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隣の人

作者: 六藤椰子〃

元々Twitterの診断メーカーの創作ジャンルの140文字以内に納める「隣人」と言うお題にて構想を練った物語でした。

 ふと隣を見たらお互いに目が合った。しかし直ぐに視線を元に戻す。

別に照れている訳ではない。友人とさり気ない会話中に両手を広げ、思わず僕の手が彼女の肩に触れたんだ。

彼女は一瞬こちらを見て、僕も謝ったのだが、お互いに直ぐに姿勢と視線を元に戻した。

彼女は時計を気にする様子で、自分のクラスへ戻って行った。僕は今まで意識した事が無かった。別世界の人間同士のように、そういえば学校の中では会話すらした事もなかった。ドラマかアニメのように忘れ物もなく、貸してと言った事もなければ一度も挨拶すらした事もない。

友人は言う。『あいつ父親がいないらしいぜ』

僕にはどうでも良い事だった。実際いないとして、僕の生き方に変わりはないのだから。

 チャイムが鳴り出す。大人になる為に勉強をする。ふと窓の外を眺めた。雲が少ない晴天だ。天気予報では雨になる予想だったので、クラス全員の生徒が傘を持って来ていた。

傘を忘れる比率はどれぐらいあるのだろう?ーなどと割りかしどうでも良い事を思う。曇はみるみる空を流れていく。僕もあんなに自由だったらなと思う。

授業が終わる頃には曇り空に変わりつつあった。

再びチャイムが鳴り出す。友人と軽く会釈して急いで玄関ホールに向かうと、丁度雨が降ってきた。

 彼女がいた。僕は傘を無言で差し出す。彼女は何も言わずに僕の広げた傘に入ってきた。暫くお互いに何の会話すらも無いまま歩いた。

「今日の晩ごはん何だろうな」僕は重たい口を開いた。

数分後に「カレー」とだけ答えてくれた。それから会話が発展する事も無く、自分の家に辿り着くと、

「おかえり。仲が良いね」祖母が出迎えてくれた。僕と彼女は少し距離を離した。「ただいま」僕は言うが、彼女は何も言わずに家へ上がって行く。

祖母は少しため息を吐いてから、「今、セツコさんが頑張ってカレーを作ってくれてるよ。風呂わいてるから入りなさいよ」

「分かった」と僕は答えて自分の部屋に戻り、そのままベッドにうつ伏せになって寝転んだ。

着替えるのが面倒くさい。僕はうつ伏せ状態のまま壁に掛かっている時計を見た。午後6時半。隣の部屋から物音が聞こえる。恐らく彼女の着替えてるのだろう。僕はパジャマを持って、浴室へ向かった。

つくづくアニメってファンタジーな物語なんだなと改めて実感する。恋心抱いたりすることもなく、作者自身の願望なのかもしれない。

 僕は浴室に浸かり、暫く無言で明日の事を思い浮かべる。

すると玄関のドアが開く音と父親の「ただいま」と言う声が聞こえてきた。祖母と父親の会話が聞こえてくる。いつものことだ。

「あの子はセツコさんを〜」途切れ途切れに聞こえてくる。父親は反論しない質だ。祖母の話しを聞き流してるかのようにも感じられるし、いつもウンウン頷いてたりしてるだけだった。

風呂から出てパジャマに着替える。彼女は歯を磨いていたが、お互いに目を合わせるような事も無く、リビングへ行った。

セツコさんが慌ただしく動いている。人数分のカレーをテーブルの上に置いたり、お茶を出したりしてる。

「ちょっとまっててね」セツコさんが僕の存在に気づくなり、笑顔で接してくれた。僕はテレビをつけてソファに座り込んだ。

 数分後、みんな揃って食卓を囲んだ。いや、みんなでは無いか…僕は一瞬悲しくなった。父親は僕と彼女に学校生活について聞いてくる。他愛もない会話が続き、ちょくちょく祖母とセツコさんも会話に入ってきた。

彼女もそれなりに会話に参加する。しかし、そこまで深い会話はしない。阿吽の呼吸とまではいかないが、そこまで会話する事も無く、いつも通りのように時間は流れていった。

 僕は自室に戻ろうとした時に彼女と鉢合わせてしまった。お互いに目線も合った。どことなく気まずい雰囲気が漂う。

「おやすみ。あと今日はありがとう」と彼女は少し照れくさそうに、今まで一度も発した事が無かった言葉を僕に対して言い放ち、呆気に取られて「おやすみ。」と返事する前に自室へと入ってしまったので、僕も自室へと戻った。

少しずつ少しずつ、ヨウコとの二人の距離は近づいてゆく。

主人公と彼女の関係性はご想像にお任せします。


何故セツコさん呼ばわりしているのか?

何故彼女呼ばわりしているのか?

何故祖母と一緒に暮らしているのか?


日常的な何故?をお楽しみください。

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