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第二十一話:大規模戦闘

 戦闘は次第に乱戦になってきていた。


 最初は、東側から来た敵を迎え撃つ形だったから、敵を迎え撃った俺達の隊から見ると、東の方に敵がいる、西の方に味方がいる、と言う形だった。


 けど、次第に敵と味方が入り乱れる乱戦になってきた。

 こうなると、どちらの方から攻撃が来るかわからない。

 戦闘の難易度がぐんと高くなる。


 必死で戦いながら、一人のトカゲ兵士に決定打となる突きをお見舞いしたところで、砦の方で大隊長が号令をかけているのに気づいた。


「歩兵第一隊! 傭兵隊! 退けー! 砦の側に戻れー!」


 撤退命令?

 俺は意外に感じた。

 そこまで戦況は悪かったのだろうか?

 まだ戦いは始まったばかりのように思っていた。


 号令を聞いた仲間たちが一斉に砦の方向に戻っていく。

 俺は少し遅れたが、皆に続いた。


 当然のことながら、今まで戦っていたトカゲ兵士たちと、トカゲ兵士が連れていた巨大トカゲは追ってくる。

 どうなるのかと思いながら逃げていると……。


 俺達から見て右斜め前と、左斜め前の方向から、沢山の矢が飛んだ。

 その位置にいた弓兵たちの攻撃だ。

 矢の飛んでいった方を見ると、矢の雨が何人かの敵兵を倒している瞬間が見えた。


「乱戦になると、弓兵たちが活躍しづらいからな」


 いつの間にか近くに来ていたテハクが、俺に説明してくれた。

 彼は剣を一振りして、付着した緑色の血を払っている。


「なるほど……」


 俺は感心した。

 大規模な人数の戦闘ってやつは、ただ単にあちこちで個人個人の戦闘が起きているだけのものでは無いということらしい。


「うちの大隊長はなかなか戦争が上手いんだぜ。見てな」


 テハクはトカゲ兵士たちを指差す。

 奴らは今、盾を正面に構えて密集し、ゆっくりとこちらに向けて進軍してきている。


 しかし、急にやつらの隊列が乱れだした。


「回り込んだこっちの騎兵が奴らの後ろから攻撃したんだな。奴ら大混乱だぜ」


 テハクが言ったのと同時ぐらいに、大隊長の号令がかる。


「一気に決めるぞ! 第一隊、傭兵隊! 突撃!」


 みんなに合わせて、俺も雄叫びを上げ、突撃を開始する仲間に続いた。


 戦いはこちら側にだいぶ有利になっていた。


 敵の本体は、騎兵隊と俺たちの隊の挟み撃ちにあってどんどん数を減らしていった。


 挟み撃ちから逃げようとする敵兵は、弓兵の攻撃にあって更に数を減らした。


 敵のトカゲ兵士が連れていた巨大トカゲは、指示を与えるものを失って戦意を喪失しているようだった。


 もはやこちらの勝利は間違いない。


「我らの勝利だー! 無理に深追いするなー!」


 大隊長の号令が聞こえる。


 もう終わりか、意外とあっけなかったなと思ったとき、一匹のトカゲ兵士がこちらに向かってきた。


 こいつだけ片付けておくか。


 そう思い、こちらから上段打ちをしかける。

 意外なことに、奴はその攻撃を、剣で受け止めた。

 やるじゃないか、心のなかでそう思って、今度は中段突きを放つ。

 ところが、その攻撃も剣で弾かれた。

 こいつ、強いな。

 俺は少し焦りを感じた。


 俺は相手の攻撃を待った。

 相手の攻撃を弾いて、すかさず反撃する得意のパターンに持ち込む作戦だ。


 果たして、奴はこちらの誘いに乗った。

 素早い上段からの斬撃が来る。

 あやうく反応しきれない速さだった。

 なんとか弾いて、反撃を叩き込む。クリーンヒット。

 そこからの連続攻撃で、どうにかやつを倒すことができた。


 さて引き返そうかと思ったとき、左脇腹に違和感を感じた。

 見ると。

 分厚い革の衣服を貫き、一本の矢が突き刺さっていた。


「ぐっ……!」


 苦痛にうめき声が漏れた。


 矢が飛んできたほうを見ると、別のトカゲ兵士がクロスボウを放り捨てて、逃げていくところだった。退却前に最後の攻撃をしていったところらしい。


 あたりを見回したところ、敵はすべて退却していくところで、これ以上の追撃は来ないようだった。


 その意味ではラッキーだった。

 苦痛で体が思うように動かせない。

 これが戦闘のさなかだったら、遅い来る敵の攻撃をしのげず、死んでいただろう。

 俺ははどうにか砦の中に逃げ込んだ。

 背後で、重い音を立てて扉が閉まった。

 なんとか死なずに済んだようだ。


 その後、他の負傷したものと一緒に治療を受けた。

 刺さっていた矢を抜いてもらうときが一番痛かった。


「内臓まではやられてない、かすり傷だぞ。傷が早く塞がる薬をもらって、しばらく休んでおくんだな」


 砦の軍医は俺にそっけなくそう告げて、次の負傷兵の治療に向かっていった。


 これが、戦争に参加するってことか。

 ベッドに横になりながら、俺は考えていた。


 自分の果たしている役割は、完全に、ただの一人の兵士のものだった。

 これが、『暗黒の王』を倒す英雄になる日は、どうすれば来るのだろうか?

 考えておかなければいけないことだと思った。




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