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テイルウィンド  作者: 双子烏丸
深紅の炎
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雑談と解説(2)


 すると二人の話を聞いていたティナが、ポップコーンを口にしながら会話に加わる。

「もぐもぐ……なるほど、マリンねぇ。確かに、想像以上に凄いレーサーだな。それに、あそこまで一気に加速を出せる機体なんて、なかなかないぜ。見たか、あのジンジャーブレッドに、あそこまで追いついたんだぜ」

「あら? ティナさんもやっぱりそう思います? あの大気の抵抗を最小限に抑えた円錐型の、槍のような船体に、超強力なブースター。……あの規格外だけど、少し不安定さを感じた出力……多分、どこかが開発した試作品を、何かしらの手段で手に入れたのかも」

「おいおい、意外と曖昧なんだな」

「分からないことだらけなのは、確かだもの、仕方ないわ」

「でも……もぐ……、俺でもあれが、凄い機体だとは分かるぜ。まぁ俺たち二人のものには……むぐっ……、及ばないがな」

 まるでドラム缶のような大きさの入れ物を抱え、相変わらずポップコーンを次々と口に放り込みながら、ティナはそんな事を呟いている。

「……おっと! もうポップコーンがなくなっちまった。誰か買いに行ってくれないか? ジョンでもリッキーでも、どっちでもいいからさ」

 ジョンはやや呆れながら、やれやれと首を振る。

「おいおい、また僕が持って来るのかい? 大体、あれだけのポップコーンを殆ど一人で平らげるだなんて、どんな胃袋なんだか……」

「へへっ! 誉め言葉と受け取っておくぜ!」

「全くもって、ジョンの言う通りだぜ。そもそも、自分一人で食べるなら、自分で買って来るがいいさ。俺たちはもう、さっきのあれで腹一杯だからな。

 俺とジョンに頼むのは、筋違いと言うものだぜ」

 リッキーも同じく、反論する。

 一応、あの特大ポップコーンは全員で分けて食べていたが、半分も減らないうちに、すぐに全員満腹になった。

 そして半分も減っていない残りを、ティナはようやくさっき、一人で平らげたらしい。




「……ちぇっ! 優しくないな! 気の利かない男性はモテないぞー」

「ティナお姉ちゃん、あんまりみんなを困らせないの!」

「まぁまぁ、そう固いこと言うなよ。むしろフィナこそ、人の事を気にしすぎさ。そんなんじゃ、好きな相手を物に出来ないぜ。ふぅ……、姉として、俺は心配だな」

「もう! 本当にお願いお姉ちゃんは、余計なことばかり……」

 ティナの発言に、フィナは赤面する。

「まぁまぁ、フィナさん落ち着いて。ティナさんは少し言い過ぎだわ、もしかして、いつもそんな感じなの?」

 ミオは彼女ら姉妹を、たしなめた。

「へへっ! まるで私の姉ちゃんみたいだ。こんな感じも悪くないな!」

「――そうね。お姉ちゃんも、ミオさんを見習ったらどう?」

 少し嫌味を込めた妹の反撃。これにはティナも面食らったが、やはり相変わらずの様子で笑う。

「おっと! これは一本取られたな! 俺もまだまだって事かな、ハハハっ!」




 そんな女性陣の会話の間、ジョンは何か神妙な表情で、他所の方向を見ていた。

 リッキーはそれに気づいた。

「どうした? 誰か知り合いでも見つけたか?」

 声に反応したジョンは、慌てて彼を見た。

 しかし、すぐに表情を、人の好い笑顔へと戻した。

「ああ、そうさ。よく分かったね」

 そしてジョンは続ける。

「ところで、少し席を空けていいかな? その知り合いと、少し話をしたいんだ。

 あっ、そうそうティナ、ついでに君のポップコーンも買ってくるよ。さっきは塩味だったけど、味はどうする?」

 声をかけられたティナは、元気よく答えた。

「おっ、いいのか! 至れり尽くせり、お姫様の気分だぜ! そうだな……同じ味も飽きたから、今度は、キャラメル味を買って来てくれ!」

 ジョンは立ち上がると、恭しく頭を下げ、洒落をきかせる。

「……これはこれは、承知しました、お嬢様」

 ウィンクしてみせて彼は、席を離れて、何処かに行ってしまった。


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