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第三十七話:合流

「僕は東条(とうじょう)、こっちの子が姫川(ひめかわ)さん、背の高いのが国吉(くによし)君」


 東条と名乗った、少年の声の男は簡単な自己紹介をした。


「俺は窪翔兵(くぼ しょうへい)。こっちの子はハーテ」


 ハーテは警戒して俺の後ろにいたが、俺が紹介したので前に出てきた。


「現地の子ね。どういう関係?」


 姫川と紹介された女の子が長い前髪ごしにこちらに問いかけてくる。軽い口調なので好奇心か何かで聞いているように思えた。


「旅の仲間で命の恩人です」


「ご、ご主人さま」


 命の恩人と言われたハーテが恐縮したようにうつむく。


「ふーん? そんな感じなんだ」


 姫川さんが面白いと言わんばかりにうなづいた。


「それで、なんて言いました? 『絶望勇者同盟』? どういう意味です?」


 俺は素直に聞いた。言葉の意味がわからなかった。


「どこがわからないのさ?」


 少年の声の東条はからかうような声で言った。


「勇者はわかるだろう? 世界の平和を脅かす悪を討つものを勇者っていうのさ」


「なるほど」


 頷いた。言われてみるとたしかにそういう意味があるような気がした。


「それで、絶望ってのは」


「言うまでもない、僕らはこの世界に来る前に、絶望を知ってるはずだろう?」


「ああ……」


 そうか、目の前にいる三人も、なにかしらの絶望を味わってここにいるのか。

 そう思うと親しみが湧くような気もしたが、同時に安心もできないと思った。

 月澤のことを思い出したのだ。

 彼は誤解かなにかで俺と敵対した。彼の攻撃的な性格は、もしかして彼が絶望を味わったことによるのかも知れないと思えたのだ。


「それで『絶望勇者』の『同盟』ってわけですか」


「そうさ、君も『絶望勇者』だろう? 日本語を話してる時点で間違いないと思うんだが」


「まあ……そうですが」


 俺は言いよどんだ。

 このあとの話の展開に、嫌なものを感じたからだ。

 多分、『チート能力』とやらの話になるんじゃないだろうか。


「なんで言いよどむんだい?」


「先にこっちから言っておくと、能力はもらってないです」


 後になって変な顔をされるのが嫌なので、俺は東条の問いかけにこちらから言った。


「は?」


 まあ、今変な顔をされるわけだが。

 東条だけではなく姫川さんもよほど非常識な人間を見たような顔になる。長身で坊主頭の国吉が無表情なのに少し救われたような気持ちになった。


「この世界に来る時、天使か妖精みたいな存在に……」


 おかしいだろう、と言わんばかりに詰め寄ってくる東条。


「会いましたよ。力をくれるとも言われたけど、欲しくなくて断ったんです」


「その代わりに何かをもらった?」


 姫川さんが不思議そうに俺に尋ねる。


「いいえ、何も」


 やっぱりこういうやり取りは避けて通れないのかと思うとなんだかうんざりした。


「何でなんだぜ?」


 まだ理解できないと言う感じの東条。


「自分が努力して身につけた力以外を使って勝っても嬉しくないから」


 俺は説明する。どうしてみんなにはわからないんだろうと思いながら。


「いや、それじゃ……」


 絶句される。

 東条は助けを求めるように、彼の仲間を見た。

 姫川さんも何も言えずにいる。

 今まで無口だった国吉が口を開いた。


「なかなかの変わり者みたいだな」


「そうなんですかね」


 俺は反発はしないが、実際のところ、自分を変わり者だとは思っていない。普通の人間は、超常的な能力を与えると言われて、みんなが欲しがるものなのだろうか?


「い、今まで戦いは避けてきたのかい?」


「いや、それなりに戦ってきたつもりです。つい先日首を剣で刺されて死にかけましたが」


 東条の言葉に正直に答える。首に巻かれている包帯を指差しながら。


「ど、どうやって戦ったの? 剣を振り回して?」


 東条は俺が腰に()いている剣(砦で支給されたものだ)を見たのか、そんな事を聞く。


「この棒です。多少、使い方を習っていたので」


 右手の棒を軽く振ってみせる。


「棒……」


 あきれたような顔になる東条と姫川。国吉が無表情なのに救われる気がするが、彼も心のうちではこちらを変人だと思っているのかも知れない。


「まあ、とにかく」


 東条が咳払いをして話を再開した。


「僕たちは君を『勇者同盟』に加えるために来たんだ。一緒に来てくれるかな?」


 東条が僕に向けて右手を差し出した。

 握手に応じようとすると、


「でも待って、チート能力をもらってないとなると、戦力になるのかな?」


 姫川さんがそんな指摘をした。

 握手をしようと近づきかけたお互いの右手がピタッと止まる。


「まあいいさ」


 東条はそう言って、俺の右手を握った。


「せっかく君に会いにここまで来たんだ。一応、一緒に行こうぜ。来てくれるよな?」


「よろしくおねがいします」


 俺は彼と握手をかわした。

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