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第二十話:砦の戦闘

 その後、俺は、グラウンドのような場所に連れて行かれ、体力テストみたいなことをさせられた。

 走るタイムを測られたり、バーベル状のものを持ち上げるテストだったり。


 実はあまり体力などに自信はなかった。

 棒術を教わっていたとは言え、それ以外は、わりと平凡な男子高校生だった俺だから、別に学校一の身体能力を持っていたとかそういう事はない。


 けど、結果的に、この砦で戦いに参加する傭兵としての基準には届いたらしい。

 俺は防具を支給され、この砦の戦力の一員として数えられるようになった。


 ハーテを連れてきていたことはそれほど問題にならなさそうだった。

 ここは戦場に近い場所であるとは言え、ここにいる人のすべてが戦闘要員ではなく、日常的な仕事の手伝いをする人材も必要だったらしい。


 かくして、俺とハーテは、当面この砦で生活することになった。


 俺は兵士や、この砦で雇用されている傭兵たちと、訓練に明け暮れる日々を開始した。


 ハーテは食事を作るだとか洗濯だとかの生活を支える仕事を手伝っているとのことだった。


「最初は心配だったけど、一緒に働く人に良くしてもらってます」


 そうハーテは言っていた。


 それから何日かが過ぎた。

 午前中の訓練を終え、兵士・傭兵たちと昼食をとっている時に突如、カンカンカンと言う鐘の音が鳴り響いた。


「来やがったか!」


「いっちょやってやりますか」


「ぶっ潰してやるぜ!」


 兵士、傭兵たちが口々に声を出し、立ち上がる。


「まだ食べ始めたばっかりなのにな」


 俺は愚痴をこぼした。


「戦いに赴く時は、空腹な方がよく戦えるぜ」


 この何日間で親しくなった若い傭兵、テハクが言った。

 面長の顔立ちの、背の高い男だ。両手でも片手でも扱える西洋剣で戦う人だ。


「そんなもんですか」


「ああ、たらふく食った後だと、体が重いからな」


「なるほど」


 そんな会話をしながら、俺は他の戦闘要員とともに持ち場に移動する。

 俺の担当は、敵が攻めてくるのを正面から迎え撃つ隊だ。


 やがて、門が開かれ、俺達は戦場に出た。

 荒野に、敵の軍勢が見えた。


 俺がかつて村で戦った4メートルぐらいのトカゲの怪物が沢山。

 それと、鎧兜で武装した人間型の兵士たち。


「あの鎧とか着てるのが、トカゲ人間なんですね」


 俺は確認した。


「ああ、人間じゃないぜ、思う存分ぶっ殺して大丈夫」


 隣にいるテハクが答えてくれた。


「了解」


 砦の上の方で、「撃てーっ」と言う号令が聞こえた。

 ダダダダダッ! という感じの射撃音が、いくつも聞こえた。

 この砦に配備されている、連射式の(いしゆみ)だ。

 一撃喰らえば人間が即死する大きさの矢を、連射する恐ろしい兵器だ。

 ただし巻き上げに時間や労力がかかるので、開戦時にしか使えないらしい。


 沢山の矢が敵兵たちに吸い込まれるように飛んでいき、幾人かの敵兵を倒したり、ダメージを与えたりしたようだ。

 ただ、鎧や盾に弾かれたものも多かったように見えた。


「撃てって命令早かったんじゃないか?」


 テハクがぼやくように言った。


「そうなんですか?」


「ああ、俺ならもっとひきつけてから撃ったね。そのほうが効いたはずだ。」


「来るぞ! 歩兵隊第一及び傭兵隊、突撃!」


 後ろから隊長の声が聞こえた。


「うおおおおお!」


 雄叫びを上げて、みんなが走り出す。

 俺は一瞬遅れたが、あとに続いた。


「弓兵、射撃開始! 味方に当てるなよ! 騎兵、作戦通り、右側面から敵後方を狙え!」


 後ろで隊長が各隊に支持を出していたが、もうそれを気にしている時間はなかった。


 目の前で、戦闘が開始されていた。

 俺も手近にいる武装したトカゲ人間に対峙し、棒を構えた。


 近づいてみれば敵が人間でないのは一目瞭然だった。

 人間のように直立歩行してはいるが、頭はトカゲのそれだし、長い尻尾があった。


 棒を構える俺を見て、そのトカゲ兵士は警戒するような雰囲気を見せたが、やがて手に持った剣で斬りかかってきた。


 俺は慎重に、その攻撃を棒で弾く。

 あえてまだ、弾いた直後に攻撃する技は見せない。


 トカゲ兵士は先が割れた長い舌をチョロチョロと見せて、それからさっきとは違う方向から斬りかかってきた。


 行ける。

 今度はさっきよりやりやすい。


 攻撃を棒の端で弾き、半回転させた棒の反対側で相手の頭部を打つ。

 金属製の兜がガイーンと鳴った。

 よろめいた所に上段突きをアゴの辺りに叩き込む。

 確かな手応えがあった。


 奴は膝をついたが、まだ戦闘不能にはなっていないようだ。

 中段突きを、鎧が薄い首元あたりにお見舞いした。

 やつはバタリと倒れた。


 そうやって戦ってる間に、右でも左でも戦いが進展している。

 右側でテハクが、トカゲ兵士の首を()ねていた。

 すごい威力だな、と彼の長い剣を扱う技術に感心した。


 左側では別の傭兵と、トカゲ兵士が何合も打ちあっていた。


 まだ、この戦闘は始まったばかりだ。

 俺は気を引き締め、左側の戦闘に加勢することにした。


 傭兵とトカゲ兵士の剣が空中でガキンとぶつかったタイミングで、俺はトカゲ兵士の頭部に上段打ちをお見舞いした。


 よろめくトカゲ兵士。

 その隙を逃さず傭兵がトカゲ兵士の首元に深く剣を刺した。


 俺とその傭兵は、おのおの次の敵を探して動き出す。

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