3
けれど、
パンッ
…銃の音が、鳴り響いた。
その十秒後、八代は倒れた。
「やっ八代っ!」
慌てて狩紅が息子に駆け寄る。
「―大丈夫ですよ。ただの麻酔弾ですから」
いや、麻酔弾はただの、とは言えないだろう?
呆れながら振り返ると、声の主が銃を構えた姿で立っていた。
「にしても、連絡はあれほど怠るなと言い聞かせていたのに、何をしているんですか? 魅古都」
「悪かったわよ。相手が古株だと思って、油断してたわ」
霞雅美は険しい表情で、近寄ってきた。
しかし後ろにチラッと視線を向ける。
「―では、後のことは頼みますよ」
影の中から、数人の男性が出てきた。
顔付きからして、闇に属するモノだと分かる。
彼等は黙って頷き、別荘の中へ入って行く。
コレで人質は解放されるだろう。
ほっと一息つくも、まだ残りの問題があった。
「…とりあえず聞いておくけど、古株のあの人と彼等、無事では済まされないのよね?」
「当たり前じゃないですか。よりにもよって、あなたをわたしから奪おうとするなんて、命知らずも良いとこですね」
…アタシもそう思いました。
「まっ、八代に関しては自業自得ね」
彼は父親の腕の中で、眠っている。
次に眼を覚ました時には、生き地獄が彼を待っている。
「ちょっと失礼」
霞雅美は八代の体に触れ、上着のポケットからスイッチを見つけた。
「あー。爆弾の…」
そう言いつつ、霞雅美から距離を取る。
「ここはとりあえず、爆破しときましょう。人質にも記憶を操作してから、帰すことにします」
物騒な言い方だが、それが一番良い方法だろう。
アタシや霞雅美の痕跡は、何一つとして残してはいけない。
全てを闇に葬り去るのが、一番良い。
「狩紅八崎さん、貴方には聞きたいことが多々あります。ご同行、願いますね?」
「…ああ。分かった」
霞雅美の言い方はまるで警察みたいだ。
しかし連れて行った後、彼等に与えるのは罰だけ。
もう二度と、彼等は表の世に出ることはないだろう―。




