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第十九話:クヴー砦

 次の日、俺はクヴー砦への旅を再開した。

 道中、ハーテに色々話を聞いた。

 俺はまだまだこの世界の常識が足りないようだったから、何でも質問できる相手がいることはありがたかった。


 とにかく、数日の旅の後、俺達はクヴー砦についた。

 青みがかかった灰色のレンガが表面を覆っている大きな建物だった。

 自分が知っている建物に例えると、万里の長城が近い形かも知れない。

 もっとも、万里の長城のような長い城壁があるかどうかは確認できないが。


 建物に近づくにつれて、ハーテは不安そうな表情になってきた。


「大丈夫だと思うよ」


 俺は声をかける。


「俺達は戦いに来てるわけじゃないんだから」


「はい、ありがとうございます」


 ハーテはそう答えたけど、いつもより表情は険しそうに見えた。


 まあぶっちゃけ、自分も緊張はしている。

 今見る限り、人の気配は感じられないけど、ここには武装した兵士がたくさんいるはずなのだ。


 なんかの勘違いで敵とみなされると危険だ。


 大きな木製の扉の前に着く。

 扉の高さが見た感じ十メートルはありそうだ。


「すいませーん、誰かいますか!」


 ドアをノックしながら大声を出した。

 しばらく続けていると、不意に、予期していたところと違うところから木製のドアが開く男が聞こえた。


 正面の巨大扉の横の方に通用口があったらしい。


 怪訝そうな顔の兵士がこちらを見ていた。

 多分若い男。

 分厚そうな革の衣服を着ていて、小脇に薄い金属製の兜を抱えていた。


「何用だ?」


「兵士になることに興味があります。ここに兵士がいると聞いてやってきました」


「ほう? 今は特に募集はしていないはずだが、まあ隊長は興味を持つかもな……待ってろ」


 兵士は扉をしめて砦の中に戻っていった。

 しばらく待たされたあと、さっきの兵士と、もうひとりの男がやってきた。

 俺は二人に軽く頭を下げる。


「君が兵士志願のものか?」


 もうひとりの男が太い声で言った。

 右目に眼帯を当てている、ごつい顔の男だった。

 全身分厚そうな革の衣服に、羽飾りのついた兜をつけている。


「はい、自分の戦う力を役立てたいと思っています」


「ふーむ」


 眼帯の男は俺を舐め回すように見る。


「しかし、今のような大変な時代に兵士となるものは、常に自分が戦場にいると言うような心構えを持たねばならん」


 眼帯の男の言葉に、俺はピンとくるものがある気がした。

 これはもしかして。

 今から不意打ちが来る?

 俺を試すために?


 そう考えていると、はたして男の右手が腰に()いた剣に伸びた。

 来る。

 俺は心構えをした。


 すかさず棒を構える。


 多分、居合斬りのように、鞘から抜きざまの斬撃が来るだろう。

 そう読んでいたが、その読みは外れた。

 彼はその片手剣を一度体の右側に大きく振ってから、突いてきたのだ。


 予備動作が大きくて、親切なことだ。

 そう思ったが、予想は外れたので、すこし焦った。

 読みどおりの攻撃が来たら、余裕を持って受け流したり出来たのだが。

 読みを外してしまっただけに。

 手加減が出来なかった。


 ガキーンと大きな音がなった。

 俺は、彼の剣の突きを払い、その流れで兜をしたたかに打った。

 トカゲの怪物と戦ったときにも使った、相手の攻撃を弾いて、そのまま攻撃に転じる技だ。

 寸止するつもりだったのに、思いっきり当ててしまった。

 彼が兜を付けてなかったら、ヤバいことになっていただろう。


「ぐ……むむむ……」


 打たれた彼は唸り声を出してよろめいていた。


「隊長!」


 若い方の兵士が、心配そうに眼帯の男に駆け寄る。


「えーと、すいません、寸止するつもりだったんですが」


「嫌味か? まあ、第一テストは合格といったところだな」


 俺の言葉に、眼帯の男が軽い口調で返した。

 兜をかぶっていただけあって、それほどのダメージは受けていないようだった。


「来な」


 彼は苦笑を浮かべながら、俺を砦の中に招き入れた。


 扉の中に入って、最初に見た大きな扉の内側を見ると、そこには、非常に大きな弓のような装置が何台か並んでいた。

 多分兵士複数人で運用して、大量の矢を同時に飛ばすもののように見えた。

 そういう大型の兵器があるから、扉も大きいのかなと納得した。


「しかしあんた」


 隊長と呼ばれていた眼帯の男が、気さくな口調で話しかけてきた。


「剣は持たないのかね」


「ええっと、剣は使ったことがありません」


「じゃあ正規軍への編入は無理だな。少なくともすぐには」


「ああ……正規軍以外にどこか、入れるところはあるのですか?」


「傭兵として参加してもらう事はできるぞ」


「傭兵……」


「それはそうとしてだ」


「はい」


「そっちの嬢ちゃんは何だい?」


 隊長が、俺の後ろについて着ていた、ハーテのことを言った。


 うん。

 実は、問題になるかなーとは思っていた。

 ここは雰囲気的に戦場に近い場所みたいだからな。

 女の子が紛れ込んでいては場違いなのかも知れない。


 彼女の方を見ると、彼女も少し困った顔をしているように見えた。

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