砂籠の乙女6
《ヌール・アル・カマル鉱山》
花の街から暫く南下し、丁度砂漠と緑地の間に存在する、今は使われていない鉱山の名前だ。
そこでキッカたちは見つかった。
「──ルカくんはジゼルさんの様子見てくれば? キッカちゃんはこっちで預かるから」
返事も待たず、ディスカードは後ろ手に扉を閉めた。
ベッドに投げられ、もぞもぞと起き上がろうとするキッカを、上から下までじとりと眺める。
(…………ハ、)
溢れたのは安堵の息だ。
五体満足。かつ目に見える範囲に、目立った怪我はない。
この妹が何をしようが、どうなろうが知ったこっちゃないが、自分の監督下でやらかすのは勘弁してほしい。
「怪我はない、よね? そのわりに元気なさそうだけど」
「けが……ない」
「熱でもあるの?」
「ない」
キッカは端的に答えるが、様子がおかしいのは見ればわかる。
常ならば、「そおなの〜! キッカか弱いからぁ〜!」と大袈裟に同情を誘おうとするところを、その気力もないのか、ベッドに座ったまま茫としている。
先程は適当に聞いたが、実際、熱もありそうだ。
頬の赤さは隠れておらず、瞳に発熱時特有の水気がある。
バカだから気づいていないだけだろう。
「嘘つけ」
腕を掴むと、やはり触れて分かるくらいに熱かった。
いつも呑気な態度でいるから気づきにくいが、妹は、ここまで長く故国を離れたことはなかったんじゃないだろうか。
慣れない環境続きで──あまつさえ人攫いに捕まり、何故か沓下は焼き切れている──ストレスが溜まったのかもしれない。
「みず」
視線を落とすと、相変わらず暈りした眸で、キッカが譫言のように呟いた。「……みず欲しい」
ディスカードは溜息を一つ吐くと、腕を離した。
一度外に出て、店の女から水を一杯貰って戻る。
戻ったあとも、キッカは全く変わらない体勢で、凝とベッドに座っていた。
少し悩んで、「《凍れ》《砕け》」と杯に向けて囁く。
「ほら、氷」
そう言って、杯に入った氷の粒を目の前に差し出しても、キッカは茫として反応がない。
舌打ち一つ。ディスカードはぐいっとキッカの顔を持ち上げ、もう片方の手で、口の中に氷を押し込んだ。
すると、舌に乗った氷が、恐ろしい速さで溶けていく。
「お前体温どうなってんの……!?」
ディスカードは目を瞠った。握った腕は確かに熱かったが、これは流石に尋常ではない。
片手でキッカの顔を抑え、もう片方の手で、彼女の顎を、下の歯ごとぐっと開く。
そうすると、キッカは嫌がるように眉を寄せ、身体を捩った。
些細な抵抗なので意に返さないでいると、抑えた指を、パクリと食まれる。
火傷するまではいかないが、火を撫でるくらいには熱い。
そして柔らかく、濡れていた。
──拙い、と思った。
「…………」
ディスカードは黙って素早く指を引き抜く。
拙いって何が? 頭の中で警鐘が鳴っている。妹が発熱したから触診を行っただけでそういうアレでは一切無い。断じて。
キッカは、ディスカードの動揺なんて気づいていない様子で、目を伏せたまま、顔を抑えている方の手にスリ、と頬を寄せてきた。
手の冷たさが気持ちいいのか、ふ、と熱い息がかかる。
ディスカードは固まった。
さっきまで己の指を包んでいた、熱く、赤い口腔が、チラリと覗く。
キッカの眸が、ディスカードに向いた。
「もっと、ほしい」
真夜中色の眸が一瞬、螺鈿のように光った気がした。
「……お邪魔でしたかしら」
ゴッッ──
飛び上がったディスカードは、卓に足を強打して蹲った。
そんなディスカードを通り越し、シャオレイはキッカの前で立ち止まる。
「さっき暑いとおっしゃっていたので、氷嚢を持ってきました」
そう言ってニッコリ微笑み、甲斐甲斐しく、キッカの額に張りついた髪を払う。
キッカは、渡された氷嚢に顔面を押し当て、「あ"〜…ぎもっぢぃ……」とおっさんのような声で唸った。
なんだコイツ、と思うと共に、なんとも言えない安堵が胸の内に広がる。
「──残念ながら、主犯はいなかったようですね」
キッカの世話を焼きながら、シャオレイは言葉だけこちらに向けた。
助け出した女は、《海月楼》の女も、そうでない女も、一先ずシャオレイが世話を引き受けている。
そのため、ディスカードは、捕まえた賊の中に首魁がいるかどうか、シャオレイに確認を頼んだ。
そこまで精神を病んでない女に頼み、顔を見てもらったのだ。
しかし残念ながら、全員ハズレだったらしい。
「そう」
正確には、助け出した、というか、助かっていた、が正しいが。
自分が砦の入口を一掃した頃にはもう、すぐそこまで女達は逃げてきていた。
多少は助けになったろうが、女達が恩を感じているのは別の人間だ。
案外キッカが落ち着いていたので、問い質したところ、「こないだ会った魔族のおねーさんが助けてくれたの!」と答えをくれた。
【魔族の女】──と、キッカが言うからには、カターリナの宿屋で這い蹲っていた女のことで間違いないだろう。
周りの女達は憔悴していたが、言葉少なにキッカを肯定した。少なくとも、魔族がいたのは本当の筈だ。
しかし、彼女もまた、ディスカードが合流する頃には姿を消していた。
こないだの恩返し、ということだろうか。
意味がないとはいえ、足枷を壊し、男達を追い払ったのはこの妹だ。
「捕まえた奴等みんな雑魚だったし、そこ逃したら意味ないと思うけど」
「多くの女が助かったんですから、意味はありますわ」
助かった女達や、シャオレイはそう思うかもしれないが。
《頭》を逃がせば、被害は続くだろう。
鉱山の中に入ってみれば、なるほど。
魔力の探知が出来ないよう、意図的に《魔力拡散》された痕跡があった。
どおりで探知に時間がかかったわけだ。
坑道は放棄されて久しく、坑夫に魔力を封じる理由もない。十中八九、後から居着いた賊の仕業だろう。
それならソイツは、そこそこ悪知恵の働く魔術師で──おそらく、地属性だ。
が、しかし。
捕まえた賊の中に、魔術師は居なかった。
となると、順当に考えて、その《頭》が魔術師になる。逃がせば、同じように悪知恵を働かせ、また商売を始めないとは限らない。
というか、ほぼ確実に、土地を変えて同じようなことを繰り返すだろう。一度仕事が頓挫したから、これからは真っ当に生きよう──なんて、考える奴はそもそも、こんなにソツなく悪事を働かないのだ。
後の被害を思えば、女達を逃がすことを後に回しても、《頭》を潰すべきだった。
他は雑魚だ。蹴散らしたとこで意味はなく、《頭》が生きていれば、また同種の屑は蝿のように群がるだろう。
(ま、本当にあの女が借りを返す目的でやったなら、余計なお世話だろうけど)
今後の被害など、魔族にとって如何でもいい話だろう。
「そういえば、キッカさん──」
声に顔を上げると、シャオレイがベッドの下に跪き、キッカを見上げていた。
「わたくしたちに、何か聞きたいことがあるんだとか」
キッカの手の甲を、そっと撫で、優しい声で問いかける。
何の話だろう。というか、男に対する手練手管を何故妹にやろうとしているのだろう。
ディスカードは怪訝な表情で、二人の会話に意識を向けた。
「うん」
「なんでしょう」
「反乱軍のいるとこ知りたい」
──って、ルカくんが。
キッカが答える。口調はさっきよりハッキリしてきたが、熱が冷め、今度は眠くなって来たらしい。目が瞬いている。
「……じゃあ、お話は、ルカさんに伝えたほうがいいですか?」
「うん。ルカくん、この国、壊したくないって……反乱軍と、おはなししたいって」
「ふふ……承りました」
それだけ聞くと、キッカはすぅ、と寝入ってしまった。
シャオレイは暫く、そんなキッカを見つめていたが、不意に振り返り、「ルカさんはどちらにいらっしゃいますか」と、ディスカードに尋ねた。
「なんで急にその気になったのか聞いても?」
「心配していた問題が解決して、気分がいいものですから」
シャオレイはケロリと答えたが、それだけじゃないだろう。
ディスカードは思った。まあ、答えてはくれなそうだが。
「……ワタシの、見込み違いだったようですわ」
部屋の扉に手を掛けながら、ぼそりと、シャオレイが呟くのが聞こえた。
聞こえなかったふりをする筋合いもないので、聞き返す。
「なんて?」
「いえ……磨かれようによってはなんて、わかったようなことを……キッカさんはもう既に、常人の手に余るお方ですのに」
「へ?」
突然なんの話? と首を傾げ、一瞬置いて思い出した。
キッカが逸材とかなんとか、以前、彼女は言っていた気がする。
情報を抜き出すためのおためごかしと思っていたが、少しは本心もあったのだろうか。
シャオレイはにっこり微笑み、こちらを振り返った。
「もし妹君が困るようなことがありましたら、是非仰ってくださいまし? うちでお世話してさしあげますわ」
「いや売れないでしょ」
「春を鬻ぐだけが女の強さじゃありませんもの。それに、アナタだって……」
シャオレイは言いかけて、唇を上げるだけに留めた。
ギィ、バタン。
閉じた扉に、ディスカードは乾いた笑いを漏らす。
「……ハハ。冗談キツイ」
一体どこから見ていたのだろう。
うちの妹を高級娼婦にでもする気だろうか。何が琴線に触れたのだ。
脳裏に赤い腔内が過り、ディスカードは慌てて頭を振った。
#
ふっ──と意識が浮上する。
そこからの覚醒は、いつもあっという間だ。
今日は特に、見覚えのない部屋が目に入ったせいか、急速に頭が冴えていった。
「……起きました?」
隣から声がした。
続けて、「大丈夫ですか?」と同じ声が尋ねる。
キッカは状況を思い出して、頷いた。
身体の方は、随分マシになったようだ。
「怪我はされていませんか?」
「見ての通り、無傷ですわぁ」
「でも、帰ってきてからぐったりされていたので……」
「ほら、キッカか弱いからぁ──」
言いかけて、ジト目で見られて言葉を呑んだ。
まあ、彼女にはもう、誤魔化しても仕方ないだろう。
「……か弱いから、魔力で色々補うんだけど。風属性って、魔力を許容以上に使うと、身体に熱が籠もるから。それで、ちょっと熱が上がってたの」
風邪ではないので、すぐ治まる。
ただ、その状態が続くと、頭は働かないし、身体機能も落ちる。良いことはない。
まあ、今回はほんの一瞬、いつもより多く魔力を使っただけなので、大した問題はないだろう。
(でも、思ったより早かったな)
それは、キッカにとっては良いことなのだが。
鍛えれば、魔力の許容量は増える。しかし、鍛えようとしていない今、以前に比べ、随分限界が早い。スポーツ・デイの時も、試合後、暑くてしょうがなかったが、アレもやはり魔力の使い過ぎだったのだろう。
昔は、魔術師にあちこち凍らせてもらうなどして凌いでいたが、今はそれもできないため、使わないのが一番である。そもそも使う予定もない。
(そう考えると、あの賊もよく一撃食らって立ってられたな……)
我ながら結構本気で殴ったというわけだ。魔力が衰退していると聞いたから、学園の人間が異常なだけかと思っていたが──レックスやディスカードなどが異常の例だ──いつの時代も、強い人間は強い。そりゃそうか。
コンコン──
沈黙の隙間にノックの音が響いて、ジゼルとキッカは顔を見合わせた。
続けて、「キッカさん」と、扉を挟んで声がする。
「ルカ様」「ルカくん」
知った声に、二人は応えた。
ジゼルがいそいそと扉を開けに行く。なんだかんだ仲良しだよな、とキッカはその背を見送った。
開いた扉を見ると、ルカの背後に、ディスカードとレックスも立っていた。
「──申し訳ありませんでした」
部屋に入るなり早々、ルカは深々と頭を下げた。
「僕が考えなしに飛び出してしまったせいで、キッカさんを……ジゼルさんも、危ない目に合わせてしまって」
「本当です。無責任に危険へ突っ込んでいくその性格、どうにかして下さい」
「えぇ……」
謝罪に対してバッサリ切り捨てるジゼルに、キッカはちょっと引いた声を出した。
己の主に対して随分な言いようだ。しかし、見上げた彼女の瞳には、「仕方のない人ですね」というような、諦めと親しみが浮かんでいて、この二人にはこの二人なりの信頼関係があるのだろうと口を噤んだ。
まあでも、流れで許したりしないのはキッカも同じだ。
「ふえぇえ……怖かったよぉ……」
今度はジゼルがちょっと引いた顔でこちらを見たが、気にしない。
本来は、こっちがほんとうなのである。
ルカが悲壮な表情で、また頭を下げた。
「本当に申し訳ありません……今後は、何があっても、キッカさんたちを巻き込まないよう、立ち振舞うと約束します……許していただく必要もありません」
真剣な顔で謝罪をするルカに、キッカは、顔を覆った両手の下で、目を細めた。
この男、根本的な問題を分かっていない気がする。
ふと視線を上げると、案の定ジゼルが鼻に皺を寄せ、殺気立っていた。
またもキッカは開きかけていた口を噤む。
「アナタは……」
ああ、これは爆発するな、と思っていたら、案の定である。
「巻き込む巻き込まないの話ではないでしょう!」と、部屋に怒声が響いた。
視線をずらすと、ディスカードも呆れ顔でルカを見ている。
この男も人の気持ちがわかるのか、と思いポケっと眺めていると、目が合って、なんでか直ぐに逸らされた。
「反省してると思ったら、そんなことを考えていたのですか!?」
ジゼルが更に声を荒らげた。
わりと常にツンケンしているジゼルだが、ここまで感情を顕にするのは初めて見る。
それに対し、ルカは驚いた顔をしているが、やはり何について怒られているのかよくわかっていないようだ。そりゃ怒られる。
「あなたが一人危険に飛びこんで、何かあったら、残された人間の気持ちは──ッ」
ハッ、とした顔をして、ジゼルは突然口を噤んだ。
キッカは首を傾げる。
関係は主従だろうが、ルカは、彼自身について何を言われても怒りそうにない男だ。ディスカードと喧嘩になっていないのが良い証拠だろう。特に、今回のように、本気で心配している人間の言葉なら尚更。
だから、そこまで言ったなら、もう全部吐き出してしまったほうがいいのではないかと思うが。
しかし、ジゼルは気まずそうにして、後の言葉を続けなかった。
ただ一言、「──アナタの目的を、お忘れなきよう」と、呟きを残して、キッカの後ろに下がってしまった。
「……はい。不安にさせてしまい、申し訳ありません」
必ず、目的は果たします。
ルカは、ジゼルに微笑みかけた。
ジゼルの気持ちが正しく伝わっているか、いまいち疑わしい笑みであった。
(……まあ、いいか)
些か不完全燃焼な感は否めないが、ジゼルの剣幕に、文句を言う気も削がれた。
それに、人攫いに遭ったおかげで、当初の目的には近づけそうなのだ。結果オーライである。
「てかキッカちゃんも、なんでルカくん置いて逃げなかったのって話だしね」
「え、」
ディスカードが突然キッカに水を向けた。
曰く──「ジゼルさんはともかく、キッカちゃんはルカくんがどうなろうが関係ないでしょ」とのこと。
拙い。さっきから珍しく黙っているので、この一件に関しては、彼の中でもう納得がいったものと思っていた。そんなことなかったらしい。
「随分仲良くなったみたいだね〜」
まったく祝福してなさそうな表情で、ディスカードが言う。
まあ不自然だろう。
教会に行くところまでは本気で嫌がっていたのに、それからは、なんだかんだ協力しているわけだから。
ただ、その理由をディスカードに言ったところで信じないだろうし、信じたとて、何かの実験体にされそうだ。
そもそも言う気はないし、言いたくもない。
「……だって。暗いとこで一人こわかったんですわぁ〜!」
キッカはいつも通り、誤魔化すことを選んだ。
チラ、とジゼルを見ると、若干眉を顰めているが、口を開く気配はない。
ディスカードに対する好感度の低さが、ここへ来て良い方向に転んだようだ。
「ほんとに〜? ロイくんに続いてルカくんって、あからさま過ぎるんじゃな〜い?」
「? 何がですのぉ?」
「いやキッカちゃんの王子様狙いの話」
ディスカードに言われて、キッカはうーん、と頭を捻った。
まあ確かに、王子様という言葉には一等強く惹かれるが。
それは恋物語の王子様みたいに、強く優しくカッコイイ人という意味であり、か弱いキッカを守ってくれる騎士ならば、あまり立場に拘りはない。
「……あれ? レックス様に続いて、って」
「王子様だからロイくんに求婚したんじゃないの? 顔か」
「アラン王子様みたいだな、とは思っていましたけど……」
──……?
「えっ!? つ、つまりアラン様は本当に王子様……?」
「うん……? アランではないけど、俺のことなら、そうだよ?」
レックスを見ると、ニコリと答えが返ってきた。
キッカは「はわわ」と声を上げる。
今更!? とディスカードが驚いた。
「け、結婚してください!」
キッカは、胸の前で手を組み、恋する乙女のポーズでレックスに詰め寄った。
「ごめんね」
「そんな……!」
レックスは眉を下げ、困った顔で返した。
速攻振られてやんの、とディスカードが嘲笑う。
腹は立つが、おかげで先程の質問に関しては有耶無耶に出来たらしい。というか、そもそも揶揄うために話題に出しただけで、大した興味はなかったのかもしれない。
「てかロイくん婚約者いるからね」
「まあ……!」
キッカは顔を覆って嘆いた。
一大事である。好きな人が王子様で、しかし王子様には親に決められた許嫁がいるため、決して自分とは結ばれない。
そんな、そんなの──
(──なんッて恋物語の悲劇のヒロインそのものなのかしら!?)
振られたというのに、キッカの目は爛々と輝いていた。
ディスカードは、「コイツちゃんと理解できてるのか?」と、怪訝そうに眉を顰める。
しかし、キッカは振られた事実より、恋愛小説のシチェーションそのものをやっている己に陶酔しているため気づかない。
「あの……」
「いいのですわアラン様!」
「? ええと、レックスだけど……」
「キッカは、キッカはアラン様のために、枕を涙で濡らしながらも身を引きますわ……!」
「レックスだって言ってるじゃん。しかもめちゃくちゃ同情誘うし」
「アラン様の幸せをいつも遠くから祈っておりますわ……! 窓辺でなんか星とか見上げながら……!」
「なんでそんな具体的なの」
てゆーか人の話聞いちゃいねえな、とディスカードが呆れた声を上げるが、キッカの耳には届かない。
キッカは初めての失恋にドキドキしながら、「次の恋を探しますわ……!」と、宣言するのだった。
ただ、キッカの奇行のおかげで、ルカとジゼルのやり取り後の、微妙な緊張感は霧散した。
皆が各々、好きな場所に落ち着いて、まあここからが本題である。
ルカやレックスはともかく、ディスカードが、心配だけでキッカを訪ねて来るはずないのだから。




