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「失踪者の顔写真が流れていたんだけどね。みんな美人で若いコばっかり。最年長でアタシと同じ二十八よ? 何か関係があるんじゃない?」
「関係…というより、共通点でしょうかね。美しく、若い人が何かの条件かもしれません」
「生き血でも啜る為に?」
「都市伝説ですよ。それは」
二人で二ヤッと笑う。
大昔、そういう事件が外国であったことを思い出した。
吸血鬼事件と言われていることが、昔は多々あったのだ。
「裏の者達が臓器を抜いているとかだったら、それこそこんな表沙汰にはしないわよね?」
「宗教的な儀式でも同じでしょう。彼らは表沙汰に騒がれることを一番嫌います。ならば個人的なことでしょうかね」
「個人で七人も連れ去られる? 協力者の存在がいるでしょう?」
「そうですねぇ…。なかなか一筋縄ではいかなそうです」
逆に闇に関わることじゃないから、難しい。
影や裏というのは、闇よりも光に近い。
その分、情報は得にくい。
しかしいざ探ろうとすれば、闇は動きやすい。
どこまでも忍び寄れる分、身動きができやすいとも言える。
「では情報は分かり次第、伝えます。あなたはくれぐれも動かないようにお願いしますよ」
お願い、とまできたか。
「はいはい。しばらくは趣味に没頭しているわよ」
ちなみにアタシの趣味は一言で言えばオタク。
マンガにゲームにアニメが大好き。
でも仕事中は絶っているので、今みたいな休日に大量に仕入れるのだ。
部屋の隅には今日の戦利品が山積みになっている。
これでしばらくはまた、家の中から出なくなってしまうだろう。
分かっていてもやめられないのが、オタクという生き物だ。
総じて趣味専用の部屋まであるのだから、重症だと自覚している。
でもこの引きこもり癖は、霞雅美にとってはありがたいだろう。
多くの人間に接することなく、自分の世界に閉じこもっているのだから。
狭い世界の中でしか生きないアタシを、霞雅美はとても喜んでいる。
他に取られる可能性が低くなるからだ。
この束縛、通常なら恋愛に発展すれば甘い鎖となるだろうが、どこまでもビジネスが絡む為、甘くならないのがアタシ達というものだった。