事件終了・次に
あれから数週間後。
ニュースでは誘拐された人々が見つかったことが、大きく取り上げられていた。
彼等は誘拐された現場で倒れているのを発見された。
病院に行き、検査を受けたがどこも異常はないと言う。
…まあ異常を消したんだろうな、霞雅美達が。
そして誘拐されている間のことは、一切覚えていないと言う。
しかし五体満足で発見されたことは喜ばしいこと。
アナウンサー達は本当に嬉しそうにニュースを読み上げていた。
世の中もコレで少しは平和になるだろう。
常日頃、事件の起きない日はない。
けれど一つでも解決できたのは良いことだ。
―そこに闇の力が絡んでいようとも。
アタシも仕事を本格的に再開し始めたし、霞雅美の方もお店を開いているらしい。
いつも通りの平和で単調な日々が、また始まった―と思っていたのに。
例の連続誘拐事件のせいで、ちょっとアタシ達のことは騒がれてしまった。
表の世ではなく、影や裏の世界でだ。
おかげで予想以上に客の出入りが激しくて、霞雅美は頭を悩ませているらしい。
情報を制御するのに、時間がかかると言ってきた。
なのでアタシは再び外出禁止令を言い渡されてしまった。
まあどうせ仕事に集中するのだから、外へは出ない。
食事も買い込んだ物がまだ大量に残っていたので、しばらくは食い繋げる。
…あの事件で、アタシが呼び出されてホイホイ行ってしまったことを、霞雅美にはとてもとても怒られた。
おかげで古株の顧客も、一人減ってしまったしな。
彼には恩があったのだが、霞雅美にもう二度と接するなと言われてはしょうがない。
お別れを言おうにも、彼は恐らく連絡などできない立場に置かれているだろう。
立場のある要人をそう簡単に消すことはできない。
しかし…アタシに何かしようものならどんな眼に合うのか、教え込まれる。
そこは立場や権力など、意味が無い。
だから闇の属性のモノの怒りを買ってはいけないのだ。
「でも…それを分かっていてもあの人は…」
古い友人の為に、危険な橋を渡ることにしたのだ。
向こう側に闇が待ち受けていることを分かっていながら、それでも…。
あの人も狩紅八崎も、趣味はおかしいが、それでも人間らしい感情の持ち主だったのだろう。
アタシや霞雅美だって、人間だ。
しかし属しているのが闇の為、そういう感情が欠落しているのは否定できない。
…感情を理解はできる。
しかし持つことはできないのだ。
それが悲しくもあり、また楽でもある。
「…まっ、必要無いと言えば、それまでなんだけどね」
アタシ達は自分の欲望に忠実なだけ。
やりたいことをやって、利益を生むことが好き。
面倒ごとがキライで、だからこそ闇に属することを決めた。
未来永劫―恐らく死んでからも囚われるであろう、深き闇の中で。
思わず作業する手が止まった。
少しの間ぼ~っとしていると、外から白い光が差し込んだ。
「えっ?」
時刻はすでに日付が変わるぐらいになっている。
こんな時間に、霞雅美は訪れない。
けれどエンジン音といい、車がこの工房近くに止まったのだ。
「まさか…」
慌てて外へ続く扉を開けると、一人の中年の男性が車から降りて来るところだった。
「どっどちら様ですか?」
見知らぬ顔だった。
車や服装を見ると、それなりに金持ちそうだが…。
「ああ、キミは職人かね?」
「えっええ。何かご用ですか?」
職人としてのアタシの居場所が知られるなんて…霞雅美のヤツ、しくじったな!
「キミに依頼があってね。夜分遅くに失礼だとは分かっていたんだが、いても立ってもいられなくて」




