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第十話:炎の襲撃

 俺が『悪党』であるとされている月澤って奴と、出身国が同じだとバレたので、宿屋の雰囲気は一時騒然とした。


「同じ国から来たなら、なにか分かることがあるんじゃないか? 知ってることがあるなら教えてくれよ」

「特に知ってることはないですよ」


 俺はそう答えたが、あまり会話を長引かせたくはなかった。

 質問に答えていけば、『どこからこの国に来た?』というような質問をされるかも知れない。

 その時『地球という違う世界から、謎の扉を通ってきた』などと正直に答えれば、どのように思われるか分からない。そこが心配だった。

 できるだけ失礼にならないように、


「疲れているので、部屋で休みたいと思います」


 そう言って、宿屋の食堂を出た。


「しょうがねえな」


 そう言って、俺のことを追ってきた男が一人いた。

 サイコロをふるゲームを一緒に遊んだ、海賊みたいな革の帽子の長髪の男だ。


「俺の部屋と相部屋だろ? 行こうぜ。疲れてるなら、質問はしないから」


 そう言えばそうだった、相部屋だった。

 俺はその男と一緒に部屋に向かった。


 俺たちの泊まる部屋は、狭くはないが物の少ない殺風景な部屋だった。


「疲れてんならもう寝るかい?」


 男がそう言って、部屋に2つあるベッドを指差した。


「そうさせてもらいます」


 実はそれほど疲れていなかったが、疲れていると言って食堂から逃げてきた手前、そう答えた。靴を脱いでベッドに横たわる。


「あなたは?」

「もう少し起きてるよ」


 彼はそう言って、粗末なソファーにドサッと腰掛けた。

 何気なく様子をうかがうと、彼はどこからか取り出した干し果物みたいなものを口にしてた。


「苦いな……もっと甘いものを食いたいぜ」

「俺に話しかけてるんですか」


 念のために聞いた。


「いや、独り言さ」


 彼はこちらを向きもせずにそう言った。


「これも独り言だが、北の方に言ったところにあるチワデゴニ村、あそこには菓子屋があるんだ。小さな村には珍しいだろ? ああいや、独り言だから返事は不要だが」


 俺は声を出さずに小さく笑ったが、彼がそれに気づいたかどうかは分からない。


「その店に看板娘がいてな、赤毛でちょっと痩せてるが目がパチっとしていて可愛い子だった。俺は相棒と、その店の名物のクッキーをよく買いに行ったよ。あの子が焼いてるんだと思ってな」


「だがある日衝撃の事実を知った、どうもあの子は売ってるだけで、焼いてるのは店の奥にいるブサイクな婆さんらしかったんだ、俺たちは大いにがっかりしたよ。だが、わずかに希望は残っていた、というのもその店のクッキーはきれいな丸い形のものと、なんだかグチャッとしたきれいじゃない形のものとが並んでたんだが、俺の推測によると……」


 彼はそんな独り言を延々と喋っていた。

 酔っていたのかも知れない。

 彼の独り言を聞きながら、俺はいつしか眠りに落ちていった。


 それからどれぐらいの時間が過ぎたのか。


 爆発的な轟音が鳴り響き、俺は飛び起きた。


「地震か!? いや……」


 窓の外を、大きな火の玉が通り過ぎていくのが見えた。

 一瞬後、爆発が起きる。部屋全体が揺さぶられる。

 俺は慌ててベッドから降りて靴を履き、棒を手に取る。


「炎の攻撃! あいつか!?」


 月澤と名乗ったあの男が思い浮かんだ。

 階段を駆け下りて、建物の外を目指す。

 階段を降りきったとき、たった今通り過ぎた階段が爆発して吹っ飛ぶ。


「だとするとどういうつもりだ!?」


 建物の外に出た。

 薄く白い月が西の空にかかっている。もうそろそろ朝になろうとする時刻らしい。


「出てきたなあ、クボちゃん!」


 果たして、彼、月澤小次郎が、道の先に立っていた。

 その表情は、怒りに満ちて、狂気をたたえている。


 寄り添うように、ハーテと呼ばれていた女の子。

 今はフードをかぶっておらず、褐色の皮膚の顔を露出している。

 想像していたような、感情を感じさせない表情。

 精巧にできた人形のような美しい顔。

 彼女は、手に松明を持っている。


「何が狙いだ!」


 俺は叫んだ。

 まだ棒は構えない。

 相手の手の内をしっかり観察できていないが、相手は爆発を引き起こす火の玉を飛ばせるようだ。


 近接攻撃しか出来ない自分は、圧倒的不利。

 できれば、戦いを避けたい。

 勝てないかも知れない、戦えば死ぬかも知れないのも確かだが、なにより自分は相手を殺す覚悟がない。


「クボちゃん、あんた、俺の情報を兵士に売っただろ!」

「何のことだ! わからないぞ!」


 俺は大声で言い返す。

 崩れ落ちる建物から、人が逃げている。


「シラを切ってもバレバレなんだよなぁ! 何で兵士がバケツに水を持って俺を捕まえに来るんだ!? 俺の能力を見せた、お前が情報を流したんだよなぁ!」


「本当に知らないぞ! あんたの勘違いだ! そんな不確かな判断で、こんなことをしでかしたのか!」


 宿屋のみならず、近くの建物という建物が燃えている。


「うるせえ! とにかくクボちゃん、あんたには死んでもらうよ!」


 月澤が、ポケットから火打ち石と金属棒を取り出した。

 戦いは避けられないらしい。

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