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第二十七話:激化する戦闘

「やべえ!」


 弓を持っていた傭兵が叫んだ。

 彼は急に正面に盾を構え、防御の姿勢を取る。


 事情は分からないながらも、緊張が走る。

 多くの兵士が彼にならって盾を構える。


 暗い夜空に、何かの気配があった。


 俺が何の対策も取れずにいるうちに、矢の雨が降ってきた。


「ぐわぁ!」


 何人かが矢を受けてうずくまる。


 盾を持てない俺は、矢が降り注ぐ間、自分に当たらないように祈るしか無かった。

 幸いにも一本の矢が俺の兜をかすめただけで済んだ。


「こいつは、俺らが撃った矢だ!」

 誰かが叫んだ。


「どういうことだ? こっちが撃った矢が、空中で向きを変えてこっちに来たっていうのか?」


「弓兵、撃つのをやめろ! 剣を抜け!」


 状況を受けて、大隊長が号令を出す。


「騎兵は突撃! 正面からぶつかるなよ! 歩兵隊との連携だ! 歩兵隊、距離を詰めろ!」


 命令を受けて俺たちは前進する。

 矢の雨にさらされた俺は、前回の戦いでは感じなかった恐怖を感じていた。

 大量の矢に襲われたとき、自分には防御手段がない。

 今になってその弱点を思い知らされたのだ。


「盾を持ってるやつの後ろに下がれ」


 テハクさんがアドバイスをくれた。


 見ると、テハクさん自身も、大きな盾を持った戦士の後ろに位置取りをしている。

 話を聞いて、別の戦士が、自分の後ろに来るように促してくれた。

 好意に甘えさせてもらうことにした。少しは矢の攻撃を防げるだろうと思うと、少し安心できた。

 だが実際にはその後は矢は飛んでこなかった。


 敵に向かって進み続けていくと、ようやく敵の姿がはっきりと見えてきた。

 それは、たしかにトカゲ兵士たちだった。だが、この前戦ったものと違い、みな四本の腕を持っていた。


「何だこいつら……」

 誰かの畏怖の声が聞こえた。

 想像上ではなく、目の前に四本腕の生き物がいるというのはすごく不気味だった。


 距離が縮まり、俺達と敵との戦いが始まった。


「ぎゃあああ!」


 悲鳴を上げて自分の前にいた仲間が斬り倒された。

 彼の生死や、ダメージの深さを気にかけている時間はなかった。

 敵は勢いを殺さずこちらに向けて斬撃を放つ。


 俺は、いつものように、攻撃を弾き次の瞬間に反撃を加える技で応じようとした、その時。

 戦慄を感じた。


 大上段からの斬撃から一瞬だけ遅れたタイミングで、側面からの攻撃が来ていた。

 敵の、上の右腕と、下の右腕による時間差攻撃!


 俺のいつもの技では、最初の攻撃を弾いて反撃できても、次の攻撃が防げない。

 慌てて体をよじるようにして、両方の攻撃をかわす。


 バランスを崩して転倒しそうになるのを耐えて、敵の方を見る。

 再び、二本の右腕による時間差攻撃が迫っていた。


 俺は両方の攻撃を棒で受けた。

 できれば、刃物の攻撃を棒で受けたくはなかった。

 棒は折れたりせずに耐えてくれたが、傷はついたはずだ。

 傷が付けば、扱いづらくなる。

 俺が身につけた棒術では頻繁に持つ位置を変えながら戦うので、できれば棒の表面はなめらかであって欲しいのだ。


 棒についた微妙な傷をチェックしていると、敵トカゲ兵士は下の右腕に持っていた剣を、下の左腕に持ち替えた。

 まずい、と直感する。


 次は、右と左から同時かそれに近いタイミングで攻撃がくるとなると、一本の棒では防ぎにくい。

 もう一度回避に専念するしか無いか、だが、それではこちらの攻撃の機会がまわってこない。

 ジリ貧の状態になるか。

 そう思っていると、


「どりゃあ!」


 自分の横で、テハクさんが気合の声をあげて敵を斬り倒していた。

 テハクさんはその四本腕のトカゲ兵士の体を、俺が対峙していた敵の方に蹴飛ばした。

 そこで俺に一瞬のチャンスが生まれる。


「せいやぁ!」


 リスクは承知、外したら自分がヤバいということを受け入れた上で、渾身の上段突きを放つ。

 やつは上の左腕で持っていた盾で受けようとするが、ギリギリのところでこちらのほうが早かった。

 棒がトカゲ兵士の喉元に突き刺さり、剣を振り上げていた腕の動きも止まった。


 このチャンスを逃すわけに行かない、すかさず上段打ちで頭を打つ。金属製の兜がガンッという音を鳴らす。

 更に上段の攻撃をお見舞いしようとするが、敵は盾で頭部を守る。

 中段を攻撃しようとするが相手の鎧が邪魔だ。

 棒で足払いを繰り出し、相手を転倒させることに成功、地に倒れた奴の喉元に体重をかけた突きを食らわせ、なんとか仕留めた。


 一息ついてあたりを見回す。

 敵の数はそれほど多くないのに、戦況は明らかに不利だった。

 すでに何人もの味方が倒れていた。

 今回の敵は強さが違っている。


 そう考えてから思い出したことがあった。

 今回襲ってきている敵の中には、『暗黒の王』か、もしくはその力をうけつぐ存在が居るのではなかったか。

 俺は、まだそいつと出会っていない。

 敵の一兵卒がいちいち強いのに、それ以上強い存在がこの中にいるのか。

 俺は生きて帰れるのかどうか、深刻に心配になった。

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