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テイルウィンド  作者: 双子烏丸
第四章 前哨戦 
31/183

現状把握


 この親善試合のコースは、ガス惑星であるツインブルーの表面を一周し、表面付近のゴール地点にたどり着くまでのコースとなっている。

 ガス惑星であることもあり、前回のレースのように、物理的な障害物は存在しない。しかし、ガス惑星特有の大気の濃さにより、その気流の流れはかなり強い。

 その流れは機体の邪魔にもなれば、逆に助けにもなる。しかし、それらは惑星の自然現象、当然、いつどんな動きを見せるか分からない。

 つまりこうしたレースでは、運の要素が強くなる。しかし、そんな運ですら考慮し、運に極力左右されないよう無難な手段を取るか、逆にその運に賭けて徹底的に利用するのか、などなど、対策や方法を考えるのがレーサーと言うものだ。

 そう言った意味では、正に、『運も実力の内』と言うことだろう。

 ホワイトムーンは、スタートラインの宇宙空間から、ツインブルーの大気へと向かう所だ。

 ディスプレイに移る、星の青い大気が接近して行くにつれて、少しずつだが船体が、揺れ始めてゆくのが分かる。

 シロノは三次元レーダーを確認する。

 レーダーによれば、ホワイトムーンはツインブルーへとかなり接近しているらしい、数分も経たないうちに、機体は惑星表面へと到達するだろう。

 しかし、先頭のブラッククラッカーと、先頭からいくらか離れて飛ぶ二番手のクリムゾンフレイムを含む、数機の機体は、すでにツインブルーへと到達している。

 レース内容は、惑星ツインブルーの周回、つまり彼らはようやく本当のスタートラインに、到達したことになる。

 だが、ホワイトムーンも距離で言えば、彼らとの差は小さい。何しろまだ最初の最初、そうそう差など出来る訳もなく、余裕も十分にある。

 ディスプレイを見れば、目視出来る距離に、4機ほど見える。

 ――ふぅん、まぁ、親善試合でも結構いますね。さてと、彼らはどれ程のものでしょうかね――

 シロノはそんな思いをはせながら、ディスプレイ先のツインブルーの見据える。

 親善試合は、これからである。



 ホワイトムーンの近くを飛ぶ四機の機体、その中には平坦なボックス型の機体も混じっていた。 

 それこそ、私立探偵であるジョセフ・クレッセンの機体、玄武号の姿だった。

 ――ハッ! これはまた、随分とお綺麗な船なことで。さすがレース機となると、そりゃ違うわな――

 中古のディスプレイに表示されるホワイトムーンの姿に、ジョセフは感心した。

 あちこちの機器は使い古したものが多く、中には中古のものもいくらかあった。だが、それなりに中は清潔にされており、整理もされているコックピットだ。

 ――しばらく探偵の仕事がご無沙汰だったせいで、こうしてレースを始めてみたが……自分で言うのもなんだが、中々センスがあるかもしれないな。正直、レーサーなんて専門じゃないから無理だと思ったが、何とかG3レースにまでこぎ着けたしな――

 ジョセフはそんな事を、少し思い出していた。

 ――まぁ、この親善試合はそれの前試合ってことだし、まぁ、適当に、ぼちぼち行きますか――

 そう考えながら、再びレースの方へと頭を切り替える。

 とりあえず、今回はただの余興、それがジョセフの考えだ。

 しかしそれは、この親善試合に限った事なのか? それとも……。

 今はまだ、定かではない。


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