第五話 ―2―
* * * *
ごごごご。
効果音にすると、そんな感じだった。
「いや、ずずーん、って感じですかねー?」
「もっとこう派手なヤツじゃない?」
「擬音で遊ばないっ!」
なんだかんだで、私はコーヒーを完成させたのだが。
ただ黒いだけのコーヒーのはずだが、なぜだかその中から、脅威や恐怖や憎悪を感じる。
「……やっぱり、隠し味が問題だったのかな?」
私がぽつりと呟くと、それを聞いた二人がひそひそと話し始めた。
「…基本のスキルはあるはずなんですけどねー」
「だわね。独創性がありすぎるってゆーか……」
「もはや、物体Xと名付けた方がいーのではー?」
「―――――ちょっと。聞こえてるんだけど」
完成を聞きつけて先生が味見をしてくれたのだけれど。
コーヒー(物体X)を口にしたその傍から卒倒したのは秘密である。
* * * *
「―――――っていうことがあってさ」
「…………」
「その現物なんだけど、捨てるのももったいないし、持って返ってきちゃった!」
「…………」
「よかったら、ユウに飲んでほしいなぁ」
「………っ…」
普段から表情を変えない彼の顔が、少しだけ引きつったような気がした。
気のせいですよね?
「まぁ、そんな危ないものは入ってないはずだから」
「…………」
予め持ってきておいたポットから、例のコーヒー(物体X)を注ぐ。
太陽光を照り返し不気味に光るどす黒い物体X。
コップになみなみと注いでから、彼に手渡した。
「どーぞ」
「…………」
コップと私を見比べる彼。
やがて意を決したように口を引き結ぶと、物体Xを一気に口へ流し込む!
ごきゅごきゅごきゅ。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
しばらくの沈黙の後、彼が横にゆっくりと倒れた。
「ちょ、ユウっ!? ユウーッ!!」
……それから二時間後。
奇跡の復活(?)を遂げたユウは、しばらくの間、私とは目も合わせてくれませんでした。
* * * *