表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テイルウィンド  作者: 双子烏丸
深紅の炎
PR
39/183

シロノの不審


 二人がそんな接戦をしていた、その頃――

〈これはこれは、シロノ・ルーナ君。お初にお目にかかれて光栄だ。

 いやぁ……さすが若いながらにプロの、宇宙レーサー。アッと言う間にもう三位にまでリードとは、なかなかやるじゃないか〉

 通信用ディスプレイには灰色髪の細見な優男が、気の緩んだような笑みを浮かべている。

 シロノは正直、何か捉えようのないこの男を、少し不審がっているところだ。

 それに、一見緩んだ表情だが、まるでどこか探りを入れているような感じがするようで、やや不快な感じを覚えていた。

 親善試合はすでに中盤に差し掛かり、シロノはちょうど、ツインブルーの半周に差し掛かる。

 あれから更に先頭の二機を追い抜き、彼は三位にまで達した。

 辺りにいた機体も殆どいなくなり、周囲には後ろを飛ぶ一機、ジョセフ・クレッセンの玄武号ただ一機だけ。



 そして今、このジョセフから通信が届いていた。

「……そう言うあなたの方も、ここまで来れるとは、大したものだと思いますよ。

 パイロットとしての腕も、その機体もね」

〈ハハハハッ! お褒めいただいて嬉しいね! まぁこちとら、探偵として色々と面倒な仕事を、それなりにこなして来たものだ。こうでも技量がなければ、やって行けないだろう? 俺の玄武号も、何年も使い続けた相棒だからな、今まで色々と手を加えた結果ってことさ。まぁ……それでも年代物のオンボロ船ってことには、変わらないんだがな!〉

 さも愉快そうにヘラヘラ笑うと、ジョセフは続ける。

〈それに引き換え、シロノ君の機体、ホワイトムーンは実にいい! とても美しく洗練され、そして高性能だ! さすがは大企業、スリースター・インダストリーをスポンサーに持つだけのことはある」

「ええ……そうかもしれませんね」

 相手のペースに持っていかれているようで、やや戸惑い気味のシロノ。

〈そう言えば、このG3レースで一番の優勝候補、ジンジャーブレッドのブラッククラッカーも、彼の昔の機体をベースに、ゲルベルト重工が開発をした機体らしい。あちらはあちらで、どれ程の性能を持っているやら……

 シロノ君は知っているか? 君のスポンサーとは違いゲルベルト重工は、違法取引に不正、賄賂に産業スパイなどと、黒い噂が付きまとっている事を。

 銀河捜査局もそれには目に付けているが、なかなか尻尾は捕まえていないみたいだ。

 そして彼らが今手にしている情報は、このG3レースでゲルベルト重工が何か企んでいると、まぁ大まかなもの程度さ。役所仕事って奴は――どうも手続きばかりで、動きが遅くなっていけない!

 さてと、シロノ君は銀河捜査局がどこまで知っているか、聞いてはいないかな?

 内緒でこっそり教えてくれたら、ジョセフおじさんは嬉しいなー〉

「ふふっ、さぁ――? ご想像にお任せしますよ、探偵さん」



 ――本当に、捉えようがなくて、胡散臭い男ですね――

 内心そんな風に思いながらも、シロノは質問をはぐらかす。

 ――しかし、このジョセフという男がただ、レースをしに来ているだけではない、それは分かります。問題は、彼が敵か味方かどうか。探偵と言うことは、雇われさえすればどちら側でも有り得る。捜査局の動向を探るための、ゲルベルト重工が雇ったのか、それとも捜査局とは別に、重工の調査を行っているのか――

 分からないからこそ、こうしてはぐらかす……。それが現状でベストの選択だと、シロノは考えた。

〈これは随分と、手厳しい。しかし……いくら捜査局でも、レースでの企みと、スポンサーとして援助しているジンジャーブレッドが無関係だと分からないほど、鈍間ではないはずだろう? ハハハッ! だからこそレースに参加すれば、何か繋がりでも分かるかもと思ってな。

 もしかするとシロノ君も、その内知ることもあるかもだ。

 そう肝に命じて、せいぜい気を付けるといい。…………せっかくのレースを、台無しにされたくなければな〉

 緩い雰囲気から一転、急に固い表情をジョセフは見せる。

 これにはシロノも、黙ってはいられなかった。

「それは……脅しているのですか?」

 画面越しに、シロノは睨む。

 するとジョセフは、元の緩い感じに戻り、彼をなだめる。

〈まぁまぁ、少しきつく言い過ぎたが、ただの警告だけさ。何もそう、怖い顔をすることはないだろう?〉

「……」

〈とにかく、せっかくの俺からのアドバイス、覚えておいて損は無いはずだ。……ハハハ!〉

「くっ!」

 とうとうシロノの方が、我慢の限界に達した。

 通信を一方的に切断すると、彼はホワイトムーンも出力を高く上げ、一気に玄武号を

突き放した。

 元々一部の性能しか出していなかった、ホワイトムーンにとっては、それくらいは容易い。

 玄武号の姿がすぐに見えなくなると……シロノは溜息をつく。

 もう分かっていたことだが、今回のレースは、色々と厄介な事が起こっているらしい。

 願わくばそんな事に、巻き込まれないことを、彼は願った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ