表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生した魔王殺しの騎士は、か弱いプリンセスに憧れる  作者: 陽譚子
【第二章:砂城の約束 前編】
34/74

砂中偶語7





 ピタリと当たる背後の気配には、不思議と、体温のようなものを感じなかった。



「アナタはとても賢い子ですね。それとも、ご両親の教育が素晴らしいのでしょうか?」

「なんのお話かしらぁ……?」

「発言に無駄がありません」


 思い当たるフシがあって、咄嗟に言葉が出ない。

 他国から来たと伝えたのも、親が要人だと伝えたのも、此処に来ることを伝えて来たと言ったのも──別に、なんら強制力のある言葉ではない。

 けれど、ほんの少し──それこそ、()()()()()()()()()()()()()、そんな相手を、多少は生かす方へ傾かせることができるのではないかと、口にした言葉だ。


(でも、それを指摘するということは──)


「ッ……!」


 スカートの下で、何かが蠢いた。

 キッカは、咄嗟に布を蹴る。


「勿論、あなたのような幼い少女に、邪心があるとは思っていませんよ。ただ、教会は今、()()()()()ですので……必要以上に神経を尖らせてしまうことを、ご容赦ください」


 男は、変わらぬ調子で言葉を続けた。

 どうやら、気づかれてはいないようだ。キッカはそっと、安堵の息を吐く。


(……スライムが沸き立ってる)


 キッカの緊張に、戦場の気配でも感じたのだろうか。

 スライムからは、高揚に似た感情が伝わってきた。


 昔から、武器に形を変えているとき、スライムの機嫌は良い。

 それもそのはず。戦闘中は、常に魔力を流しっぱなしにしていたし、そもそも、武器というのは、敵の身を喰らうためにあるわけで──

 つまり、スライムにとっては、食事の時間なのだ。

 だからスライムは、殺しの道具になるのが好きだった。

 今のキッカには縁遠い──縁遠くなくては困る話だが。


「……ふぇぇ〜ん」


 男が何を考えているのかわからないので、キッカは取り敢えず、メソメソして様子を見ることにした。


「わ、わたくし、邪心なんてありませんわぁ……!」

「おやおや。そう怯えないでください。なにも、怖いことをしようわけじゃあありませんから」


 怯えて震える様子を見せると、男はキッカの手を放し、その背中から、一歩離れた。

 ひとまずの開放に胸を撫で下ろし、キッカは男を振り返る。


「いったい、何をするつもりですのぉ……?」

「野蛮なことをするつもりはないです。ただ、悪心がないという、ちょっとした証を立てていただければ……なにも特別なことをするわけではありませんよ」

「……どうすればいいんですのぉ?」

「いくつか、質問に答えていただけますか?」

「…………」


 質問の内容によるが。


(──とは、言える雰囲気じゃないな……)

 問答自体は、そう手間でもない。

 問題は、目の前の男が、真っ当な教会の人間なのかどうかという話だ。


「……わかりましたわぁ」


 とはいえ、逆らうのも得策でないだろう。

 キッカは素直に頷いた。

 非戦闘を貫きたいのなら、ある程度従順に振る舞う方が、相手の考えも良くない方へ傾きにくい。

 ルカを襲った連中のように、あからさまに魔物じみた様子は無いし……まあ、不審な魔力と、今の状況だけで、十分怪しいのだが。


「それは良かった! では、アナタはこの教会をどう思います?」

「え? あ……えっと。広くて、歴史があって、綺麗だなあ……と」

「楽しんでいただけましたか?」

「あ、はい」

「ここの祭神は、古き信仰に則って水の女神ですが、この国では、闘いの女神も兼任しているんですよ。ホールの正面に、朝焼けを背に剣を掲げる女神の絵があるのは御覧になりましたか?」

「ちょぉ〜っと、よく見てなかったですわぁ〜…」


 見てないというか、不法侵入したので、ホールの正面は通っていない。


 男のそれは、質問というより、ただの雑談だった。

 身構えていたキッカは、若干拍子抜けした気分になる。

 しかし、矢継ぎ早に繰り出されるので、あまり考える時間は与えられない。

 困惑しているうちに、奇妙な問答は進んでいった。


「あなたは神をどう思いますか?」

「どう? 特には……」

「なんとも?」

「えー…うーん……人によっては、特別大事なもので、良いものだと思いますわぁ」

「良いものですか」

「まあ……信仰があったほうが、何かと救われるんじゃないでしょうか?」

「そうですか。では、最後に──」


 首を掴まれた。


「…………」


 ドクリと、耳元で血流の音がした。

 キッカは、静かに息を呑む。

 絞められた訳ではない。触れる程度の力加減に、苦しさもない。

 ただ、動脈の上を這うヒンヤリとした指に、背筋がぞわりと粟立った。

 思わず眉を顰め、顔を上げる。

 男の瞳孔が一瞬、蛇のように、縦に裂けて見えた。


 ──キッカは、己の軽率を後悔した。


「アナタは、この教会を信仰していますか?」

「──……」


 男の口調は、相変わらず穏やかだ。

 沈黙がしんと、針のように突き刺さり、声を出すために喉を開くのさえ、多大な緊張を伴う。

 ──クロだ。絶対クロだ、コイツ。

 けれど、何を考えているのか解らない。


 キッカの頭は、久々に活発な動きをみせていた。

 男の手が、ピクリと僅かに動く。

 キッカはそれを見て、半ば賭けのような気持ちで、口を開いた。


「さあ、どうでしょう〜?」

「……なるほど。そうですか」


 上からニコリと笑顔が降って、一瞬の沈黙の後、スルリと動脈をひと撫でし、男の手は首から離れていった。

 そして一歩、キッカ自身からも離れた。

 ──賭けには勝ったらしい。


「え、キッ、なにしてんの!?」

 

 同時に、男の後ろから、知った声が聞こえた。

 キッカは脇目も振らず、そちらに駆け寄った。

 男がそれを引き留めることはなかった。



「お兄さまぁ〜! 迎えに来てくださったんですのねえ〜!」



 ──男も気づいていたのだろう。

 キッカが考えを巡らせていたせいもあるだろうが、恐らく、こちらより先に気づいていた。

 二人の気配が近くにあるとわかって、キッカは答えを誤魔化した。

 しかし、そんなこと気にせず首をへし折ってくる可能性もあったので、正直賭けであった。

 流石に、力を籠められれば、魔力を使って防御したが。


 視線だけで振り返ると、男は「お迎えが来たようで何よりです」と、好々爺とした顔で微笑った。

 そうして、返事も待たず、キッカが出ようとしていた扉から、あっさり立ち去っていった。


「…………」


 ディスカード達にも、何か探りを入れるものと思ったが──

 まあ、こちらとしては有り難いので、何も言うまい。


「……いや、なんでいるの?」

「えぇ〜…とぉ……ルカくんが心配してたから、キッカが迎えに来たのぉ!」

「うわぁ余計なお世話」


 腹立たしいがその通りである。


「さっきのは……まーいいや。とりあえず、用は済んだから、もーサッサと出るよ」


 キッカが何をしていても、己に害がなければ大した興味もないのだろう。

 軽くあしわれたことに、普段なら腹を立てるところだが、今日ばかりは安堵が(まさ)った。


(……思った以上に、緊張してたのか)

 

 キッカはそっと、己の首を擦った。

 正面から出られるか、少し不安だったが、ディスカードの背に隠れるように進めば、特に指摘はされなかった。

 やはり警備というのは、出る者より、入る者に厳しく出来ているのだろう。





#





 どうやら事態は、想像以上に悪かったらしい。


「魔物には会わなかったけど、教会の地下に召喚陣(ゲート)があったよ──軽く五十はあったかな?」


 ディスカードの言葉に、部屋の空気がピシリと固まった。

 どこに繋がっているのか、考えたくない規模である。

 しかしこれで、魔物の被害が急増している話に関しては、原因が解ったのじゃなかろうか。

 それをどうにか出来るかどうかは、また別の話だが。


「……証拠は、」


 ルカは一瞬、呆気にとられた様子だったが、すぐに正気を取り戻し、ディスカードに問いかけた。

 それを受けて、ディスカードは懐から、掌ほどの何かを取り出す。


「そこんとこは抜かりないよ」


 出てきたのは、持ち手のない、シンプルな円形の手鏡だった。


「それは……魔道具ですか?」


 ルカが気づくのも当然で、それは、ありふれた投影魔道具(ファクシミレ)だった。

 町民が個人で所有するには少々値が張るが、貴族でなくとも、そこそこ裕福な人間なら、容易に手に入る魔道具である。


「うん。まあ、ちょっと細工はしてるけど。市場でも流通してる、安価な魔道具だよ」


 見慣れたもののほうが信用出来るでしょ、とディスカードが答える。

 おそらくそこに、教会内部の映像を収めているのだろう。

 ルカもそれを察したようで、ほ、っと息を吐いた。


「助かります……本当に、この御恩は決して忘れません」

「助けちゃいないよ」


 ディスカードは掌にあった手鏡を、スッと懐に戻した。


「情報交換って話だよね。結局コレ、何に使うの?」

「ああ……反乱軍(テロリスト)に渡しに行きます」

「は?」


 ディスカードが怪訝な顔をした。


「……ふぅん。そりゃ想定外」

「まるで何かを想定していた様な言い方ですね」

「ジゼルさんてば、ボクのことどんだけ適当な奴と思ってるわけぇ〜?」


 ジゼルが毒を吐くのに、ディスカードがオーバーな悲嘆のジェスチャで返した。


「いやぁボクはてっきり、その情報を持って、王城にでも上がるつもりなのかと思ってたけどね」


 キッカは特に、ルカの目的について考えちゃいなかったが、確かにそちらのほうが辻褄が合う。

 ルカに力がないのなら、国に頼んで討伐してもらうのが一番手っ取り早いだろう。


「まあ……はい。そうですね。勿論、最終的にはそうしたいですが」


 ルカは、困った顔で呟いた。


「そう単純にはいかないのです」





 ──サーリヤ王国の内乱。

 そもそも、それが何を端緒に起こったものかというと、それは魔物の跳梁に他ならない。

 今、サーリヤ内には他国と比べ、不自然に多く魔物が出没している。

 これは、何年も前から起こっていることだった。

 初めは、『今年は多いな』くらいの違和感であったのが、じわりじわりと数を上げ、気づけば国は、多くの被害を被っていた。

 村が魔物に荒らされれば、作物は取れず、民は飢える。職を失った村民は大きな町を訪ねるが、それも増えれば、あぶれた人間は行く宛もなく浮浪者となり、貧民窟を作る。

 犯罪は増え、治安は悪化し、流通は滞り、そして被害が増えていく。

 このように、治安は悪化の一途を辿った。


「教会は、行く宛の無いものを受け入れますが、さすがに限度がありますから。寧ろ、ここ最近は役割以上の負担を強いており、王侯貴族は教会に負い目を感じていました」


 ──が、

 ルカは言葉を濁した。

 それもそのはず。今日の話で、それがマッチポンプであったと分かってしまったのだ。


「勿論、国も手を拱いて魔物の蛮行を見守っていたわけではありません」


 自国の兵ではどうにもならないと悟った王は、早い段階で《ミスティリオン聖教国》に救援を仰いだ。

 現在の宗主国なのだから、自然な流れだ。

 無償(タダ)とはいかなかったが、王は大枚を叩いてでも民の安寧、ひいては国の治安を優先した。

 そうして、ミスティリオンの騎士たちは、魔物を討った。


「──……筈でした」


 そうはならなかった。

 今なら原因がわかる。殺しても殺しても、どこからともなく魔物の湧き出る陣があれば、焼け石に水である。

 けれど、その時は原因がわからなかった。

 ミスティリオンに訴えても、依頼はこなしたとばかりで取り合ってくれない。

 実際、ミスティリオンの言葉に嘘はなかった。

 依頼された魔物は、全て殲滅したのだから。

 そも宗主国と属国で言い合ったところで、勝ち目がないのは明白だった。

 王は結局、自国の兵で防衛にあたるしかなく、ミスティリオンへの依頼も、振り返れば悪手である。最終的に、民の税を引き上げ、警備を維持する以外になくなった。



「民からすれば、魔物の被害に喘ぐ民衆を前に、重税を課す王というわけで……」

「なるほど。それでテロリストね」

「はい。まあ、彼等は基本的に一般市民を傷つけないので、暴力組織(テロリスト)というより、自警組織(レジスタンス)と言うのが正しいでしょうか……国民の支持もありますし、」

「どっちもやることに大した変わりはないでしょ。暴動が起きれば人は死ぬんだ。で、ルカくんはその連中を止めるために、コレを持って行くって?」


 そう簡単に上手くいくかなぁ、とディスカードが鏡をチラつかせながら揶揄する。

 確かに、勢いばかりの計画な気がする。

 一般市民を傷つけない噂が本当かどうかもわからないし、本当だとして、いち市民の話を、そう簡単に信じてもらえるとも思えない。

 そもそもルカは、既に魔物から狙われているのだ。

 反乱軍まで辿り着くまでに、誰に殺されないとも知れない身だ。


「……己に相応しくない大役であることは、重々承知です」


 それでも僕は、僕にできる最善を、尽くすと決めています。

 そう、ルカはディスカードの揶揄に動じることなく、笑顔で言ってのけた。

 ディスカードは、それを見て毒気を抜かれたのか、呆れたように肩を竦めて、椅子の背に沈んだ。


「はぁ〜あ……ま、好きにすればいいけど……」


 ボクにカンケーないし、と言いながら、ディスカードら鏡を宙に放る。

 ルカが慌ててそれをキャッチした。


「でも、まっさか水面下でこんなことになってるとはねぇ〜。数年前から、魔物の動きが活発になってる気はしたけど……ここまで大掛かりな《悪意》は、今回、初めてだよ」

「暫くサーリヤ付近には近寄らないことをお勧めします」

「言われなくても」


 内容のわりに、軽い調子で談笑している二人だが、傍らのジゼルは涼しい顔をしながら、白くなるほど強く、拳を握っている。

 こちらが普通の反応だろう。キッカとしてはその拳、次兄に奮ってもらう分には大歓迎だ。



「──本当に、危ない状況なんだね」


 レックスが、誰にともなく呟いた。

 今の今まで沈黙を貫いてきた彼が、突然口を開いたことで、部屋の視線が集中する。


「なぁにロイくん、正義感でも刺激されたぁ? ボク、これ以上関わるつもりないんだけど」

「いや……俺にとっても、もう、関係ないから」

「もう、って……あ、《カターリナ》か」


 ディスカードが、得心がいったように頷く。

 それを聞いていたルカが、ふ、と顔を上げた。


「《カターリナ》……?」

「ああ、そういえばこないだは、みんなまとめて隣国から来たって紹介したんだっけ?」


 カターリナで初めて会った時の話だろう。

 その時は、ここまで深く関わることになるとは思っていなかったので、素性も暈して話していたのだった。


「実は彼、カターリナの出身でね。キミにとっては、かつての宗主国の住人ってワケ」

「……なるほど、そうでしたか」


 それは確かに、もう、関係ないですね──

 そう答えたルカの声が、いやに部屋に響いた。

 キッカたち三人は、思わず怪訝な顔をする。

 というのも、ルカの声色はまるで、教会が魔物に巣食われていると知った時以上に悲愴な響きであったのだ。


「ええと……カターリナが、なんの話ですのぉ?」

「キッカちゃんて、ホ〜ントなんにも知らないよねえ……元々、《サーリヤ》は《カターリナ》の属国……というか、同盟国みたいな扱いだったんだよ。彼方に何かあれば此方が助く、といった感じでね。それが、わりと最近ミスティリオンに降った。まあそうなった経緯は知らないけど……なんで?」

「さあ? 最近といっても、俺たちの代の話ではないからね」


 レックスは、さして興味もなさそうに答えた。


 先程から二人とも、故国が危機に瀕している人を前にしているとは思えない言動だが、キッカも人のことを言えないので口を噤む。

 キッカとて、他国の事情に深く首を突っ込むつもりはない。

 手を貸すつもりもなく、口ばかり同情的な態度をとったところで、ルカにとってはなんの慰めにもならないだろう。


 ルカは悪い人間ではない。

 寧ろ、見ず知らずのキッカを案じて動けるあたり、人の好い性格だろう。

 だから、目の前で死にそうになっていたら、流石に見捨てはしないし、先程だってルカを止めて、己で兄を探しに行った。

 でも殊更、助ける理由もない。


 キッカにとって一番大切なのは、今も昔も己である。

 今はそこに、『王子様に守られる可愛い女の子でありたい』という思いが加わったことで、力を遠ざけるようになったが、昔だって、自分の命を守るために力を手に入れたのだ。

 シュンの頃から、根本は変わっていない。

 そして己の次に大切なのは親しい人間だが、今は母と友を数えても、三人しか思い浮かばない。

 だからもし万が一、守ることを選ぶときが来たとして、それはこの三人以外にないだろう。


(……ただ、《サーリヤ》は、約束を守った)


 それだけが少し、胸に蟠りを残す。



「──モノ好きだね。キミがそこまでする必要ないじゃん? 王さまにリークして、報奨金でもせびって、ことが終わるまで傭兵雇って身を守ったほうが現実的でしょ?」


 ディスカードの冷めた声に、キッカはハッと我に返った。

 見ると、言われたルカが、何故か苦い顔をしている。

 

「それは、」

「英雄も真っ青な愛国心だよ」

「僕はそんな……大したものではありません」


 ──そうだろうか?

 キッカは正直、大したものだと思っていた。

 よほど正義感の塊でもなければ、たった一人で──ジゼルも入れれば二人だが──こんな危険な真似、しないだろう。


 ルカは暫し沈黙したあと、ふ、と肩の力を抜いた。


「……もう一つ、お話させてもらってもいいですか?」

「アレ? まだなんか隠してたの?」

「……お伝えすると、巻き込むことになってしまうと……でも、なんだが、謀っているようで落ち着きませんし、皆さんが今日知ってしまった事を考えれば、今更ですから」

「理解してくれたようで何よりだよ」


 ディスカードが尊大に頷いた。

 そりゃこの男は、危険から遠ざけるために情報を隠されるより、知ってはならない情報でも耳にしたい派だろう。

 ちなみにキッカは聞きたくない派だ。


「それに皆さん、どうやら、黎明の英雄に縁深い国の方々のようですし、同じ英雄を慕う民として、きちんと名乗らせていただくのが筋と思いまして」

「慕う……や、うん。ソーダネ」


 ディスカードが、なんとも微妙な返事をすると同時に、ジゼルから、「ルカ様!」と鋭い声が上がった。

 

「わあ。びっくりしました……」

「何を惚けたこと言ってるんです。この人たちを信用するおつもりですか?」

「信用というか……問題ないかなと。己のためと言ってはいても、僕たちの代わりに、危険な場所へ行ってくれたことに変わりありませんし……」



「……ん? 名乗る?」


 二人の遣り取りに、一拍遅れて、ディスカードが声を上げた。

 キッカも気づいた。

 つまり、ルカの隠し事は──



「改めて……私は名を、《ファルーク=サーリヤ》と申します」



 ディスカードの頬が引き攣る。

 レックスは、眉を顰めた。


「……もしかして、」

「おそらく、当たっていると思います。若輩ではありますが、サーリヤ王家十六代目の末の息子──」





 ──建国の王、《ファジュル=サーリヤ(暁を連れてくるもの)》の子孫です。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ