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12:二度目の学校生活

 寄宿舎へ入った翌日から、アルテナの学校生活は始まった。

 オルレア王国の貴族学校は国内から全ての子息令嬢が集まるだけあって、グラナダ王国の何倍も規模が大きく校舎も宮殿かと思うほど立派で広い。リメルが同じクラスだから良かったものの、この親切な友人がいなければあっという間に迷ってしまいそうだった。


 すでに一年の半分が経過しているため、普通なら中途入学となるアルテナは授業に付いていくのに苦労するだろう。

 だが人生をやり直しているアルテナにとって、学校に通うのは二度目だ。その上、一年生が学ぶ内容は非常に簡単なものだったため、アルテナにとっては片手間で済ませられるものがほとんどだった。あまりに張り合いがないため、ともすれば早々に学校生活に飽きてしまいそうなほどだ。


 けれど幸いな事に、一度目の人生で通ったグラナダ王国の貴族学校とは違う部分も大いにあったため、そうはならなかった。

 まずアルテナが驚いたのはクラス分けだ。グラナダでは男女別にクラスが分けられていて、異性との交流は昼食や休み時間などに限られていたが、オルレアでは同じ教室で男女が共に肩を並べて授業を受けるのだ。

 当然、授業内容にもほとんど性差がない。グラナダでは経験した事もない武術も、男子とは得物が違うとはいえ女子も習う。


 そんな環境だからか、令嬢に求められる性質もグラナダとは異なっていた。グラナダでは貞淑さを良しとしており女は男に従うべきという価値観だったものが、オルレアでは女も男に意見していいというのだ。

 むしろハッキリと自己主張をする女性の方が好まれるらしい。些細な事をきっかけに教室内で男女が激しく口論を交わすのを目にする度、アルテナは唖然としてしまった。


 アルテナとて一度目の人生でオルレア王国の片隅にある小さな田舎町で暮らしたため、威勢のいい女性の存在は知っている。

 だがそれはあくまで平民だからだと思っていた。まさか貴族の令嬢たちまでこうだとは、思いもよらなかったのだ。


 しかしそれも、歴史の授業を学ぶ事で納得する事となった。

 海洋貿易で栄えているオルレア王国の王侯貴族は、そのルーツを海に持っている。ずっと昔のまだ国の形を成さない頃には、現在の王家に繋がる一族の長も率先して漁に出ていたらしい。

 男衆が長く海に出ている間、女衆は留守を守らなければならない。そのため男のように戦う事もあり、男衆は家を任せられる強い女を求めるようになったようだ。


 その価値観は貴族という身分制度になっても変わっていないそうで、他国との関係上、表立ってこそないものの、裏では優秀な妻が夫の代わりに領地経営に精を出す、などという事もあるらしい。

 そんな女性たちを育てるわけだから、どうりで教えられる算術のレベルも高いはずだ。一年生の今でこそ簡単なものだが、来年以降は本腰を入れて取り組む必要があるだろう。


 とはいえ一度目の人生で商人の妻をしていたアルテナは、算術も得意分野だ。グラナダの貴族学校では最低限の算術しか女子に教えられなかったため下手をすれば挫けていたかもしれないが、真面目に取り組めばついて行けそうだ。

 マイルズ探しの時間を割かれる事になるのは痛いが、より専門的に学ぶ事が出来ればマイルズと再会した後も役立つはずだ。前回よりもっとマイルズのために動ける妻になれるかもしれない。アルテナは嬉しい誤算に頬を緩ませた。


 そうしてアルテナの二度目の学校生活は穏やかに始まったが、周囲はそうではなかった。

 隣国の公爵令嬢という肩書きに加え、成長すれば美しい娘になるだろうアルテナの愛らしい顔立ちは自然と人目を集める。遅れて入学してきた珍しい留学生という存在にも関わらず、授業にも難なくついて行く賢さはどうあっても目立ってしまうし、気の強い女性たちの中で淑やかな気品を纏う姿は佇んでいるだけでも異彩を放つ。

 どうあっても注目されるのは必至で、アルテナは多種多様な視線に晒された。


 だが、最初こそ遠巻きにアルテナを見ていた者たちも、親しく話すリメルに感化されたのか次々に話しかけるようになっていった。あっという間にアルテナは、男女問わず多くの生徒に教師陣までたくさんの人に囲まれるようになっていく。

 人脈が広がれば、その分マイルズに繋がる情報も得やすくなる。アルテナはその変化を喜んで受け入れ、嬉しそうに微笑むアルテナの周りにはさらに人が集まるようになった。


 だからだろうか。入学してしばらく経ったある日の事。校舎の中庭でリメルや友人たちとのんびり昼休みを楽しんでいると、思いがけない人物が姿を現した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 順風満帆な留学生活と思ったら!? 思いがけない人物は吉なのか凶なのか!(><) マイルズに合う前の時間も、勉強はもちろんリメルちゃんはじめ友人達と楽しく過ごしたりして人生を謳歌してほしい…
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