだ。

 

「ねぇ。おじさんって意外と馬鹿?」


 痛烈な一言にジャックは無表情で応えた。


「‥ごめん。おじさんって言われるとムカつく。それと、これ、一応計算通りだから。背水の陣って知っている?あっ、故事成語とか知らないかぁ。子供だもんね。まだ、習ってないもんね。漢字とか東アスライアの文化だもんね、中華圏の文字とか知らないよね。ごめんねー。おじさん10歳児の知能レベルとか不勉強で!おじさんこれでも、30年以上生きてて、しかも大学とか行っているから少しは頭いいんだわ。それでも、馬鹿とか言われるのは腹立つんだわ。分かる?その気持ち?」


 これ以上なく大人げなく反論したら、少年は黙った。

というか察してくれた。この言い争いに益はないと。益体のないことだと。少年のほうがよっぽど大人だった。





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